在庫管理術
在庫管理をExcelでするなら? 単票タイプ vs. 在庫移動表タイプ完全ガイド

在庫管理を Excel で始めたものの「表の型がバラバラ」「SKU が増えてもはや手に負えない」と感じていませんか?担当者が毎日入力しているはずなのに全体像がつかめず、欠品や過剰在庫が発生する──それは管理表の“型”が自社に合っていないサインです。
本記事では、Excel で使える二つの在庫表「単票タイプ」と「在庫移動表タイプ」を徹底比較し、現場の規模・運用体制・将来計画に合わせて最適な型を選ぶための判断基準と具体的な作成手順を提供します。在庫管理業務の改善に踏み出したい方へ、「どちらを選ぶか」「どう作るか」「限界を感じたときの次の一手」がクリアになる情報をお届けします。
Excel 在庫管理表は2系統 ― 概要を分かりやすく説明
単票タイプとは
単票タイプは紙の吊り下げ票を電子化した最も直感的な在庫表です。1シート=1SKUが割り当てられ、日付ごとに入庫・出庫・在庫数を追記するだけなのでExcelが苦手な担当者でも即日運用できます。
担当者名やロット番号、検査結果など詳細メモ欄を自由に追加できるため、品質トレーサビリティが重視される製造・医療分野で重宝します。一方、SKU が増えるとシートが乱立し、全体の在庫を合算するためだけに別ブックが必要になる点は大きな課題です。
在庫移動表タイプとは
在庫移動表タイプは複数のSKUを横一列に並べ、行方向に日付や取引番号を積み上げる一覧形式です。1シートで全品目の現在庫と推移を可視化できるため、販売動向の分析や発注点の一括計算が容易になります。
PivotTableやPower Queryと組み合わせれば、月次レポートもワンクリックで完成します。但し列数が増えるほど入力欄が煩雑になり、ファイル容量も肥大化するため高速ネットワークとルール化された入力手順が欠かせません。
在庫管理×エクセル|単票タイプの仕組み・メリット・デメリット
仕組み
単票タイプは、紙の吊り下げ票(在庫カード)を1シート=1SKUで電子化したものです。「日付・入庫・出庫・在庫・担当者・備考」を縦に追記し、最新行が常に現在庫を示すため、紙に書き込む感覚で更新できます。
フィルタや検索を掛けてもフォーマットが崩れず、商品個別の履歴が時系列で残るので監査トレーサビリティにも対応しやすい構造となっています。
登録すべきSKUが10品目以下、または重要度の高い品目だけを詳細に追跡したい場合には単票タイプが最適です。
単票のメリット:現場に浸透しやすくスモールスタートに最適
単票タイプのメリットには、
- 操作ハードルが低い
- 詳細情報を自由に追加
- ファイルが軽い
が挙げられます。
単票タイプは現場で長年使われてきた紙の在庫カードをそのままExcelに置き換えたものと考えてOK。列と行のラベルを作るだけで即運用でき、Excelが苦手な担当者や現場でも迷わず入力できるため教育コストがほぼゼロとなります。
紙運用の長所である「現物と一緒に移動できる」「誰でも追記できる」を継承しつつ、デジタルならではのフィルタや検索が可能。またロット番号・検査結果・写真リンクなど SKU固有情報をセルで拡張できるため、製造や医療品の厳格な履歴管理に有効です。
さらにSKUごとにブックを分割すれば 1 シート当たりの行数が少なく、計算負荷やメモリ消費を抑えられます。
このように単票タイプは、追加のメモリ用サーバーやNASなどPC周辺を整える必要性が低く、パソコンやエクセル・表計算ソフトに関してリテラシーが高くない現場でも抵抗なく導入できるため、スモールスタートに最適です。
単票のデメリット:全体把握やデータ分析には不向き
一方で、単票タイプのデメリットは
- 全体俯瞰が困難
- 横断分析が手間
が挙げられます。SKUが10~20を超え始めた段階で合算集計や横断的な分析が必要になると、別シートでリンク集計する必要がでてきます。そうなると、シート間リンクの維持や更新漏れがボトルネックとなります。
また横断分析するためにPivotTableやPower Query で統計を取ろうとすると、SKUごとのシートを結合する前処理が必須になり、業務フローが複雑化します。
在庫管理×エクセル|在庫移動表タイプの仕組み・メリット・デメリット
仕組み
在庫移動表タイプでは行(縦軸)に管理物品(SKU群)を重ねていき、列(横軸)に 入出庫履歴を書き込むことで、「列方向(横待ち)」で管理します。そのため、「どの商品が欠品目前か」「月次の回転率が低いか」を色分けやグラフで瞬時に把握できます。
また「SUMIFS」で月次入出庫を一括集計し、「IF+条件付き」書式で欠品セルを自動赤表示するなど、在庫を俯瞰で把握するためにさまざまな工夫を加えることが可能です。Power Queryで年間シートをマージし、ピボット化することで経営指標までワンストップで可視化できるような設計で在庫管理表を構築できます。
メリット:可視化効果で迅速なフォローに寄与
在庫移動表の代表的なメリットは以下。
- 全体を瞬時に可視化
- 共有編集と自動化に強み
- 多品目でも1ファイルで完結
欠品直前のSKUや回転率の低い滞留在庫を色分け・グラフ化すれば、発注判断や施策検討がダッシュボード感覚で行えます。そのため、在庫データに基づく迅速かつ的確なアクションをとることが可能です。
また、社内全体でMicrosoftアカウントを保有し、Teamsなどを活用している企業文化であれば、エクセルのファイルをもとにした共有や自動化に強味があります。OneDrive上などで共同編集すれば入力がリアルタイム反映され、Teams通知やCSV出力を自動化します。
さらに最大限、シート・セルを活用することで、複数拠点の在庫やECサイト用在庫・卸売り用在庫の一括管理など、横串での在庫管理にも適しています。
デメリット:想定される運用リスクと回避策
在庫移動表タイプには以下のようなデメリットが発生します。
- 列肥大・入力ミス
- 詳細情報の煩雑化
- ファイル重量化によるデータ反映の遅延
SKUが数百ともなると縦スクロールが長大となり、目視チェックや入力が難しくなり、ミスの誘発率の高まります。また1SKUごとに詳細情報(発注担当者・ロット・有効期限・JIS規格・有効期限)などを記載しすぎると、在庫変動や欠品といった重要な情報の可読性が下がります。
これらの防止策として、
① データ入力用シートと集計用シートを仕分け
② ユーザーフォームやドロップダウンで入力値を制限
③ 年次ごとにファイルをアーカイブして軽量化
といった方法が有効です。また備考欄を設けにくいため、詳細メモは別シートに INDEX で呼び出す設計が推奨されます。
【比較表】単票 vs. 在庫移動表 ― 違いが一目で分かる!
次に単票タイプと在庫移動表タイプを管理対象など各項目ごとに比較します。日々の在庫管理業務における運用負荷や分析したい精度に考慮し、適切な型を選ぶ参考としてください。
項目 | 単票タイプ向け | 在庫移動表タイプ向け |
---|---|---|
管理対象
|
個別SKU | 複数SKU |
主な目的 | 詳細トレーサビリティ | 在庫全体を俯瞰・可視化 |
情報精度 | 高い | 中程度 |
作成難易度 | 容易 | 中~難(別シート/ファイル転記) |
ファイル負荷 | 低い | 高い(集中する) |
適した事業規模
|
小規模/特定品目 | 中~大規模/多品目 |
典型的リスク
|
全体把握不足 | 誤読・入力ミス |
在庫管理×エクセルの活用事例
単票タイプの活用事例|個人経営の小規模店舗や重要品目の管理
個人経営の雑貨店では、SKUごとにシートを分けて仕入日・原価・販売価格・顧客メモを記録し、少量多品目の変動をきめ細かく追跡しています。
また重要品目の管理の場合、たとえば製造業で重要部品をロット番号単位で管理し、工程担当・検査結果も同じシートに残すことで監査対応を強化しています。現場スタッフが PC になじみやすい点も導入メリットです。
在庫移動表タイプ
ECアパレル企業ではサイズ・カラー別に列を分け、売れ筋の残数を自動集計して発注点を色でアラート表示するといった工夫を加えて在庫移動表タイプを活用しています。
また膨大な品目を扱う食品卸では、100 SKU以上を入出庫ベースで記録し、賞味期限列に条件付き書式を設定することで食品ロスを20 %削減しました。多品目を扱うほど一覧の効果が大きく、経営指標まで一気通貫で見える化できます。
在庫管理×エクセル|在庫管理表の作り方と関数設定ポイント
関数を使って在庫の残数や増減を把握できる
最初にヘッダー行へ「日付/取引No/入庫/出庫/現在庫」を配置し、列固定で視認性を確保。SKU はテーブル化してフィルタを有効にし、データ入力はユーザーフォームかドロップダウンで誤入力を防ぎます。
テーブル化により追加行が自動拡張され、数式メンテナンスも最小限で済みます。
推奨関数:VLOOKUP/SUMIF/IFERROR/条件付き書式
またやや複雑な関数としては、VLOOKUP関数を使って別のファイルのデータをセルに読み込むことができます。例えば、出庫数のみを扱うエクセルファイルだけを別に作って倉庫のPCから扱えるようにします。
そして倉庫からモノを出庫する際に、出庫数だけをデータ入力してもらうことで自動的に上記イラストにある表のD列(出庫数)が埋まっていきます。
月別集計は「SUMIFS」で範囲と日付を絞る、欠品アラートは「IF(実在庫<安全在庫."要発注","")」と条件付き書式で赤セル化。マスタ取得は 「VLOOKUP」または最新 Excel なら「XLOOKUP」 の保守性が高めです。さらにエラー回避に「IFERROR」を組み合わせれば集計シートが崩れません。
バックアップ・共有・権限管理のポイント
OneDriveやSharePoint でブックを共有し、ファイル競合防止を有効化。Power Automate を使って毎日深夜にバックアップコピーを自動保存すれば、万一の破損にも即時復旧できます。権限は「列の挿入・削除」「マクロ編集」を管理者だけに限定し、フォーマット崩れを防ぎましょう。
テンプレートを崩さない勘どころ
在庫管理表をテンプレート化し、必要な関数をセルに埋め込んでおけば、入出庫や納品数などの手元のデータを入力するだけで、在庫数が算出されます。
簡単なデータ入力だけでOKなので、エクセルの関数を扱えない人でも在庫状況の把握が可能。入力が必要なセルだけ色やセルの囲みを変えて見た目を分かりやすくしたり、また関数を埋め込んだセルにはロックをかければ、間違って関数を消されたり、テンプレートを崩される心配もありません。
ここ最近ではインターネットで無料の在庫管理表のテンプレートがダウンロードできるようになっており、カスタマイズも可能ですよ。
マクロを使って複雑な操作を自動化
SKU 数が多く処理が複雑になってきたら、ヒューマンエラーを防ぐためにもExcel マクロで作業を自動化するのが効果的です。マクロに「週初・週中・週末で発注点を判定し、発注書を発行する」一連の操作を記録しておけば、次回からは 数クリックで発注書まで出力できます。
さらに、月次レポート向けに 資材や製品在庫の推移をグラフ化する処理 も同じく記録しておけば、データ更新後にワンボタンで最新グラフを作成でき、報告作業が大幅に短縮されます。
※マクロとは:Excel に一連の操作を記録して自動実行させる機能で、VBA などの本格的なプログラミングを覚えなくても数クリックで命令を出せる
在庫管理×エクセルで限界を感じたら ― 次の選択肢
SKUが100を超えるとファイルは重くなり、関数の再計算だけで数分かかることも珍しくありません。また当然ながら人的ミスの誘発率も高まり、実在庫と理論在庫に著しい乖離が生じてくる危険性も孕みます。
そうなると、エクセルや表計算ワークスを用いた在庫管理は効率化・自動化どころではなく、「DX」にも程遠くなるでしょう。
●手作業が多く効率化につながらないエクセルを使った在庫管理
エクセルの表を作るところからはじめ、試行錯誤しましたが、もともと 手作業の業務が占める割合が大きいのと、パソコンを使いこなせる人が限られていたのとで、効率化できた部分は微々たるものでした。
人的ミスやタイムラグが経営リスクになる前に、クラウド型在庫管理システムの検討を推奨します。代表的なクラウド型在庫管理システムは以下。
ソフト名 | 料金(税込) | 対応業種 | 主な機能 |
---|---|---|---|
SmartMat Cloud | 要問い合わせ | 製造・医療・宿泊・インフラ | IoT重量計で24 h在庫監視/自動発注/外部連携/分析 |
zaico | 月額3,278円~ | 小売・EC | クラウド/バーコード/リアルタイム更新 |
ロジクラ | 月額9,900円~ | EC・物流 | WMS・ハンディ端末・ラベル発行 |
キャムマックス | 要問い合わせ | 製造 | 生産~販売一括管理 |
Zoho Inventory | 月額4,400円~ | 幅広い | マルチチャネル/受注・出荷/レポート |
ロジザード ZERO | 月額44,000円~ | EC・物流 | 複数倉庫/WMS/外部連携 |
CSV連携でこれまでのエクセルデータがムダにならない!在庫の自動計測ができる「SmartMat Cloud」とは
現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、発注を自動化する在庫管理システム「SmartMat Cloud(スマートマットクラウド)」を使えば、在庫管理の自動化・超効率化が簡単に叶えられます。スマートマットの上に管理したいモノを載せるだけで設置が完了。
あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理。在庫数をリアルタイムで自動計測し、設定した発注点を下回ると取引先へ自動発注します。
導入実績は 1,800 社超、製造・医療・宿泊・インフラなどさまざまな現場で「棚卸作業 80 %削減」「欠品ゼロ継続」など具体的な成果を実証。Excelの在庫移動表で蓄積した CSVをそのまま取り込めるため、エクセルでの在庫管理からの移行コストも低く抑えられます。
さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能です。
在庫圧縮を促進
推移を把握できるグラフで適切な在庫量を判断し、在庫圧縮を促進します。
置く場所を選びません
スマートマットはサイズ展開豊富。ケーブルレスで、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。
API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、より在庫管理効率UPを実現します。
エクセル入力の手間はナシ!スマートマットクラウドで在庫管理効率化に成功した事例
この記事を書いた人

スマートマットクラウド メディア編集部
スマートマットクラウド メディア編集部です。業務効率化や業務の課題解決などをわかりやすく解説します!
【スマートマットクラウドとは?】
スマートマットの上にモノを置き続け、重さで数を数えるIoTサービスです。
ネジなどの部品、副資材・仕掛品・粉モノや液体の原材料まで、日々の在庫確認や棚卸・発注まで自動化します。