在庫管理術
仕掛品とは|意味・仕訳・在庫管理の課題をわかりやすく解説【図解・事例付き】
「経理から『仕掛品の金額を確認してください』と言われたけれど、正直どこを見ればいいのか分からない──」 そんな製造現場・生産管理担当者の方へ。
この記事では、仕掛品が会社のどこで、どのように「お金」として動くのかをわかりやすく整理します。
この記事でわかること
- 仕掛品の正式な定義と意味
- 半製品・原材料との違い
- 仕掛品の仕訳・原価計算の流れ
- 数量・ステータス把握が難しい仕掛品在庫の管理課題と解決の方向性
また記事後半では、IoT機器などを活用した仕掛品管理の最新動向にも触れます。 現場での見える化や在庫精度向上を検討する方にとって、管理体制を考えるヒントになるでしょう。
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仕掛品とは?わかりやすく解説
ひと言で現すと!仕掛品とは「現金化を待つ資産」
仕掛品とは、販売を目的として製造中の、まだ完成していない製品のことを示します。会計上は、棚卸資産(流動資産)に分類され、「原材料」「製品」と並ぶ在庫のひとつです。日本語では「仕掛り品」とも書かれ、「しかかりひん」「しかけひん」と読みます。

もう少しかみ砕いていえば、仕掛品とは「現金化を待っている資産の姿」と言えます。製造に必要な原材料費や人件費、外注費など、会社がすでに支出したコストが“モノの形”に変わって工場内に存在している状態。
つまり、仕掛品は「工場の床に置いてあるモノ」ではなく、会社の現金が一時的に姿を変えたものなのです。
製造工程で見ると!「仕掛品」は加工途中のモノ
製造の流れ図を見て、仕掛品のイメージの粒度を上げましょう。

まず原材料を仕入れ、これに加工を加えて製品(完成品)へと仕上げていきます。その途中の状態が仕掛品です。
仕掛品が増えるということは、まだ販売できない段階の資産が増えているということ。在庫として工場に滞留してしまうと、現金が回らず資金繰りが悪化するケースもあります。
【図解】半製品・原材料・製品との違い

仕掛品と間違えやすい言葉に、「半製品」があります。半製品も言葉の通り、企業や工場で作られた中間的製品で、仕掛品と混同されがちです。しかし最大の違いは"そのまま販売できるかどうか"にあります。
| 区分 | 状態 | 販売可能性 | 会計区分 |
|---|---|---|---|
| 原材料 | 加工前 | 販売不可 | 棚卸資産 |
| 仕掛品 | 加工中、未完成 | 販売不可 | 棚卸資産 |
| 半製品 | 中間完成、再加工可能 | 一部販売可能 | 棚卸資産 |
| 製品 | 完成済 | 販売可能 | 棚卸資産 |
【自動車工場の例】
- 鉄板・ネジ:原材料
- 塗装前のボディや組み立て途中のドア:仕掛品
- 組みあがったエンジン・タイヤなど単体販売可能な部品:半製品
- 完成車:製品
✍️製造現場で発生しがちなケースをピック
「仕掛品」と「半製品」を分ける境界線は、販売可能かどうか。同じ工程段階のものでも、社内でさらに加工・組立などの後工程が続く場合は「仕掛品」、他社へ販売して出荷する場合は「半製品」として扱われます。
仕掛品は棚卸資産

仕掛品は、会計上「棚卸資産」に分類されます。
製造途中に投入された原材料費や労務費などの製造原価を「仕掛品」勘定科目として資産計上します。
つまり、仕掛品はまだ現金になっていない在庫資産であり、正しく評価しなければ、利益やキャッシュフローに直接影響するものです。
仕掛品の会計処理―勘定科目・仕訳・求め方―現場判断を誤らないために知っておきたい基礎知識
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「仕掛品の仕訳」と聞くと、簿記や経理の専門知識が必要そうに思えるかもしれません。 しかし、ここで押さえておきたいのは“現場判断を誤らないための基本的な会計の仕組み”です。
この理解がないと、仕掛在庫をあいまいなまま処理してしまったり、原価や在庫の数字が合わなくなったりする原因にもなります。
まずは、最低限知っておきたい仕掛品の動きとお金の流れを整理しましょう。
仕掛品の動きは「2つのステップ」で理解できる
仕掛品の会計処理は、実はとてもシンプルです。
毎月の仕訳は「製造」と「仕掛品」という2つの勘定科目※1の間で行われる2ステップに整理できます。
※1:勘定科目とは、帳簿でのお金の動きを整理する「分類項目――タグや見出し」です。企業の活動・取引内容を性質ごとに分類し、例えば電話代やインターネット費用は「通信費」、製造に関わる費用は「製造」、仕掛品にかかった費用は「仕掛品」などと表示します。
【ステップ1】期首(月初)の仕訳:製造活動のスタート
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月初には、前期から繰り越された仕掛品──つまり前月末時点での「作りかけ在庫」──を 「仕掛品」から「製造」へ勘定科目を振り替えます。
これは、「今月、この仕掛品を引き継いで製造を進める」という合図のような動きです。
【ステップ2】期末(月末)の仕訳:在庫の確定

月末には、今月中に使い切れず残った“作りかけ在庫”を確認します。
この金額を「製造」から「仕掛品」に戻すことで、 当期に実際に完成させた製品のコスト(製造原価)を正確に算出できます。
具体例で理解しよう:パン屋さんのケーススタディ
たとえば、あるパン屋さんで次のような状況を考えます。
月初(期首)には、作りかけのパン生地(仕掛品)が 1万円分 残っていた
月末(期末)には、まだ焼き上がっていないパン生地が 2万円分 残った
このときのお金の動きは次のとおりです。
月初(期首):仕掛品の1万円を「製造」に振り替える
→ 仕掛品(資産)1万円 → 製造(費用)1万円
月末(期末):残っている仕掛品2万円を「製造」から「仕掛品」に戻す
→ 製造(費用)2万円 → 仕掛品(資産)2万円
このように、月初と月末でお金の行き先を確認するだけで、「今月いくらのコストで製品を作ったか」を正しく把握できます。
会計処理上の基本
仕掛品に投入された費用(原材料費・労務費・製造間接費)は、製造指示書などの記録をもとに「仕掛品勘定」に集約されます。製品が完成した時点で「仕掛品」から「製品」へと振り返る、という流れです。
仕掛品は棚卸資産(流動資産)の一部に当たるため、この処理を怠ると税務署から指摘を受けることがあります。正しい仕訳を行うことは、経理のためだけではなく現場の数字の信頼性を守ることにもつながります。
製造原価を求める計算式

仕掛品の金額は、製造原価を求める上でも重要な要素です。
会計上は次の式で計算されます。
当期製品製造原価 = 当期総製造費用 + 期首仕掛品棚卸高 - 期末仕掛品棚卸高
この「期首」「期末」の仕掛品棚卸高は、製造原価報告書や税務申告書の重要な項目でもあります。金額の計上漏れや評価誤りがあると、税務調査の対象となる場合もあるため、仕掛品の正確な管理と評価が不可欠です。
あなたの会社の財産リストで見る「仕掛品」
仕掛品は、決算書のひとつである「貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)」にも記載されます。貸借対照表は、会社の財産を一覧にした“財産リスト”のような書類です。
その中の「資産の部」にある「棚卸資産」という項目の内訳に、「原材料」「仕掛品」「製品」などが並びます。つまり、仕掛品は会社の資産の一部として扱われています。
✍️ワンポイントアドバイス
銀行や投資家が企業を評価する際、この「棚卸資産」の中身はよく確認されます。長期間動きのない仕掛品が多いと、「現金化できない資産」と判断される場合も。
正確な在庫管理は、製造現場だけでなく、財務の信頼性にも直結します。
仕掛品に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 仕掛品の期末評価額はどのように計算しますか?
A. 期末に在庫として残った仕掛品の金額を計算するには、主に原価法が用いられます。具体的には、仕掛品に掛かったコストである「原材料費」や「労務費」「光熱費」をもとに計算します。計算方法は他にも"先入先出法"や"平均法"など複数ルールがありますが、基本的には「掛かったコストをもとに計算する」と覚えておきましょう。
Q2. 仕掛品は会計上どう仕訳しますか?
A. 原材料費・労務費・製造間接費を「仕掛品」勘定に集約し、仕掛品のまま期末を迎えれば「仕掛品」勘定で仕訳します。仕掛品が完成したら「製品」勘定へと振替えます。
また原価計算上は「当期製品製造原価=当期総製造費用+期首仕掛品-期末仕掛品」。期末の仕掛品棚卸高の計上漏れは税務リスクとなります。
Q3. なぜ仕掛品の在庫管理は難しいのですか?
A. 仮置き場や生産ライン周辺での在庫の分散、数量把握の属人化、さらにひとつの製品に複数の生産工程があれば工程ごとの仕掛品が生じ、管理が煩雑化する—といった要因が重なります。その結果、過剰在庫や不足、原価ブレ、棚卸工数の増大を招きやすいという課題があります。

仕掛品の在庫管理の重要性と課題
在庫管理の重要性|原価・CF・経営判断のすべてに関わる
仕掛品の管理をおろそかにすると、会社の数字や判断に大きな影響を及ぼします。ポイントは次の3つ。

- 正確な原価計算
期首・期末の仕掛品棚卸高を正しく把握できないと、原価計算や利益計画に誤差が生じる - キャッシュフローの安定化
仕掛品が多すぎると資金が滞留し、少なすぎると生産遅延につながる。適正な在庫水準の維持が不可欠である - 定量管理による経営課題へのアプローチ
仕掛品を数値で判断することで生産計画の精度が高まり、資金繰りや人員配置といった経営資源の最適化、納期遵守やムダ・ロス削減にもつながる
仕掛品管理は単なる在庫管理ではなく、経営判断の精度を支える“会計と現場をつなぐ基礎”です。
在庫管理の課題|分かりづらい・数えにくい・人に依存する
仕掛品の管理が難しいのは途中工程にあるからだけではなく、「どの製品のどの段階なのか」「どれがどれに相当するのか」を正確に把握しづらいからです。
工程が複数ある、類似製品や派生モデルを扱う、設計変更や手直しが発生するといった場合には、混乱はより起こりやすくなります。

さらに、仕掛品は製造ライン周辺や仮置き場などに点在することが多く、棚卸のたびに人手と時間がかかります。結果として、
- 過剰在庫になっても気づけない
- 不足に早く対応できない
- 棚卸が属人化して引き継ぎが難しい
といった課題が生じやすくなります。
こうした「見えにくい」「数えにくい」仕掛品を、どうすれば現場の負担を増やさずに把握できるのか――。
その答えは、現場の作業を止めずに"数値化"できる仕組みを導入することにあります。
見えない仕掛品を“見える化”する「スマートマットクラウド」
IoT×重量データで、現場の感覚を数値化する
その仕組みを実現するのが、IoT機器を用いた在庫管理システム「スマートマットクラウド」です。スマートマットに仕掛品を載せるだけで、重量変化を自動で計測し、クラウド上にリアルタイムで数量を反映します。
従来のように目視で数え、生産管理システムへ数量を手入力していた現場では、「入力の手間が負担」「タイミングがズレる」といった問題が頻発していました。スマートマットクラウドを導入することで、こうした負担を解消し。現場の感覚をそのままデータに変換して正確な仕掛品管理を実現にします。

さらに、
- どのくらい仕掛品が残っているか
- どの工程で滞留しているか
を数値でリアルタイムで把握できるため、生産計画の修正や調整もスピーディに行えます。
IoT重量センサを搭載した「スマートマットクラウド」とは?

現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、発注を自動化するDXソリューション「スマートマットクラウド」を使えば、簡単に自動化が可能です。スマートマットの上に管理したいモノを載せるだけで設置が完了。
あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理し、適切なタイミングで自動発注してくれます。
●さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能。定期発注方式、定量発注方式にも対応します。
●生成AI「在庫最適化エージェント」による支援
在庫最適化エージェントにより、日次で在庫の欠品・過剰アラート、週次で在庫最適化の提案、月次で在庫圧縮効果などのレポート作成を支援します。
●置く場所を選びません
スマートマットはサイズまでのサイズ展開豊富。ケーブルレスかつ耐冷仕様で、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。従来の在庫置き場や仮置き場にもそのまま設置できます。
●API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、より在庫管理効率UPを実現します。

















