- 在庫管理とは何か(定義・4原則・業務フロー)
- 現場でよくある5つの課題と、その共通原因
- 適正在庫の考え方と、成果を測る指標
- 業種別・システム別の選び方
在庫管理術

在庫管理とは、商品を必要な時に必要な分だけ供給できるように、商品・資材・消耗品の在庫数や状態を適正な水準に保つ活動のことをいいます。

在庫管理は、単にモノの数を数える作業ではなく、会社のお金の流れを最適化し、経営を安定させるための重要な活動です。
専門知識がなくても、正しい手順で始めれば在庫管理は必ず改善できます。
この記事では、在庫管理の基本を次の順序で解説します。
本記事を通じ、「できる」と実感しながら着実に在庫管理を改善していけるよう、分かりやすく丁寧にサポートします。
このパートをまとめると!
在庫管理とは、必要なモノを必要なときに必要な量だけ供給できるよう、在庫を適正な水準に保つ活動です。数を数える作業ではなく、モノの流れとお金の流れを同時に管理する経営活動を指します。
在庫管理は、公的な規格である日本産業規格(JIS)で次のように定義されています。
「必要な資材を,必要なときに,必要な量を,必要な場所へ供給できるように,各種品目の在庫を好ましい水準に維持するための諸活動。」
(出典: JIS Z 8141 「生産管理用語」)難しく聞こえますが、要点は「在庫を適切な水準に維持する」の一点です。在庫は多すぎても少なすぎても利益を減らします。つまり在庫管理とは、欠品と過剰在庫のどちらも起こしていない状態をつくり、維持し続ける活動のことです。
ポイントは「諸活動」という言葉にあります。在庫管理は棚卸という単発の作業ではなく、入荷から出荷、記録、発注までを含む継続的な業務の総体を指しています。
在庫管理の対象は、販売する商品だけではありません。会社が保有し、いずれ消費・販売されるモノはすべて対象になります。
見落とされやすいのが最後の消耗品・貯蔵品です。金額が小さいため管理対象から外されがちですが、欠品すれば現場は止まります。在庫管理の対象は「金額の大きさ」ではなく「止まったときの影響」で決めるのが実務的です。
在庫管理は近接する業務と混同されがちです。それぞれの守備範囲を整理します。
| 業務 | 主な目的 | 在庫管理との関係 |
|---|---|---|
| 在庫管理 | 在庫を適正水準に保つ | ― |
| 生産管理 | 納期どおりにモノをつくる | 生産計画の前提として在庫数を使う |
| 購買管理 | 必要なモノを適正価格で調達する | 在庫数をもとに発注量・時期を決める |
| 倉庫管理(WMS) | 庫内作業を効率化する | 保管場所や入出庫作業を担う |
4つの違いは「何を最適化しようとしているか」にあります。倉庫管理が庫内の作業効率を見るのに対し、在庫管理は在庫の量そのものを見ます。倉庫の作業がどれだけ速くなっても、持っている在庫が多すぎればキャッシュフローは改善しません。
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在庫管理の4原則は「所在」「数量」「先入先出」「アクション」。人が数える運用では維持し切れないため、4原則は守るルールではなく自動的に満たされる状態を目指すのが現実的です。
在庫管理には、業種を問わず共通する4つの基本原則があります。自社の在庫管理が機能しているかは、この4つを満たせているかで判断できます。
| 原則 | 満たせている状態 | 崩れると起きること |
|---|---|---|
| ①所在 | どこにあるかがすぐわかる | 探す時間が発生し、あるのに再発注してしまう |
| ②数量 | いくつあるかがすぐわかる | 帳簿在庫と実在庫がズレ、欠品が起きる |
| ③先入先出 | 古い在庫から出せる | 奥の在庫が滞留し、期限切れ・品質劣化で廃棄になる |
| ④アクション | 動くべきタイミングがわかる | 発注が遅れる、滞留在庫に気づけない |
この4つには順序があります。所在がわからなければ数量は数えられず、数量がわからなければ動くべきタイミングも判断できません。改善に着手するときは、①所在から順に手をつけるのが定石です。

そして、ここが最も重要な点です。4原則は、人が数える運用では維持できません。所在と数量が正しいのは棚卸をした瞬間だけで、翌日にはズレ始めます。先入先出は現場の置き方の習慣に依存し、アクションは担当者の記憶に依存します。「守れていない」のは現場の意識の問題ではなく、人が数える前提そのものに無理があるからです。
実在庫を常時データで取得できる仕組みがあれば、4原則は「守るルール」から「自動的に満たされる状態」へ変わります。
「在庫管理の5要素」という言葉を目にすることがありますが、4原則とは異なり、確立した定義はありません。実際にこの言葉で探されている内容の多くは、現場改善の基本である5Sを指しています。
5Sは在庫管理の土台です。とくに整理と整頓は、4原則の①所在を成立させる前提条件にあたります。置き場所が決まっていない在庫は、どんな仕組みを導入しても管理できません。置き場所・置き方・置く量を決める3定の考え方もあわせて押さえておくと実践しやすくなります。
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在庫管理の仕事は「入荷・検品→保管→出庫→棚卸→発注」の5つで構成されます。どの工程も記録が伴うため、記録の手間をどれだけ減らせるかが業務全体の負荷を決めます。
「在庫管理とはどんな仕事ですか?」とよく聞かれます。在庫管理の業務は、モノの流れに沿って次の5つのステップで構成されています。
発注したモノが届いたら、発注内容と実物が一致しているかを確認します。品目・数量・品質・期限を照合し、問題がなければ入庫として記録します。ここでの記録漏れや数え間違いは、以降のすべての在庫数に影響し続けます。在庫差異の多くは、この入口で生まれています。
入荷したモノを決められた場所へ格納します。どこに何を置くかを住所のように管理することをロケーション管理と呼びます。ロケーションが決まっていれば、担当者が変わっても探す時間は発生しません。先入先出を実現するための棚の配置も、この工程で設計します。
製造や出荷のために在庫を取り出し、出庫として記録します。実務で最も記録が抜けやすいのがこの工程です。「あとでまとめて入力しよう」と持ち出された在庫は、記録されないまま消えていきます。出庫の記録精度が、そのまま在庫データの信頼性になります。
ピッキング作業そのものを速くしたい場合は、保管エリアと取り出しエリアを分けるダブルトランザクションという考え方も有効です。
実際に現物を数え、帳簿在庫と実在庫のズレを確認・修正します。決算のための作業と捉えられがちですが、本来の目的は日々の記録がどれだけ正確かを検証することにあります。ズレが大きいなら、原因はステップ1〜3のどこかにあります。
在庫が一定量を下回ったら補充を発注します。発注点や発注量のルールが決まっていないと、担当者の勘に依存することになり、欠品と過剰在庫が同時に発生します。発注は在庫管理の出口であり、同時に次のサイクルの入口です。
この5ステップを見渡すと、すべての工程に「記録する」という作業が張り付いていることがわかります。在庫管理が負担に感じられる最大の理由はここにあります。逆に言えば、記録を自動化できれば業務全体の負荷は大きく下がります。
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在庫管理の目的は数を合わせることではなく、利益を最大化することです。欠品は生産停止と取引先の信用低下を招き、過剰在庫は運転資金を倉庫に固定してキャッシュフローを圧迫します。
在庫管理と聞くと、在庫とは何か(資産としての在庫)を正確に把握することと思われがちですが、それは手段の一つに過ぎません。
在庫管理が本当に目指しているのは、利益を最大化することです。在庫は多すぎても少なすぎても、利益が減少してしまいます。つまり、欠品と過剰在庫のどちらも起こしていない状態を目指します。
欠品とは、単なるモノが足りない問題ではありません。
製造現場では、たった一つの部品が欠けるだけで、その工程だけでなくライン全体が止まってしまうことがあります。生産スケジュールが乱れ、後工程にも遅れが生じます。結果として納期に影響が出るだけでなく、取引先からの信頼を損ねるリスクにもつながります。
また、売れるはずだった商品が在庫切れで売れなかった場合、その分の利益は機会損失として静かに失われます。帳簿には残らないため、気づかれにくい損失です。
一方で、「欠品が怖いから、在庫を多めに持っておけば安心」と考えるのは危険です。
売れずに残った在庫は、会社の資金を倉庫の中に固定している状態です。
在庫の仕入れに使った資金は、製品が売れて初めて現金として回収されます。
つまり、過剰在庫を抱えるということは、運転資金を回転させる力を自ら弱めているということです。
結果、新しい設備投資や人材育成、次の取引チャンスに使えるはずだったお金が動かせなくなります。経営者が「在庫がキャッシュフローを圧迫している」と言うのは、まさにこの状態を指します。
過剰在庫は、目に見えない形で会社の成長スピードを鈍らせる、静かな経営リスクなのです。
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在庫が合わない・属人化する・Excelが限界・欠品と過剰在庫が同時に起きる・棚卸に時間がかかる。これら5つはすべて「実在庫がリアルタイムに見えていない」という同じ原因から生じています。
システム上は10個あるはずなのに、現物は7個しかない。多くの現場で起きている在庫差異です。原因は記録漏れ、数え間違い、返却されない持ち出し、破損の未処理などさまざまですが、共通しているのはズレが発生してから発見されるまでに時間差があることです。棚卸で気づいたときには、いつ何が起きたのかを追跡できなくなっています。
対策としてダブルチェックを導入する現場は多いのですが、確認する人を増やすほど「誰かが見ているはず」という心理が働き、期待したほど精度は上がりません。
「あの人に聞かないと在庫がわからない」という状態です。担当者の頭の中に置き場所や適正量の判断基準が入っているため、休暇や異動のたびに業務が止まります。属人化は担当者の努力の結果として生まれることが多く、本人には問題が見えにくいのが厄介な点です。
Excelでの在庫管理は手軽に始められる一方、品目数が増え、拠点や担当者が増えると破綻します。ファイルが複数に分岐する、入力が追いつかない、誰かが式を壊す。Excelが悪いのではなく、入力が人手である限り、規模の拡大に耐えられないという構造的な問題です。
一見矛盾していますが、非常によくある状態です。在庫が見えないため、欠品が怖い品目は多めに持ち、注目されていない品目は気づかないうちに切らす。在庫全体の金額は増えているのに、現場では欠品が起き続けるという最も損失の大きいパターンです。
休日出勤や残業で全品目を数える運用が固定化しているケースです。棚卸の負担が大きいほど実施頻度は下がり、頻度が下がるほど差異は蓄積して、次の棚卸がさらに重くなります。負のループに入っている現場は少なくありません。数え漏れや紛失による棚卸ロスも、この状態では発見が遅れます。
これら5つは別々の問題に見えますが、原因はひとつに集約されます。実在庫がリアルタイムに見えていないことです。裏を返せば、実在庫の見える化はすべての課題に同時に効きます。
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すべての在庫に当てはまる適正在庫の計算式は存在しません。まず過去の最大消費量から安全在庫を決め、発注リードタイムを踏まえて発注点を設定することが、現実的な第一歩です。
在庫管理で目指すべきゴールは、適正在庫の実現です。 ここでは、適正在庫を維持するための基本的な考え方をご紹介します。
「適正在庫の計算式を教えてください」とよく聞かれますが、どんな在庫にも当てはまる計算式というものは残念ながら存在しません。 最適な在庫量は、扱う品目や季節、景気によって常に変動するからです。
適正在庫を考える際は、顧客を待たせることなく、かつ資金を過剰に在庫へ固定しない最適なバランスをイメージしましょう。
このバランスを見つけ出すことこそが、在庫管理の本質です。
そうは言っても、在庫管理の判断基準が分からず迷うことも多いでしょう。そこで注目したいのが、安全在庫という考え方です。
安全在庫は、急な注文の増加や、仕入れ先からの納品遅れといった不測の事態に備えて、これだけは常にストックしたいと決めておく最低限の在庫のこと。
まずは、過去の使用データをもとに、「最も多く消費した日でも、この量があれば問題なかった」という実績値を安全在庫の基準にするのが効果的です。
過去の最大消費量を参考に、最低限必要な在庫量を設定することで、不測の事態でも安定した供給を維持しやすくなります。より精度を高めたい場合は、需要予測の考え方も取り入れましょう。
安全在庫を決めたら、次に考えたいのが発注点です。 これは、「在庫がこの数を下回ったら、自動的に発注する」というルールのことです。
例えば、在庫が30個を下回ったら発注する、と決めておけば、担当者の勘や経験に頼ることなく、誰でも同じ基準で発注できるようになります。 発注点は発注してから商品が届くまでの時間、発注リードタイムを考慮し決定します。
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定量発注方式・定期発注方式・ダブルビン方式・ジャストインタイム方式の4つが代表的です。品目の重要度と需要の読みやすさで使い分け、全品目を同じ方式で管理しないことが要点です。
在庫の補充ルールには、代表的な4つの方式があります。どれか一つを選ぶのではなく、ABC分析で品目を分類したうえで使い分けるのが実務の基本です。
在庫が一定量(発注点)を下回ったら、あらかじめ決めた量を発注する方式です。発注のタイミングは在庫の減り方によって変動しますが、発注量は毎回同じです。需要が比較的安定している品目や、消耗品・副資材に適しています。判断基準が明確なため、担当者による差が出にくいのが利点です。
毎週月曜、毎月末など、発注する時期を固定し、そのつど必要量を計算して発注する方式です。需要変動が大きい品目や、単価が高く在庫を持ちたくないAランク品に向いています。毎回需要を予測する手間がかかる反面、在庫を最小限に抑えやすい方式です。
同じ在庫を2つの容器に分けて保管し、片方が空になったらその容器分を発注する方式です。計算も記録も不要で、空の容器そのものが発注の合図になります。ネジやボルトのように点数が多く単価が安い品目に適しており、現場に定着しやすいのが最大の利点です。
必要なものを、必要なときに、必要な量だけ調達する方式です。在庫をほぼ持たないため保管コストとキャッシュの固定を最小化できますが、調達先との緊密な連携と、安定した供給体制が前提になります。供給が一度でも途切れると生産が即座に止まるため、リスク許容度を見極める必要があります。JITを現場で回す仕組みとしては、トヨタ生産方式のかんばん方式が知られています。
| 方式 | 発注のきっかけ | 向いている品目 |
|---|---|---|
| 定量発注方式 | 在庫が発注点を下回る | 需要が安定した消耗品・副資材(B〜Cランク) |
| 定期発注方式 | 決めた時期が来る | 単価が高く需要変動が大きい品目(Aランク) |
| ダブルビン方式 | 片方の容器が空になる | 点数が多く単価の安い小物(Cランク) |
| ジャストインタイム方式 | 生産・出荷の計画 | 供給が安定した主要部品 |
どの方式でも共通する前提があります。現在の在庫数が正確にわかっていることです。発注点を設定しても、在庫数が実態とズレていれば発注のタイミングは狂います。手法の選択より先に、在庫数の精度を確保することが先決です。
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棚卸で帳簿在庫と実在庫のズレを把握し、ABC分析で管理対象を絞り、在庫管理表で入出庫を毎日記録する。この3つでモノの流れが見える化されます。
ここまでは日々回っていく業務の流れを見てきました。ここからは、これから在庫管理に着手する場合に、最初に何から手をつけるかを3つに絞って解説します。
何事も、まずは現状把握が必須です。在庫管理における現状把握が棚卸(たなおろし)です。 倉庫や棚にある在庫を実際に一つひとつ数えて、今、何が、何個あるのかを正確に把握します。
目的は、データ上の在庫数、帳簿在庫と、実際の在庫数、実在庫のズレを確認することです。 データ上はあるはずなのに、実際にはないことが、欠品や機会損失の大きな原因になっているケースは非常に多いのです。
棚卸で現状を把握したら、次にどの在庫から重点的に管理するかというルールを決めます。 すべての在庫を同じように管理しようとすると、手間がかかりすぎて挫折してしまうからです。
そこでおすすめなのが、ABC分析という考え方です。 これは売上への貢献度が高い順に、在庫をA・B・Cの3ランクに分ける方法です。 一般的に、売上全体の8割は、全在庫品目のうちの2割が生み出していると言われています。

まずは最も重要なAランク品に絞って、管理を始めてみましょう。
管理する対象を決めたら、いよいよ記録の開始です。まずはExcelで在庫管理をスタートしましょう。
大切なのは、「いつ、何が、いくつ入ってきて(入庫)、いくつ出ていったか(出庫)」を毎日記録し、在庫数が一目でわかる状態を作ること。 このモノの流れの見える化こそが、在庫管理の第一歩であり、最も重要なステップです。
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在庫回転率・在庫回転日数・在庫差異率の3つで在庫管理の状態を数値化できます。改善の第一歩は目標値を決めることではなく、まず自社の現在地を測ることです。
在庫管理の改善は、感覚では評価できません。次の3つの指標を定期的に計測することで、施策の効果を数字で確認できます。
在庫がどれだけ効率よく現金に変わっているかを示す指標です。
数値が高いほど、在庫が滞留せずに回っている状態を意味します。ただし高ければよいというものではなく、極端に高い場合は在庫が薄すぎて欠品リスクを抱えている可能性があります。業界平均や自社の過去実績と比較して読むのが適切です。粗利率とあわせて見る交差比率を使うと、収益性まで含めた判断ができます。
仕入れた在庫が消費・販売されるまでに何日かかっているかを示す指標です。
在庫回転率と表裏の関係にありますが、「日数」で表されるぶん現場感覚と結びつけやすいのが利点です。「この部品は平均60日も倉庫で眠っている」と言われれば、改善の必要性が直感的に伝わります。経営層への報告にも使いやすい指標です。
帳簿在庫と実在庫がどれだけズレているかを示す指標です。
在庫管理の精度そのものを測る唯一の指標であり、最も重視すべきものです。回転率がどれだけ良く見えても、差異率が高ければその数字自体が信用できません。棚卸のたびに記録し、推移を追いましょう。
3つのうち、最初に測るべきは在庫差異率です。差異率が下がって初めて、回転率の改善に意味が出てきます。
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バーコード・RFID・カメラ・IoT機器は得意分野が異なります。タグ貼付や読み取りの手間、液体・粉体・小物への対応可否を軸に、自社の管理対象に合う方式を選びましょう。
Excelでの管理に慣れてきたら、次は本格的な在庫管理システムの導入も視野に入ってきます。
バーコード・QRコードをハンディターミナルで読む方法は、入出庫を瞬時に記録できるため人為的なミスを大幅に削減できます。一方で、あらかじめ全品目にラベルを貼り、入出庫のたびに読み取る運用が前提になります。
RFIDタグを活用した在庫管理システムは、複数の商品を一括でスキャンできるのが特徴です。作業効率が大幅に向上し、店舗や倉庫の在庫を短時間で把握できるため、在庫管理の正確性を高めたい企業におすすめです。
倉庫や店舗内にカメラを設置し、画像認識技術で在庫を自動カウントする手法です。AIを使うことで、棚のどの位置に商品があるのかまで把握しやすくなります。
重量センサーなどのIoT機器を在庫の下に設置し、重さの変化から在庫数をリアルタイムに取得する方法です。タグの貼付や読み取り作業が発生せず、液体・粉体やネジのような小物までまとめて計測できるのが特徴です。人が数えたり入力したりしないため、在庫データの更新漏れが起きにくくなります。
いずれの方式も、在庫数を自動で検知することで人的作業を削減しつつ高精度な管理を実現できます。導入時は、初期費用・月額料金と自社の管理対象(品目数や在庫の形状)を照らし合わせて比較検討しましょう。

いきなり全社導入する必要はありません。小規模から始める方法もあわせて検討してみてください。
株式会社エスマット
代表取締役
林 英俊
エクセル管理の限界は、数え直しに現れる
私が見てきたある現場では、棚の前に紙のバインダーがぶら下がり、入庫数と出庫数を手書きで書き込んでいました。一日の終わりにその紙を事務の担当者に渡し、エクセルへ手作業で打ち込んでもらう。途中で誰かに話しかけられれば「あれ、さっきどこまで入力したっけ」となり、最初から数え直しです。
そこにスマートマットを敷いたところ、月末の棚卸は、何百種類もの在庫数が画面に一覧で並ぶだけのものに変わりました。担当者は「来月からは棚卸しの残業をしなくて済む」と話してくれました。
けれど本当に大きかったのは、その後に起きたことです。心と時間に余白が生まれた現場から、「部品の配置をこう変えれば、もっと作業が早くなるかもしれない」という改善の声が次々に出てきたのです。エクセル管理を見直す目的は、数える手間をなくすことそのものではなく、人が考える時間を取り戻すことにあります。
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基本の考え方は共通ですが、管理対象と重視すべき点は業種で異なります。製造業は部品と仕掛品、医療は期限と安全性、小売・飲食は鮮度と回転が焦点になります。
ここまで解説した原則は業種を問わず共通しますが、何を管理対象とし、どこにリスクがあるかは業種によって変わります。
原材料・部品・仕掛品・製品と、管理対象が工程ごとに分かれるのが特徴です。とくにネジ・ボルトなどの小物部品や、液体・粉体の原材料は数えること自体が難しく、管理対象から外されがちです。しかし、たった一つの部品の欠品でライン全体が止まるため、影響度は金額に比例しません。部品の過不足を防ぐ員数管理の考え方も重要になります。
医療材料・薬剤・試薬など、使用期限の管理と先入先出の徹底が最優先になります。欠品が診療に直結するため安全在庫を厚く持ちがちですが、その結果として期限切れ廃棄が発生するというジレンマを抱えやすい領域です。部署をまたいだ在庫の分散も課題になります。院内物品を一元管理するSPDの仕組みも押さえておきましょう。
限られた人数で診療と在庫管理を兼務するため、管理にかけられる工数が極端に少ないのが最大の制約です。専任担当を置けない以上、手間のかかる仕組みは定着しません。発注の自動化と対象品目の絞り込みが現実的な打ち手になります。
鮮度と回転率が収益に直結し、季節や曜日による需要変動も大きい領域です。食材のロスと欠品の両方を同時に抑える必要があり、発注精度がそのまま利益率に反映されます。複数店舗を展開する場合は、店舗間の在庫のばらつきをどう是正するかも論点になります。
在庫管理の基本のポイントをもう一度、振り返ってみましょう。
在庫管理は、一度始めれば必ず会社に良い変化をもたらします。 それは、単に数字が改善するだけでなく、現場の意識が変わり、会社全体の体質が強くなるからです。
さあ、理論はもう十分です。次はいよいよ、行動に移す番です。
あなたの会社の最も重要な商品一つからでも、記録を始めてみませんか?

A. 品目数が少なく担当者が1〜2名であれば、Excelでの管理でも十分機能します。導入を検討する目安は、品目数の増加や拠点の分散によって「入力が追いつかない」「担当者以外が在庫を把握できない」状態が出てきたときです。全社一斉に導入する必要はなく、欠品すると業務が止まる重要品目から小さく始めるのが現実的です。
A. 在庫を実際に動かす現場の担当者が記録の責任を持ち、適正在庫の水準や発注ルールは管理者が決める、という分担が基本です。ただし、特定の担当者だけが在庫の状況を把握している状態は属人化のリスクになります。誰が見ても同じ在庫数がわかる仕組みを整えることが、担当者を決めること以上に重要です。
A. 古い在庫が倉庫の奥に残り続けることを防ぐためです。食品や医薬品では使用期限切れによる廃棄に直結しますが、期限のない部品や資材でも、長期保管によるサビ・劣化・仕様変更による陳腐化が起こります。棚の奥から補充し、手前から取り出す配置にする、入庫日をラベル表示するといった物理的な工夫が有効です。

スマートマットクラウドは重さを指標とする在庫管理システムで、スマートマットの上に在庫を載せると重量から在庫数を割り出し、クラウドにデータを保存します。
実在庫データにもとづいた管理で、理論在庫管理ではありがちな在庫差異による欠品や過剰在庫を抑止し、適正在庫を維持します。
従来のシステムでは正確な在庫量が読み取りにくかった液体や粉末、ケーブルや鉄線の在庫も計測可能。箱や容器に入れたままの状態で在庫を読み取り記録します。
スマートマットは1品目を1枚のデバイスで管理。適切な場所に、決められた量の在庫を置く在庫管理の前提とも言える5Sの意識の浸透に役立ちます。
IoT重量計が24時間365日重量変化を捉え、発注点に到達したらアラートで通信、自動発注にも対応します。
キャッシュフローを停滞させる不動在庫を在庫金額の動きから特定します。
IoTが集めたデータをAIが分析、具体的な閾値の見直しを提案、無理なく最適化を進められます。
専門家コラムを書いた人

株式会社エスマット代表取締役 兼 製造DX協会代表理事
林 英俊
京都大学大学院を修了後、ローランドベルガーに入社し、戦略コンサルタントとして製造業を中心にコンサル業務に従事。その後、Amazon Japanに入社し、新規事業立ち上げ・プロダクトマネジメントを経て、2014年にエスマット創業。代表として経営全般を舵取りしつつ、事業立ち上げなどグロース中心に実務も担う。製造DX協会の代表理事として、業界レベルのDX・IoT・AI関連の発信も従事。三重大学リカレント教育の講師も担う。 初の著作「日本の現場力が輝く、人中心のDX」を2026年上梓。


