在庫管理術
安全在庫とは【計算方法・適正在庫との違い、安全在庫を算出する計算式と目的・メリットとデメリット】
安全在庫とは
安全在庫(英語:Safety stock)とは、天候や季節、流行など不確定な需要変動により、欠品が発生しないように、最低限保管しておく在庫のことです。
安全在庫の量は多過ぎれば保管コスト増を招き、逆に少なすぎると販売の機会損失につながるため、慎重に計算する必要があります。
この記事では、安全在庫の求め方・計算方法や適正在庫との違い、安全在庫のメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。
また、安全在庫を算出するために欠かせない最適な閾値(発注点)を導き出す今、話題のIoTについてもご紹介!
安全在庫の求め方・計算方法【安全係数・標準偏差・発注リードタイム・発注間隔】
安全在庫の計算式は以下の通りです。
安全在庫=安全係数(安全在庫係数)×使用量の標準偏差×√(発注リードタイム+発注間隔)
では、安全係数(安全在庫係数)、使用量の標準偏差、発注リードタイム、発注間隔とは何か?どのように求めるのかを見ていきましょう。
安全係数(安全在庫係数)
安全係数(安全在庫係数)とは、どれぐらいまでなら欠品(注文に対して商品を供給できなかった割合)を許容できるかを表す数値のことです。
具体的には、100個の注文があったときに、90個しか納品できなかった場合、欠品率は10%となります。どこまでの欠品率を許容するのかにより、安全係数(安全在庫係数)は変わります。
一般的に使用されている安全係数(安全在庫係数)の数値は以下の通り。
欠品許容率(%) | 安全係数(安全在庫係数) |
0.1 | 3.10 |
1.0 | 2.33 |
2.0 | 2.06 |
5.0 | 1.65 |
10.0 | 1.29 |
20.0 | 0.85 |
30.0 | 0.53 |
統計学的に有意な数字だと言われ、よく使用されている安全係数(安全在庫係数)は欠品許容率5%の1.65です。
また、安全係数(安全在庫係数)は、以下のようにエクセルの関数「NORMSINV」を使って簡単に算出することもできます。
安全係数(安全在庫係数)=NORMSINV(1-欠品許容率)
使用量の標準偏差
使用量の標準偏差とは、商品の需要の変動を判断するための数値で、過去の使用量(出荷量・販売量)の標準値(平均値)のことです。
標準偏差により、過去の需要の変動を把握できるため欠品の防止に役立ちます。
標準偏差は、エクセルのSTDEV関数を利用すると簡単に計算ができます。その際、できるだけ多くの過去データをもとに計算した方が、よりリアルな数値に近づけることが可能に。
発注リードタイム(調達期間)
発注リードタイムとは、仕入れ先に発注してから、納品されるまでの日数のこと。
例えば3月1日に商品を発注した後、3月10日に商品が納品された場合は、リードタイムは9日になります。
発注間隔
一度発注した後に再度同じ商品を発注するまでの期間のこと。
安全在庫の実際の計算例
では、具体的な例をもとに、安全係数(安全在庫係数)、使用量の標準偏差、発注リードタイム、発注間隔を使って安全在庫数を計算してみましょう。
・一般的な欠品許容量5%を採用=安全係数は1.65
・標準値(平均値)=30
・発注リードタイム=8日間
・発注間隔=8日間
の場合、すべてを上記の安全在庫の計算式に当てはめると(算出された数字が小数点以下もある場合は切り上げ)。
-
- 安全在庫=1.65×30×√16=198
つまり安全在庫は198となるので、198個の在庫を準備しておけば、欠品率を5%程度におさえられるというわけです。
安全在庫と適正在庫の違い
安全在庫に似た用語に「適正在庫」があります。一見、同じような用語ですが、実際は異なります。
安全在庫と適正在庫の違いはWEBサイト「在庫管理110番」のコラムにて、下記のようにわかりやすく解説されています。
安全在庫とは、欠品を防ぐための在庫の下限値です。
適正在庫とは、在庫数の下限だけではなく、上限も決めて過剰在庫も防ぐことです。
引用:在庫管理110番「安全在庫の計算方法と設定の注意点」 閲覧日2024年4月10日
安全在庫は、欠品を防ぐのが目的で設定され、在庫数の下限を決めるもの。一方、適正在庫は、企業が利益を出すことを目的とし、在庫の下限だけでなく上限も決めるのが特徴です。
適正在庫の計算方法は、安全在庫にサイクル在庫(発注して次に発注するまでの間にどれぐらい在庫が消費されたのかを表す数値)もプラスします。
安全在庫算出のメリットと目的
安全在庫を計算することで企業が得られるメリットや目的は以下の通り。
-
- 販売の機会損失を防ぐ
- 製造ラインを安定稼働できる
- 欠品や品切れを防ぐことで顧客の信頼を得ることができる
- キャッシュフローが改善できる
安全在庫算出のデメリット
安全在庫を計算することでメリットが得られる反面、以下のような点がデメリットや注意点としてあげられます。
-
- 安全在庫の把握だけでは過剰在庫を防ぐことはできない
- 計算に手間がかかる
- 完全な欠品防止は難しい
- 需要の変動が激しい時期の対応が難しい
-
安全在庫の維持をサポートするIoT
人手不足、円安、物流・資材の高騰…といった厳しい経済状況を乗り越えていくには、いち早くデジタル化の重要さを認識、導入を始めることが重要とされています。
そのために、真っ先に効率化すべき業務が人力やアナログに頼って、本来の業務に大きな負担をかける在庫管理や発注、棚卸です。
在庫管理や発注、棚卸は本来の業務の合間や時間外に行うことが多く、従業員にとってかなりの負担となっているケースがほとんど。
さらに、発注ミスや確認漏れなどにより在庫不足や過剰在庫に陥ることは、生産性の低下、機会損失、顧客満足度の低下を招き、経営を大きく左右するため大きな心理的負担も伴います。
在庫管理や発注、棚卸業務の負担から従業員を解放することは人手不足対策のために欠かせません。
そこで注目され、近年続々と導入されているのが在庫管理・発注の自動化であり、その最も有効な方法として以下の2つが大きなキーワードとされています。企業の営みや産業全体をデジタルの力でよりよくしていく取り組み
● IoT(Internet of Things)
IIoT=「モノのインターネット化」
IIoTを使った家電や設備には、センサーやカメラなどが搭載されており、モノの状態や周辺環境といった情報を感知・収集し、インターネットを介して、それらのデータを人やモノに伝えます。
IoTを導入、在庫状況などを把握することで、安全在庫を維持し、より効率的な在庫管理や棚卸・発注が可能になります。次の章では置くだけで在庫の見える化・自動発注が可能!今、話題のIoT機器「スマートマットクラウド」をご紹介します。
適正な安全在庫算出に貢献!スマートマットクラウド
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スマートマットはサイズ展開豊富。ケーブルレスで、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。
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自社システムや他社システムと連携を行い、より在庫管理効率UPを実現します。
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