在庫管理術
在庫金利とは?わかりやすい計算方法・目安・削減のポイントを解説
在庫金利とは、在庫を保有することによって社内の資金が固定化されるコストを、金利という形に置き換えた管理会計上の指標のことです。「在庫=形を変えた会社の現金」であり、売上として回収されるまで目に見えない資金コストが発生し続ける、という考え方に基づいています。実際に外部への支払いが発生するわけではありません。
在庫金利を把握することで、「今、自社の在庫にどれだけのキャッシュが眠っているか」が明確になります。経営者や在庫担当者が在庫削減の優先度を判断するための重要な指標であり、本記事では、在庫金利の計算方法・目安・見落としがちなポイント・削減方法をわかりやすく解説します。
在庫金利とは【定義と架空の金利と呼ばれる理由】
このパートをまとめると!
在庫金利とは在庫保有にかかる資金コストを金利で表した管理会計上の指標です。実際の支払いは発生しないが、「在庫=資金の別の姿」という考え方に基づき、商品の売れ行きに関係なく発生し続けます。
在庫金利とは、在庫を保有することによって生じる資金負担を、保有期間に応じて「金利」という仮想のコストに置き換えた管理会計上の指標です。英語では「Inventory Capital Cost」や「Opportunity Cost of Capital」などと表現されます。
在庫金利が「架空の金利」と呼ばれるのは、実際に銀行や取引先へ支払う利息ではないからです。
しかし、企業が在庫を仕入れるときには、必ず何らかの資金を使っています。
その資金は、借入金であれ株主資本であれ、本来は別の用途に活用できたはずのお金です。
在庫を抱えている間、その資金は「在庫」という形で固定されており、現金化されません。この資金が眠っている状態を金利コストとして数値化したのが在庫金利です。売れ筋商品であっても、売れにくい滞留在庫であっても、在庫として存在している限り在庫金利は発生し続けます。
在庫金利と在庫コスト・保管費との違い
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在庫コストは在庫にかかるすべてのコストの総称。在庫金利はその構成要素のひとつで、資金の機会コストを指します。保管費・棚卸評価損などとは別の概念です。
在庫金利と混同しやすい用語として在庫コストと保管費があります。それぞれの関係を整理しておきましょう。
| 用語 | 内容 | 実際の支払い |
|---|---|---|
| 在庫コスト | 在庫を保有・管理することで発生するすべてのコストの総称 | あり(一部) |
| 在庫金利 | 在庫に拘束された資金の機会コストを金利で換算した指標(在庫コストの構成要素) | なし(管理会計上の指標) |
| 保管費 | 倉庫の賃料・光熱費・人件費など、物理的な保管にかかるコスト | あり |
| 棚卸評価損 | 在庫が陳腐化・破損した際の帳簿価値の減少分 | あり(損失として計上) |
米国の古典的な調査では、在庫コストは在庫金額の約2割が一般的とされ、その多くを在庫金利という資金コストが占めると考えられています。金利環境が変動しても、在庫コストの中で資金の固定化が経営に及ぼす影響は大きく、在庫コストを削減するうえで在庫金利の把握は不可欠です。
在庫コストの内訳や削減方法の全体像については、在庫コスト【算出するメリットや内訳、計算方法、コスト削減の方法とは?】もあわせてご参照ください。
在庫金利の計算方法【WACC式と短期プライムレート式】
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在庫金利の基本計算式は「平均在庫金額 × 在庫金利率(%)」です。金利率はWACCを基準に設定するのが一般的で、保管費などを加味してWACCより高めに設定されることが多いです。
在庫金利の計算式は以下の通りです。
在庫金利(円) = 平均在庫金額(円) × 在庫金利率(%)
ここで重要なのが在庫金利率の設定です。この金利率の基準として、一般的にWACCが用いられます。
WACCとは
WACCは、Weighted Average Cost of Capitalの略で、企業が資金を調達する際にかかるコストの平均を表す指標です。借入金と株主資本にかかるコストを、それぞれの構成比に応じて加重平均して算出します。
WACCの計算式:
WACC(%)= 負債コスト × (1 − 実効税率) × 負債 ÷ (負債 + 株主資本)
+ 株主資本コスト × 株主資本 ÷ (負債 + 株主資本)
たとえばWACCが2.7%なら、在庫金利率はそこに倉庫賃料や人件費などの保管コストを上乗せし、3〜5%程度に設定されることが一般的です。
在庫金利率を簡易的に設定する方法
株式が非上場である中小企業においては、資本の構成要素が客観的に可視化されにくいという構造的な背景があります。そのため、大企業のように理論上のWACCを厳密に算定することは実務上容易ではありません。
そうした場合、短期プライムレートを参考に在庫金利率を設定することもあります。
短期プライムレートとは金融機関が優良企業に対して適用する短期貸出金利の基準値です。
2026年5月時点の短期プライムレートは1.625%前後で推移しています。これに保管費や棚卸評価損のリスクを加味して、実務では2〜5%の範囲で設定されることが一般的です。
計算例
平均在庫金額が1,000万円、在庫金利率を3%に設定した場合:
在庫金利 = 1,000万円 × 3% = 30万円/年
月次に換算すると → 30万円 ÷ 12 = 約2.5万円/月
この30万円は実際に銀行口座から引き落とされるわけではありませんが、この在庫を持ち続けることで「年間30万円分の資金機会を失っている」ということを意味します。
在庫金利の目安はどのくらい?
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在庫金利率の目安はWACCを基準に2〜5%程度。在庫金額全体に占める在庫コスト(金利含む)は約20〜30%が一般的です。自社の業種・資本構成・保管環境に応じて設定しましょう。
在庫金利率の目安として一般的に言われているのは以下の範囲です。
- WACC基準の場合:2〜4%程度(保管費加算後は3〜5%が多い)
- 短期プライムレート基準の場合:2〜3%程度
- 在庫コスト全体(金利+保管費+評価損など):在庫金額の20〜30%が目安
業種によって目安は異なります。製造業では部品・仕掛品・製品と在庫の種類が多く、在庫金額が大きくなりがちなため、在庫金利の絶対額が大きくなる傾向があります。一方、食品・アパレルなど回転が速い業種では金利率よりも棚卸評価損(廃棄損)の比重が大きくなる場合があります。
自社の在庫金利率を設定する際は、次の手順で進めることが重要です。
- ①WACCまたは短期プライムレートを確認する
- ②保管費や評価損リスクを加算する
- ③毎期PDCAを回しながら見直す
見落としがちなポイント:資金拘束の対象に
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商品を出荷して在庫がなくなっても、売掛金・受取手形として回収されるまで資金は拘束されています。在庫金利を正確に管理するには、売上債権も在庫に準じるものとして捉える必要があります。
在庫金利を考えるうえで特に見落とされやすいのが売上債権の存在です。
商品を出荷した時点で在庫は帳簿上ゼロになりますが、売掛金や受取手形として代金が回収されるまでの間、会社の資金は依然として拘束されています。つまり、在庫が「売掛金」という形に変わっただけで、資金の固定化は続いているのです。
たとえば、月末締め翌月末払いの取引先に1,000万円分を出荷した場合、在庫はなくなりますが資金の回収は翌月末まで行われません。この1カ月間も在庫金利と同等の資金コストが発生しています。
在庫金利を正確に把握するためには、棚卸資産だけでなく売上債権の回収サイクルも含めて管理することが重要です。売上債権の回収期間が長い企業ほど、実質的な資金コストは在庫金利の計算値より大きくなることを念頭に置いてください。
在庫量が利益と税負担に及ぼす影響
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在庫が増えると損益計算書上の売上総利益は増加します。しかし資金は固定されキャッシュフローが悪化します。長期的には棚卸評価損・廃棄損が利益を圧迫し、税負担も増える構造です。
「在庫が増えると利益が増える」と聞いて不思議に感じる方もいるかもしれません。これは損益計算書の仕組みに起因しています。
売上原価は「期首在庫+仕入-期末在庫」で計算されるため、期末在庫が増えると売上原価が下がり、見かけ上の売上総利益が増加します。しかしこれはあくまで会計上の数字であり、実際には資金がキャッシュとして手元に残っているわけではありません。
在庫が多い状態が続くと、以下のデメリットが生じます。
- 資金繰りの悪化:現金が在庫という形で固定され、運転資金が不足しやすくなる
- 棚卸評価損の発生:陳腐化・破損・期限切れによる評価減が損失として計上される
- 税負担の増加:期末在庫が増えると課税所得が増え、法人税の負担が大きくなる
- 在庫金利の増加:平均在庫金額が増えるほど在庫金利コストも比例して拡大する
短期的には利益が増えて見えても、長期的には過剰在庫が経営を圧迫します。税金対策として在庫を意図的に増やすことは、在庫金利・保管費・評価損のリスクを考慮すると得策とは言えません。
在庫金利を下げる具体的な方法
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在庫金利を下げるには「平均在庫金額を減らす」か「在庫回転率を上げる」ことが基本です。適正在庫の設定・発注方式の見直し・滞留在庫の解消の3つが主要なアプローチです。
在庫金利の計算式「平均在庫金額 × 在庫金利率」から、在庫金利を下げるには平均在庫金額を減らすことが直接的な手段です。在庫金利率(WACC)そのものを下げることは資本政策の話になるため、現場レベルで取り組めるのは平均在庫の適正化です。
①適正在庫を設定して過剰在庫を防ぐ
適正在庫とは「安全在庫+サイクル在庫」の合計で、欠品リスクを許容範囲に抑えながら最小限の在庫を維持するための目標値です。品目ごとに過去の出荷データや需要変動をもとに適正在庫を設定し、超過分を定期的に解消することで平均在庫金額を下げられます。
②発注方式を見直す
定期発注方式(一定期間ごとに発注)と発注点方式(在庫が一定水準を下回ったら発注)を品目特性に合わせて使い分けることで、過剰発注を防ぎ平均在庫を圧縮できます。需要変動が少なく低価格な部品には発注点方式が有効です。
③滞留在庫・死に筋在庫を解消する
長期間動きのない滞留在庫は、在庫金利を押し上げる主要因です。ABC分析を活用してCランク品や長期不動品を特定し、値下げ販売・返品・廃棄を定期的に判断することが重要です。
また、リードタイムの長さも過剰在庫を招く要因のひとつです。サプライヤーとの交渉やリードタイム短縮に取り組むことで、在庫の適正化につなげやすくなります。
在庫削減の進め方・手順については在庫削減【目的・メリットや効果・進め方・方法・成功事例】で詳しく解説しています。
在庫管理システムでいくら在庫金利がかかっているかを見える化
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在庫金利の計算式はシンプルですが、元となる今の在庫金額がリアルタイムで把握できていなければ意味がありません。IoT在庫管理システムを使えば、在庫金額をリアルタイムに把握し、在庫金利の現状を経営指標として活用できます。
在庫金利の計算式は「平均在庫金額 × 在庫金利率」とシンプルです。しかし多くの企業では、この計算の前提となる「今、自社の在庫がいくらあるか」をリアルタイムで把握できていないという課題があります。
月次や四半期に一度の棚卸に頼っている場合、把握できる在庫金額はその時点のスナップショットに過ぎません。月中の在庫変動を捉えられないため、平均在庫の算出精度が低く、在庫金利のコストも正確に把握できていないのが実情です。
IoT技術を活用したスマートマットクラウドでは、在庫の下に設置した重量センサーにより在庫残量・在庫金額をリアルタイムで自動取得します。これにより、経営者や担当者は以下が可能になります。

- 今この瞬間の在庫金額を管理画面で確認できる
- 在庫金額 × 自社設定の在庫金利率で在庫金利負担を即座に算出できる
- 過剰在庫が発生していればAIが早期に検知し、発注量・発注タイミングの見直しにつなげられる
- 月次棚卸の工数を削減しながら、より精度の高い在庫金利管理を実現できる

在庫金利は計算式がわかっているだけでは経営改善につながりません。リアルタイムで在庫金額を把握し、在庫金利を経営指標として継続的にモニタリングする仕組みを構築することが、コスト削減と資金効率向上への第一歩です。
まとめ
本記事では、在庫金利の定義・計算方法・目安・見落としポイント・削減方法について解説しました。要点をまとめます。
- 在庫金利とは、在庫保有にかかる資金コストを金利に置き換えた管理会計上の指標(実際の支払いなし)
- 計算式は「平均在庫金額 × 在庫金利率(WACC基準で2〜5%が目安)」
- 売上債権も資金の固定化であり、在庫金利と同等のコストが発生することを忘れずに
- 在庫金利を下げるには平均在庫金額を減らすことが基本(適正在庫設定・滞留在庫解消・発注方式の見直し)
- リアルタイムの在庫金額把握により、在庫金利を経営指標として活用できる
在庫金利の管理は一度設定して終わりではなく、定期的な見直しと改善サイクルが重要です。スマートマットクラウドを活用することで、在庫の「今」を常に把握し、在庫金利コストを継続的にコントロールする仕組みを構築できます。
ら
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