在庫管理術
棚卸しのやり方・手順を徹底解説|準備から差異処理・効率化まで
棚卸しのやり方は、①事前計画・帳票準備 → ②在庫の整理・仕分け → ③実地カウント → ④帳簿との照合・差異処理 → ⑤記録・報告 の5ステップで進めます。
本記事では特に品目数(SKU数)が多く管理が複雑な製造業や倉庫業の担当者向けに、各ステップの具体的な手順と、ミスを防ぐチェック箇所、作業を劇的に効率化するポイントを解説します。
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このパートをまとめると!
棚卸しとは、実際の在庫数量を数えて帳簿と照合する作業です。在庫差異の発見・正確な資産把握・適正な税務申告の3つが主な目的で、多くの企業では年1〜2回(決算期)+月次で実施します。
棚卸しとは、倉庫や工場に保管されている在庫の数量・状態を実際に確認し、帳簿やシステム上の記録と一致しているかを検証する作業です。「実地棚卸」とも呼ばれます。
棚卸しを実施する主な目的は3つあります。
- 在庫差異の発見・是正:紛失・盗難・数え間違いによる在庫のズレを把握し、管理精度を高める
- 正確な資産把握:保有在庫の数量・金額を正確に算出し、経営判断の精度を上げる
- 適正な税務・決算対応:棚卸資産の評価額が決算書に反映されるため、法律上も正確な実施が求められる
棚卸しの実施頻度は業種・企業によって異なりますが、一般的には年度末(期末)と年度初め(期首)の年2回が基本です。
製造業では月次棚卸を実施する企業も多く、在庫回転率の高い品目は週次・日次で管理するケースもあります。
棚卸しの詳細な目的・種類・評価方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
▶関連記事: 棚卸とは?目的・種類・評価方法をわかりやすく解説
棚卸しの種類と自社に合うやり方の選び方
このパートをまとめると!
棚卸しには実地棚卸と帳簿棚卸、また定期棚卸と循環棚卸(サイクルカウント)の区分があります。現場規模・品目数・管理精度の目標に応じて最適な組み合わせを選ぶことが、効率化の第一歩です。
実地棚卸と帳簿棚卸
実地棚卸は、現場に出向いて在庫を目視・手作業でカウントする方法です。最も確実に実在庫を把握できる一方、作業負荷・人件費が大きいというデメリットがあります。
帳簿棚卸は、在庫管理システムや台帳の記録をもとに在庫数を把握する方法です。日常的に入出庫を正確に記録していれば実地カウントなしに在庫を管理できますが、記録ミスが蓄積すると実在庫との差異が広がるリスクがあります。実務では、実地棚卸と帳簿棚卸を組み合わせて精度を担保するのが一般的です。
定期棚卸と循環棚卸
定期棚卸は、年1〜2回や月次など決まったタイミングで全品目を一斉に数える方法です。全体の在庫状況を一括で把握できますが、作業日に業務が止まる・人員を集中投下する必要があるという負担があります。
循環棚卸(サイクルカウント)は、品目を複数グループに分けて日々・週次で少しずつカウントを回していく方法です。業務を止めずに在庫精度を維持できるため、SKU数が多い製造業・倉庫業で採用が広がっています。
カウント方式の選び方
| 方式 | 概要 | 向いているケース |
|---|---|---|
| リスト方式 | 品目リストをあらかじめ用意し、カウントした実数をリストに記入する | 品目数が多い・担当者が少ない現場。作業スピードが早い |
| ブラインド方式 | リストを使わず在庫をカウントし、後から帳簿と照合する | カウント精度を最大化したい場合・監査対応が必要な場合 |
製造業・倉庫では、定期棚卸×リスト方式が最も広く使われています。SKU数が1,000点を超える場合は、A品目(高回転・高単価)のみ月次サイクルカウントを導入し、B・C品目は定期棚卸で管理するといった組み合わせも有効です。
【ステップ1〜2】棚卸の事前準備
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棚卸しの品質は事前準備で8割が決まります。計画・棚卸表の整備・現場の整理整頓を怠ると、当日のカウントミスや差異対応で余計な工数が発生します。

ステップ1:棚卸計画の立て方
棚卸しを始める前に、以下の項目を決定・関係者に周知します。
- 実施日程・時間帯:業務への影響を最小化するため、納品・出荷が少ない曜日・時間帯を選ぶ
- 対象範囲:全品目か、特定のロケーション・品目カテゴリに絞るかを決定する
- 担当者と担当エリアの割り振り:1人が担当するエリアを明確にし、重複カウント・漏れを防ぐ
- 作業手順マニュアルの作成・配布:棚卸未経験者でも一人で作業できるレベルのマニュアルを用意する
- 棚卸前の在庫移動の禁止:棚卸開始直前〜終了まで、原則として在庫の入出庫を止める(カットオフ管理)
ステップ2:棚卸表(棚卸票)の作成ポイント
棚卸表は、実地カウントの記録用紙であると同時に、後の帳簿照合の根拠書類になります。以下の項目を必ず含めましょう。
| 項目名 | 記載内容 |
|---|---|
| 品目コード・品名・規格 | 棚卸対象の品目を特定するための基本情報を記載します。 |
| 保管ロケーション | 棚番号・エリア名など、保管場所が分かる情報を記載します。 |
| 帳簿上の在庫数 | リスト方式の場合に、帳簿やシステム上の在庫数を記載します。 |
| 実数記入欄 | 実際にカウントした数量を記入します。カウント担当者の署名欄を設けると、責任の所在が明確になります。 |
| 備考欄 | 損傷品・期限切れ品など、特記事項があれば記載します。 |
ロケーション単位でシートを分割し、担当者ごとに配布すると作業がスムーズです。Excelで管理する場合は、カウント後にシステムへ転記する工数が発生するため、バーコードスキャン対応のハンディターミナルやアプリとの併用も検討してください。
▶︎関連記事:棚卸表を徹底解説!作り方・保存期間・効率化のポイントを紹介
現場の整理整頓(5Sの実施)
棚卸し前に現場を整理整頓しておくことは、カウントミスの防止と作業効率向上に直結します。具体的には以下を実施します。
- 同一品目が複数箇所に分散している場合は1か所に集約する
- 廃棄予定品・返品品を通常在庫と明確に分離してラベリングする
- 棚のラベル(品目コード・ロケーション番号)が正確に貼付されているか確認する
- 数えにくい小物部品は計数用の入れ物(トレイ等)に移す
棚卸し事前準備チェックリスト
- □ 実施日・時間帯・担当エリアを全員に周知した
- □ 棚卸表(棚卸票)を印刷・配布した
- □ 作業手順マニュアルを配布した
- □ 棚卸開始前に在庫移動を停止した
- □ 廃棄品・返品品を分離・ラベリングした
- □ 棚のロケーションラベルを確認・修正した
- □ 小物部品の計数用トレイを用意した
- □ ハンディターミナル・スキャナーの動作確認をした
【ステップ3】実地カウントの手順とよくあるミス
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実地カウントはエリア→棚→品目の順で進め、カウント済みエリアにテープや付箋等の目印をつけながら作業します。二重カウントと抜け漏れを防ぐことが最大のポイントです。
カウントの進め方
実地カウントは以下の順序で進めます。
- 担当エリアの入口から順番に一方向で進める:行ったり来たりをせず、U字型または蛇行型のルートでエリアを一周する
- 棚単位でカウントし、完了した棚に済みの目印をつける:テープや付箋を使い、カウント済み棚を視覚的に区別する
- 品目ごとに実数を棚卸表に記入する:数量は鉛筆・ペンどちらでもよいが、修正は二重線で行い消しゴムで消さず証跡保全する
- 担当エリアの完了後、チームリーダーに報告する:確認後、次のエリアへ移る
リスト方式とブラインド方式の具体的な動き
リスト方式の場合:あらかじめ品目コード・品名・ロケーションが印刷されたリストを持参し、棚の品目を確認しながら実数をリストの所定欄に記入します。リストにない品目を発見した場合は「リスト外品目」として別途記録します。
ブラインド方式の場合:品目情報なしで棚を一点ずつ確認し、品目コード・数量・ロケーションを自分で記入します。カウント後に事務所へ戻り、帳簿と照合します。カウント精度は上がりますが、時間がかかるためブラインド方式は高単価品・重要管理品に絞って適用するのが現実的です。
よくあるミスとその防ぎ方
棚卸しでは、よくあるミスをあらかじめ把握し、防止策を手順として徹底しておくことが重要です。
| よくあるミス | 防ぎ方 |
|---|---|
| 同じ棚を二重にカウントする | カウント済み棚に「済み」テープ・付箋を貼る |
| 棚の奥・上段・下段の在庫を見落とす | 棚の前後・上下を必ず確認するルールを手順書に明記する |
| 箱の中身を確認せずに外箱の表示数を記録する | 封緘されていない箱は必ず開封・確認。封緘済みの場合は「未開封確認」と明記する |
| 棚卸し中に入出庫が発生してカウントがズレる | 棚卸し開始前にカットオフ※を徹底し、やむを得ず入出庫する場合は別途記録して後で補正する |
| 小物部品の数え間違い | 重量計(カウンティングスケール)を活用して重量から個数を算出する |
※カットオフ:入出庫や伝票処理を特定のタイミングで止め、帳簿の区切りを明確にすること
【ステップ4〜5】帳簿照合と差異処理の手順
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実地カウントで得た実在庫数を帳簿と照合し、差異があれば原因を調査して帳簿を修正します。差異が生じた在庫は「棚卸減耗損」として会計処理します。
ステップ4:実地数と帳簿数の照合方法
棚卸表への記入が完了したら、帳簿、つまり在庫管理システムまたはExcel台帳の数値と突き合わせます。
- ①棚卸表の実数をシステムに入力する(またはシステム画面と棚卸表を並べて照合する)
- ②差異(実数−帳簿数)を品目ごとに算出する
- ③差異が許容範囲内か否かを判定する(例:±3個以内、または±1%以内)
- ④許容範囲を超えた品目を要調査リストとしてリストアップする
ステップ5:差異が出た場合の原因調査と処理フロー
差異の主な原因は以下のとおりです。原因ごとに対処方法が異なります。
- カウントミス:再カウントを実施。差異が解消されれば帳簿の修正は不要
- 入出庫記録の漏れ・誤記:伝票・システムの入出庫履歴を遡り、誤りの箇所を特定して修正
- 品目の置き場所違い:他のロケーションに紛れ込んでいないか確認。見つかれば正しいロケーションへ移動
- 紛失・盗難・自然減耗:原因が特定できない場合は「棚卸減耗損」として会計処理する
- 製造過程での使用記録漏れ:製造指示書・ピッキングリストと突き合わせて使用数量を確認
棚卸減耗損の考え方
棚卸減耗損とは、帳簿上の在庫数と実際の在庫数の差、減少分を費用として計上する会計処理です。自然蒸発・加工くずなど正常な減耗は「売上原価」に算入し、大規模な紛失・火災など異常な減耗は「特別損失」として区分します。
製造業では毎月の棚卸差異を積み上げて分析することで、どの工程・品目で減耗が多いかを把握し、工程改善や防犯対策の優先順位付けに活用できます。
▶︎関連記事:棚卸減耗損【算出の目的や計算方法・発生原因・対策方法】
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このパートをまとめると!
棚卸しの効率化は①手順の標準化、②ツール活用、③リアルタイム在庫管理の導入の3段階で進めます。特に重量センサーを使ったリアルタイム在庫管理は、棚卸しそのものの頻度・工数を大幅に削減できます。
作業マニュアル・手順書の整備
担当者が変わっても同じ品質で棚卸しができるよう、誰でも読んで即実施できるレベルの手順書を整備します。手順書には、担当エリアの地図・カウントの進め方・よくあるミスとその対処法を含めると効果的です。
手順書の整備により、棚卸し当日のレクチャー時間を削減でき、ベテラン担当者への属人化リスクも軽減できます。
バーコード・ハンディターミナルの活用
バーコードスキャナーやハンディターミナルを使うと、品目コードの手書き入力が不要になり、転記ミスを大幅に減らせます。スキャンしたデータがそのままシステムに取り込めるため、棚卸後のデータ入力工数もゼロになります。
初期投資はかかりますが、SKU数が500点を超える現場では導入によるROIが高く、1〜2年で投資回収できるケースが多いです。
在庫管理システム(WMS)の導入
倉庫管理システム(WMS)や在庫管理ソフトウェアを導入すると、入出庫の都度リアルタイムで帳簿が更新されるため、棚卸し時の帳簿照合が格段にスムーズになります。手書き台帳・Excelによる管理では限界があり、SKU数の増加・多拠点化に伴い棚卸しの負担が急増する前に、システム化を検討することをお勧めします。
重量センサーによるリアルタイム在庫把握
スマートマットクラウドは、在庫の下に置くだけで重量から在庫数をリアルタイムに自動計測するIoTシステムです。

在庫数が常時クラウドに記録されているため、対象品目の棚卸しはダッシュボードの確認だけで完結し、実地カウントの工数を大幅に削減できます。
💡 専門家の経験からの一言アドバイス
月次棚卸の精度を上げることは大切です。1回あたり数時間〜丸1日、担当者を現場に張り付けることになります。ミスがあれば数え直し、誤差が大きければ深夜まで原因を追う。この繰り返しが優秀な人材に「この仕事に将来性があるのか」という疑問を植えつけます。
棚卸しの効率化は、在庫最適化はもちろん「人が辞めない現場をつくる」という観点からも取り組むべき経営課題です。手作業が当たり前になっている現場ほど、一度立ち止まって工数を可視化してみることをお勧めします。
棚卸しの工数・在庫差異を同時に解決したい方へ
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棚卸しの頻度はどれくらいが適切ですか?
法的な最低頻度は定められていませんが、決算期(年1〜2回)の実施は実務上必須です。製造業では月次棚卸が標準的で、在庫差異の早期発見・在庫圧縮の観点から月1回を推奨します。在庫管理システムを導入してリアルタイムで在庫を把握できる環境では、実地棚卸の頻度を減らし、差異が疑われる品目のみスポットでカウントする運用も可能です。
棚卸し作業を外部に委託できますか?
棚卸し作業(実地カウント)そのものは、棚卸し専門の外部業者へ委託できます。ただし、帳簿との照合・差異原因の調査・会計処理は社内で実施する必要があります。外部委託は大規模な年次棚卸し時のコスト比較として有効ですが、品目・ロケーションの把握に時間がかかるため、事前準備(手順書・棚卸表の提供)が重要です。
棚卸しと年次決算はどのような関係がありますか?
棚卸資産(原材料・仕掛品・製品など)の期末残高は、売上原価の算出と決算書の貸借対照表に直接影響します。実地棚卸を実施しないと、在庫の評価額が実態と乖離し、税務申告上の問題が生じる可能性があります。会計士・税理士からも年度末の実地棚卸の実施を求められるケースが多いため、決算スケジュールに合わせた棚卸し計画を年度初めに立てておくことを推奨します。
まとめ
この記事では棚卸しのやり方を5ステップで整理しました。
- 事前計画・棚卸表の準備:日程・担当者・範囲・カットオフ管理を決定し、棚卸表を整備する
- 在庫の整理・仕分け:現場の5Sを実施し、廃棄品・返品品を分離する
- 実地カウント:エリア→棚の順に一方向で進め、カウント済み棚に目印をつける
- 帳簿照合・差異処理:差異の原因を調査し、カウントミス・記録漏れ・棚卸減耗損を適切に処理する
- 記録・報告:棚卸結果をシステム・台帳に反映し、差異傾向を分析して次回の改善に活かす
棚卸しの精度と効率は、事前準備の徹底・ツールの活用・リアルタイム在庫管理の導入によって大きく改善できます。特に製造業・倉庫では、SKU数の増加に伴い手作業での棚卸しの限界が早くに訪れます。在庫管理システムやIoT重量センサーの導入を含めた仕組みづくりを検討することで、棚卸し工数の削減と在庫差異ゼロの実現に近づけるでしょう。
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