在庫管理術
仕掛品とは【仕訳や在庫管理の課題を解決する徹底ガイド】

この記事では仕掛品の正式な定義を分かりやすく説明し、仕掛品と半製品との違い、仕訳や原価計算方法を整理しました。また数量やステイタスの把握が難しい仕掛品の在庫管理の注意点や現場の課題とその解決策までを網羅的に解説します。
特に近年ではIoT機器やデジタル技術を駆使した管理手法が注目されています。製造業の業務効率化や在庫精度の向上を模索している方に、最新の知見をご紹介します。
仕掛品とは何か
仕掛品の定義
仕掛品とは、企業が販売を目的として製造を開始したものの、まだ完成していない製品を示します。これは会計上、棚卸資産(流動資産)に分類され、「原材料」「製品」と並ぶ形で在庫管理の対象となります。
日本語では「仕掛り品」とも表記され、「しかかりひん」「しかけひん」とも読みます。
仕掛品の具体例
仕掛品はさらに加工をする必要があり、具体的には以下のような特徴を持ちます。
- スマートフォンの筐体のみ(画面未装着)
- ファスナー未縫製の衣料品
- 実装前の電子回路基板や機構部品
などが仕掛品に該当します。
仕掛品と半製品の違い
仕掛品と間違えやすい言葉に、「半製品」があります。半製品も言葉の通り、まだ企業や工場で作られた中間的製品で、仕掛品と同じと勘違いされがちですが、実は仕掛品と半製品には次のような違いがあります。
分類 | 状態 | 販売可能性 |
---|---|---|
仕掛品 | 製造途中、未完成 | 販売できない |
半製品 | 中間完成、再加工可能 | 一部業種で可能 |
原材料・仕掛品・製品(在庫品)の違い
原材料・仕掛品・製品の違いを整理します。会計や生産管理の現場では、これらを正しく区別することが、原価計算や経営判断において非常に重要です。
区分 | 状態 | 会計区分 |
---|---|---|
原材料 | 加工前 | 棚卸資産 |
仕掛品 | 加工中、未完成 | 棚卸資産 |
製品(在庫品) | 完成済、販売可能 | 棚卸資産 |
製造工程に応じて、在庫区分が原材料→仕掛品→製品へと移行します。
各ステイタスでの在庫評価・原価評価が正確でなければ、キャッシュフローや利益計上に悪影響を及ぼします。正しく在庫評価を行うためには、原材料・仕掛品・製品の在庫状態・在庫数量を正確に把握することが不可欠です。
仕掛品は棚卸資産
仕掛品は、棚卸資産に該当します。
製品がまだ完成していない仕掛中の場合では、これまでに投入した原材料費や労務費などの製造原価を「仕掛品」勘定科目として資産計上し、棚卸資産(流動資産)の一部として管理します。
仕掛品の仕訳と計算方法
会計処理上の仕訳の基本
仕掛品に投入された費用(原材料費・労務費・製造間接費)は、「製造指示書」などに基づき記録され、仕掛品勘定に集約されます。製品完成後に仕掛品から製品へ振替処理されます。
そのため、仕掛品に投入された費用は、流動資産(棚卸資産)の勘定科目※として仕訳をしなければなりません。棚卸資産として計上していない場合は、税務署から指摘される場合があるので注意が必要です。
※勘定科目:日々の取引を帳簿に記入する時に使われる名称。例えば、電話代や郵便代は「通信費」など。
製造原価を求める計算式
当期製品製造原価=当期総製造費用+期首仕掛品棚卸高-期末仕掛品棚卸高
仕掛品棚卸高は、製造原価報告書や税務申告書の重要項目です。税務署の調査でも、仕掛品の計上漏れや評価誤りは確認対象となります。
仕掛品の在庫管理が必要な理由
正確な原価計算
製造原価を算出する際、期首及び期末の仕掛品棚卸高は重要な原価計算の要素です。仕掛品の在庫変動を正確に把握しなければ、原価の過小・過大計上を招き、財務諸表や利益計画に誤差が生じます。
継続的な在庫記録やシステム連携による「純リアルタイム棚卸」が、現代の製造原価管理では求められています。
キャッシュフロー安定化
過剰な仕掛品在庫は、製造費用が先行して支出される一方で、売り上げによる回収ができず、資金繰りを圧迫します。逆に在庫が不足すると、生産計画が遅延し、納期遅れや売上機会の逸失リスクが高まります。
仕掛品を適正に管理することは、キャッシュフローの安定と収益核の穂の両面から極めて重要です。
経営判断の精度向上
仕掛品の在庫変動を正確かつタイムリーに把握することは、製造現場の運営だけではなく、経営全体の意思決定にも大きく貢献します。特に、在庫水準・仕掛進捗・滞留箇所といった情報が可視化されていれば、「いつ・どれだけ・何を生産すべきか」という生産計画の調整が定量的に行えます。
すると、過剰在庫の圧縮や機会損失防止につながり、さらに資金繰り・人員配置などの経営資源の最適化にも寄与。さらに、納期遵守やムダ・ロスの最小化といった経営課題に対しても、データに基づく迅速な判断を可能にするために、仕掛品の定量管理は重要な基盤です。
仕掛品管理の課題と現場の悩み
安定した健全な経営のため、製造業では仕掛品の管理は重要視されています。
しかし仕掛品管理には次のような課題があります。
数量やステイタスの見えにくさ
仕掛品は製造途中で形状が定まっていないため、バーコードやRFIDを貼れなかったり、数量を目視で確認しにくかったりするケースがあります。さらに仕掛品在庫は製造ライン間や現場付近の仮置き場などに滞留しやすく、棚卸担当者が把握するのに時間や手間がかかったり、難しかったりする場合があります。
過剰在庫・不足在庫へのリスク
数量が不明確なため、過剰に生産して在庫圧縮ができない、あるいは不足して生産計画が滞る事態が発生しやすく、費用対効果の面で大きな問題となります。
棚卸の属人化や非効率
仕掛品の棚卸は時間と手間がかかるため属人化しやすく、担当者依存が常態化しやすいという課題があります。また製造技術者の暗黙知が共有されず、業務引継ぎが困難など、製造現場や現場周辺の非効率な業務実態にも悩みを持つ企業は数多くあります。
重量で「見える化」する仕掛品の新しい管理手法
仕掛品を厳密に管理するためには、できた仕掛品の数を生産管理システムへ入力する方法が有効です。しかし現状に即した管理をするためには、システムへのこまめな入力が必要で、そのことが製造現場の大きな負担となっていました。
「スマートマットクラウド」は完成した仕掛品の重量を計測して個数を自動登録をし、管理画面を通じて仕掛品の数を見える化します。在庫数がわからないために過剰生産に陥りがちだった、仕掛品在庫コントロールに役立ちます。
仕掛品在庫管理カイゼンの改善事例
属人化を脱却し、生産計画を「仕組み化」
◆Before
製造計画調整のノウハウが共有されておらず、職人の経験則に頼って計画の見直しが行われている製造現場は多数存在します。暗黙知は共有が難しく、職人の異動や退職の都度、現場は混乱し、業務効率が悪くなります。
◆After
スマートマットクラウドを導入することによって仕掛品在庫の重量変動データを取得することが可能です。重量変動データを活用することで、数値ベースで生産計画を調整することができ、また生産計画の見直し基準をルール化・可視化できます。
計画変更の判断基準が共有しやすくなり、勘や経験に頼らずとも、判断・運用できる仕組みを整えることが可能となります。
実在庫ベースで仕掛品の状況を見える化する方法をくわしく見る>>
仕掛品在庫を重さで見える化「スマートマットクラウド」
現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、発注を自動化するDXソリューション「スマートマットクラウド」を使えば、簡単に自動化が可能です。スマートマットの上に管理したいモノを載せるだけで設置が完了。
あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理し、適切なタイミングで自動発注してくれます。
●さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能です
●在庫圧縮を促進
推移を把握できるグラフで適切な在庫量を判断し、在庫圧縮を促進します
●置く場所を選びません
スマートマットはサイズまでのサイズ展開豊富。ケーブルレスで、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。
●API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、より在庫管理効率UPを実現します。