在庫管理術
定量発注方式とは?発注点の決め方・計算式・定期発注との違いを徹底解説
「先週まで在庫があったはずなのに、気づいたら発注点を大きく割り込んでいた」
「担当者が異動してから、なぜその発注点に設定しているのか誰も説明できなくなってしまった」
製造業・物流・医療の現場では、こうした定量発注方式にまつわるトラブルが後を絶ちません。
定量発注方式は、正しく設計・運用すれば発注業務を大幅に省力化できる一方、在庫チェックを人に頼る構造上の弱点を抱えています。
本記事では、定量発注方式の定義から発注点・経済的発注量の計算式、定期発注方式との使い分け、そして製造現場でよくある失敗パターンとIoTによる根本解決まで、在庫管理担当者・工場長・DX推進担当者の方に向けて徹底解説します。
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定量発注方式とは?
👉 このパートをまとめると
定量発注方式とは在庫量が発注点を下回ったタイミングで一定量を発注する仕組みで、発注点方式とも呼ばれます。発注点と発注量の2つを事前に設定するだけで運用でき、ず発注業務を標準化できます。安価な汎用品や需要が安定した消耗品など、ABC分析でB・Cランクに分類される在庫に適しています。
定量発注の定義と仕組み
定量発注方式とは、在庫があらかじめ決めておいた水準を下回るたびに、一定量を発注する方法です。発注点方式とも呼ばれます
運用の流れはシンプルです。
在庫量を監視し、発注点と呼ばれる閾値(しきいち)を下回った時点で、あらかじめ設定した発注量を発注します。毎回の発注量が固定されているため、担当者がそのつど判断する必要がなく、ルールさえ設定すれば誰でも同じ基準で運用できます。

定量発注方式に向いている在庫
定量発注方式は、以下のような在庫の管理に適しています。
- 安価で汎用性が高いもの
- 需要や供給量の変動が少なく、安定供給されるもの
- ABC分析(在庫を重要度でA・B・Cに分類する手法)でB・Cランクに相当するもの

製造業での具体例として、ネジ・ボルト類、副資材、梱包資材、工場消耗品、医療・化学現場の一般消耗品などが挙げられます。一方、高額品や需要変動が大きい主力材料には、後述する定期発注方式が適しています。
▶︎関連記事:発注点【計算や求め方・発注点管理方式・安全在庫との違い・適正な発注点を決めるIoT機器】
発注点と発注量の決め方・計算式
👉 このパートをまとめると
発注点は「平均使用量 × リードタイム + 安全在庫」で求め、発注量は発注コストと保管コストを最小化する経済的発注量(EOQ)が基本となります。計算式の正確な設定だけでなく、需要変化に合わせた3〜6ヶ月ごとの定期的な見直しが運用精度を左右します。
発注点の計算式と数値例
発注点は、以下の計算式で求めます。
発注点 = 1日の平均使用量 × 調達リードタイム(日) + 安全在庫
各変数の意味は次のとおりです。
- 1日の平均使用量:在庫を1日あたり使用・消費する数量
- 調達リードタイム:発注してから納品されるまでの日数
- 安全在庫:需要変動や納品遅延に備えて最低限確保しておく余裕在庫
【数値例】
1日平均使用量20個・リードタイム5日・安全在庫30個の場合:
発注点 = 20 × 5 + 30 = 130個
在庫が130個を下回ったタイミングで発注をかけることで、リードタイム中に在庫が尽きることなく補充が完了します。
安全在庫の考え方
安全在庫は、需要の変動や納品遅延に備えるバッファです。より精度の高い設定には以下の計算式を使います。
安全在庫 = 安全係数 × 需要の標準偏差 × √リードタイム
安全係数とは、欠品をどの程度許容するかを数値化したもので、サービス水準95%の場合は1.65、99%の場合は2.33を用います。需要の標準偏差はExcelのSTDEV関数で過去の出荷データから算出できます。
計算が難しい場合は、「過去の最大日使用量 − 平均日使用量」×リードタイムで簡易的に設定する現場も多くあります。まずは実態に近い数値で設定し、定期的に精度を上げていくアプローチが実務では現実的です。
▶︎関連記事:安全在庫の計算方法(テンプレートつき)
経済的発注量(EOQ)の計算式
1回あたりの発注量は、発注コストと在庫保管コストの合計が最小になる経済的発注量(EOQ:Economic Order Quantity)を基本とします。
EOQ = √(2 × 1回あたりの発注費用 × 年間需要量 ÷ 在庫保管費用)
【数値例】
発注費用3,000円・年間需要1,200個・保管費用500円/個の場合:
EOQ = √(2 × 3,000 × 1,200 ÷ 500) = √14,400 = 120個
発注するたびに量を見直す必要がなく、コスト効率の最適な量を固定できるのがEOQの強みです。
定期発注方式との違いと使い分け
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定量発注方式は発注量を固定して在庫量をトリガーに不定期で発注し、定期発注方式は発注タイミングを固定して発注量をそのつど計算します。管理の手間は定量発注方式が少ない一方、需要変動への対応力は定期発注方式が上回ります。ABC分析と組み合わせ、品目ごとにどちらを適用するかを判断することが在庫管理最適化の基本です。
2つの方式の本質的な違い
定量発注方式は「いくつ発注するか」を固定し、在庫量をトリガーに発注します。一方、定期発注方式は「いつ発注するか」を固定し、そのつど在庫状況を確認して発注量を計算します。どちらが優れているということはなく、在庫の特性に応じた使い分けが重要です。
| 項目 | 定量発注方式 | 定期発注方式 |
|---|---|---|
| 発注タイミング | 在庫が発注点を下回ったとき(不定期) | 決まった周期(週1・月1など) |
| 発注量 | 毎回一定(EOQが基本) | その都度計算 |
| 管理の手間 | 少ない | 多い |
| 需要変動への対応 | 弱い | 強い |
| 向いている在庫 | BCランク・安価・需要安定 | Aランク・高額・需要変動大 |
ABC分析を使った使い分けの判断フロー
在庫をABC分析で分類し、発注方式を割り当てるのが実務の基本です。
- Aランク(売上・生産への影響が大きい高額品・主力材料)→ 定期発注方式
- B・Cランク(汎用品・消耗品・安価な副資材)→ 定量発注方式
迷ったときは「この在庫が欠品したとき、生産・売上への影響はどれほど大きいか」を基準に判断してください。影響が大きければ定期発注方式で細かく管理し、影響が限定的であれば定量発注方式で省力化するのが合理的な選択です。
▶︎関連記事:定期発注方式とは
定量発注方式のメリット・デメリット
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最大のメリットは発注業務の省力化と標準化で、担当者スキルに依存せず誰でも同じ基準で運用できます。一方、需要変動への対応力の低さと在庫チェックの属人化リスクが主なデメリットです。デメリットへの対策として発注点の定期見直しと在庫確認プロセスの仕組み化が欠かせません。
定量発注方式のメリット
① 発注業務の省力化
発注点と発注量をあらかじめ設定しておけば、毎回の発注判断が不要になります。担当者は在庫が発注点を割り込んだことを確認するだけで発注を完了できるため、業務工数を大幅に削減できます。
② 発注ルールの標準化
発注基準が数値で明確に定義されているため、担当者が変わっても同じ基準で運用できます。引き継ぎコストの削減や、発注ミス・属人化の予防にもつながります。
③ 在庫切れリスクの低減
適切な発注点を設定することで、リードタイム中に在庫が尽きるリスクを事前に防止できます。安全在庫を加味した発注点設計により、急な需要変動にも一定程度対応できます。
定量発注方式のデメリット・注意点
① 需要変動への対応が難しい
発注量が毎回固定されているため、急な増産指示・季節変動・生産計画の変更に対して即応できません。需要が急増した場合は欠品リスクが高まり、逆に需要が落ちた場合は過剰在庫につながります。
② 在庫チェックの属人化リスク
定量発注方式は在庫量が発注点を下回ったことを誰かが確認して初めて発注が動く構造です。確認を担う担当者がいなくなったり、忙しさから確認が後回しになったりすると、発注タイミングを見逃すリスクが生じます。
▶︎関連記事:在庫管理の標準化|属人化のデメリットや業務標準化を実現する方法とは?
③ 発注点の陳腐化
設定時の需要量やリードタイムが変化しても、発注点をそのまま放置してしまうケースは珍しくありません。実態と乖離した発注点は、慢性的な欠品や過剰在庫の原因になります。
製造現場でよく起きる定量発注の失敗パターン
👉 このパートをまとめると
定量発注方式の運用失敗の多くは計算式ではなく人の運用プロセスに起因します。担当者の異動・退職による属人化の崩壊、発注点の放置による陳腐化、目視チェックの漏れが製造現場でとくに多い三大パターンです。これらは仕組みで対処しない限り、担当者が変わるたびに繰り返される構造的な問題です。
製造業における在庫管理の属人化は、業種を問わず広く見られる課題です。中小企業庁の調査によると、製造業中小企業の約6割が在庫管理業務の属人化を経営課題として挙げており、担当者の退職・異動による業務断絶が欠品や過剰在庫を引き起こすケースが報告されています(参考:中小企業庁「中小企業の経営課題に関する調査」)。定量発注方式の計算式がいくら正確でも、運用プロセスが人に依存している限り、以下のような失敗が繰り返されます。
失敗① 在庫チェックの属人化崩壊
Excelの在庫管理表を更新できるのは特定の担当者1人だけ、という状況は、製造現場では決して珍しくありません。その担当者が異動・退職した途端、誰も在庫残量を正確に把握できなくなり、気づいたときには発注点を大きく割り込んで欠品が発生します。
定量発注方式のルール自体は正しく設計されていても、誰かが在庫を確認して発注をかけるプロセスが属人化している限り、担当者交代のたびに同じリスクが再発します。
失敗② 発注点の放置(陳腐化)
発注点を設定した当初は適切な数値だったとしても、その後に需要量が変化したり、仕入先のリードタイムが延びたりすることは頻繁に起こります。しかし「設定したからもう大丈夫」という安心感から見直しが後回しになり、実態とずれた発注点のまま運用が続くケースが多く見られます。
計算上は問題がないはずなのに慢性的に欠品が発生する場合、発注点の陳腐化が原因である可能性を疑ってみてください。
失敗③ 目視・手入力による確認漏れ
繁忙期には在庫チェックが後回しになり、気づいたときには発注点を大幅に割り込んでいるという事態は、目視管理・手入力管理の宿命的な課題です。複数の棚・複数の倉庫にまたがる在庫を目視で管理することには物理的な限界があります。
とくにネジ・ボルトのような小物部品、液体原材料、粉体原材料など数えにくい品目では確認精度にばらつきが生じやすく、発注点割れの見落としリスクが高まります。
定量発注の課題をIoTで解決する方法
スマートマットクラウドはIoT重量センサーが在庫量を常時自動計測し、発注点を下回ると自動でアラート・発注まで完結します。定量・定期の両発注方式に対応しており、在庫の性質に応じた使い分けが同一システム内で可能です。マットの上に置くだけで設置でき、既存の基幹システムとのAPI・CSV連携にも対応しています。

置くだけで発注点管理を自動化
定量発注方式の最大の弱点は在庫量をチェックする人が必要という点にあります。スマートマットクラウドはIoT重量センサーが在庫量を常時自動計測し、発注点を下回った瞬間に自動でアラートを発報・発注まで完結させます。

人が在庫棚の前に立って確認する必要がなくなるため、属人化の根本的な解決につながります。担当者が変わっても、棚の数が増えても、センサーが発注点を24時間監視し続けます。設置はマットの上に管理したいモノを載せるだけで完了します。
ケーブルレスで冷蔵庫・冷凍庫内にも設置可能で、A3〜A6の4サイズ展開によりネジ・ボルトのような小物から液体・粉体の原材料まで幅広い品目に対応しています。
スマートマットクラウドの発注方式対応
スマートマットクラウドでは、定量発注方式と定期発注方式の両方を在庫の性質に合わせて選択・設定することができます。同一システム内でABC分析にもとづく使い分けが可能なため、品目ごとに最適な方式を適用できます。
定量発注を選択すると「重複発注防止機能」が自動でオンになり、同一在庫への二重発注を防ぎます。発注先への通知はメール・FAXで自動送信され、API・CSV連携により既存の基幹システムへのデータ連携もスムーズに行えます。
▶︎導入事例の詳細は、導入事例一覧からご確認いただけます。
▶︎スマートマットクラウドの機能詳細は、機能一覧もあわせてご覧ください。
定量発注方式に関するよくある質問(FAQ)
Q. 定量発注方式と定期発注方式、どちらを選べばよいですか?
A. ABC分析でB・Cランクに分類される在庫には定量発注方式、Aランクの在庫には定期発注方式を基本とするのが一般的です。迷ったときは「この在庫が欠品したとき、生産・売上への影響はどれほど大きいか」を判断基準にしてください。影響が大きければ定期発注方式でこまめに管理し、影響が限定的であれば定量発注方式で省力化するのが合理的な選択です。
Q. 発注点はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
A. 最低でも3〜6ヶ月に1回の見直しを推奨します。需要量の変化・仕入先のリードタイム変動・生産計画の見直しがあった際は、その都度発注点と安全在庫を再計算してください。「設定したら終わり」ではなく、定期的なメンテナンスが定量発注方式を正しく機能させる前提条件です。
Q. 小ロット・多品種の在庫に定量発注方式は使えますか?
A. 管理品目数が多くなると、品目ごとに発注点・発注量を設定・更新する工数が増大し、Excelや手作業での管理には限界が生じます。IoT在庫管理システムを活用することで品目数に関わらず発注点管理を自動化でき、多品種小ロットの環境でも定量発注方式を無理なく運用できます。
Q. 安全在庫の計算が難しい場合はどうすればよいですか?
A. まずは「(過去の最大日使用量 − 平均日使用量)× リードタイム」で簡易的に設定する方法から始めるのが現実的です。運用を続けながら過去データが蓄積された段階で、安全係数を使った正式な計算式に切り替えて精度を高めていくアプローチを推奨します。
まとめ:定量発注方式の最適化は仕組み化から
定量発注方式は、発注点と発注量の2つを設定するだけで発注業務を省力化・標準化できる、製造業・物流・医療現場の在庫管理に欠かせない手法です。
- 計算式を正しく設定:発注点・経済的発注量(EOQ)を数値例をもとに適切に算出し、3〜6ヶ月ごとに見直す
- 品目別に使い分ける:ABC分析と組み合わせて定期発注方式との使い分けを品目ごとに判断する
- 仕組みで属人化を解消:在庫チェックのプロセス自体をIoTで自動化し、担当者依存をなくす
とくに属人化解消は、計算式の精度を高めるだけでは解決できない構造的な課題です。スマートマットクラウドのようなIoT在庫管理システムを活用することで、在庫量を人が確認するプロセス自体をなくし、発注点管理を自動化することが可能です。













