在庫管理術
在庫管理ツール選定ガイド【実在庫の情報を正確に収集する識別機器の種類と使い分け】

在庫管理の精度向上と業務効率化を図るうえで、実在庫情報を正確にデータ化する識別ツールの選定は重要な要素です。バーコードリーダーやRFID、AIカメラ、IoT重量計など、多様なツールが存在しますが、それぞれの特性を理解し、管理対象物品に適したツールを選ぶことが求められます。
本記事では、各種識別ツールの特徴や適用事例を紹介し、最適な選定のためのポイントを解説します。 いかに確実に実在庫情報をデータ化・収集すべきかでお悩みの方は、ぜひ一読ください。
在庫管理システムと識別ツールの関係
在庫管理システムとは、庫の入出庫や棚卸、発注などの業務を効率化するためのソフトウェアです。これらのシステムが正確に機能するためには、実在庫情報を正確に収集・入力する必要があります。その役割を担うのが識別ツールです。
この識別ツールは、物品の情報を読み取り、在庫管理システムにデータを提供するハードウェアであり、在庫管理の精度と効率を左右する重要な要素です。
在庫管理システムと識別ツールに求められること
在庫管理システムはソフトウェアが処理する情報範囲・情報量だけではなく、視覚的に把握しやすく、分析しやすいデータ形式への変換が、今後のDXのためにも求められています。
一方で識別ツールには利便性だけでなく、データ化の正確性や精度が求められます。識別ツールの使用方法が煩雑であれば、実際に搬入や入出庫を行う現場スタッフへの定着が難しくなります。また収集したデータの精度が低ければ、理論在庫と実在庫の大きな乖離が生まれます。
昨今、日本国内で顕著になってきた「人手不足」を鑑みると、複数拠点の在庫情報を同時に処理できる在庫管理システムや、容易に扱え正確性の高い識別ツールが、ますます重要となってくるでしょう。
在庫管理の識別ツールの種類と特徴
クラウドと連携するタイプの識別ツールは、読み取ったデータを上位システムにクラウドやサーバーを介して送信する必要があるため、その多くがIoT対応です。
さらに近年ではハンディターミナルや遠隔管理用のカメラには、画像や文字を学習するAIが搭載され、読み取り精度が向上するツールが増えています。
主な識別ツールは以下の4種類。
【識別ツール】
- コード系ツール※1
- RFID
- 遠隔監視AIカメラ
- IoT重量計
ひと口に在庫管理といっても、高額なため在庫一点一点の確実な管理が必要、消費者保護のため使用期限やロット情報の厳密な管理が必要、機会損失に直結する欠品やキャッシュの悪化に繋がる過剰在庫を防ぐため、適正な数量管理が必要、など目的はさまざまです。
管理する目的に応じて、識別ツールは異なってきます。次の章からは各識別ツールの特徴や適した管理物品について紹介します。
※1:各コードとコード読み取り端末のセット
コード系ツール(バーコード/QRコード)
バーコードやQRコードのようにシンボル化されたコードをリーダーで読み取ることで、コードに記録されている情報を識別する技術です。バーコードやQRコードのデータを瞬時に読み取り、また記録するため、入出庫管理や棚卸業務を効率化します。
コード系ツールの特徴【メリット・デメリット】
【メリット】
- 導入コストが低い(※10年前から安価傾向に)
- 既存の流通コードを活用できる
- 小売やクリニック、医療現場で幅広く利用されている
【デメリット】
- 単なるリーダーでは数量分スキャンを繰り返す必要がある
- 事前に在庫ごとにバーコードを作成・貼り付け作業が必要なことも
- 個数入力の間違い、スキャン漏れのリスクがある
適した管理物品は?
既にJANコードやITFコード、医療系のGS1コードを用いて物品が流通・販売されているモノの在庫管理に適しているでしょう。小規模なネットショップや小売店では、導入費用が低いことや、タブレット・スマホアプリで使える仕様のシステムが多いため、手軽な在庫管理の手段として認識されています。
特に商品の搬入から販売まで、日次で物品の回転率が高いスーパーやコンビニエンスストアなどは、POSレジと併用して管理できるため、コードでの管理がおすすめです。但し、飲食業界や医療業界では、使用期限管理には役立つものの、「発注まではコード管理で行き届かない」という声が多いようです。
RFID(Radio Frequency Identification)
RFIDは、電子情報が記憶された「ICタグ」を貼り付け、RFIDリーダーで電子情報を読み込むシステムです。ICタグはデータの書き換えが可能であるため、一点一点の在庫のトレーサビリティに適しています。
また電波が遮断されなければ距離があっても読み込めるため、段ボールの中に入ったままの状態の物品を読み取ることが可能。さらに一括読み込みが可能なため、在庫数が多い時でもスキャンを繰り返したり、数量を入力する必要がありません。
RFIDは交通系電子マネーSuica(スイカ)や電子IDなどで頻繁に使用されている技術です。小売では衣料業界を代表する企業、ユニクロ・GUで導入されています。
RFIDの特徴【メリット・デメリット】
- RFIDリーダーはICタグを電波で読み取るため、一括で複数在庫の処理が可能
- 記録を上書きできるICタグの特性により、詳細な在庫情報の把握が可能
- 全商品1つずつにタグを貼り付ける必要があり、運用面での負担大
- ICタグのコスト・1台10万円〜のRFIDリーダー・ソフトウェア利用料等、他システムよりコスト高
- ICタグを貼り付けできない形状・素材の管理には不向き
適した管理物品は?
情報の書き換えが可能なICタグの特徴を活かし、資産価値の高い商品や、社内で扱うレンタル品、また固定資産税が掛かる物品の管理に向いています。製造業では工程数が多く複雑な製品に利用されているようです。
例えば、「自動車」は工程数が多く、全ての自動車がスムーズに完成することはあり得ません。1台ごと、1工程ごと、どんな仕掛状態であるか、記録・読み取り可能なRFIDは長年、重宝されています。
そのためRFIDシステムを導入するには、自社で扱う商品がそのコストに見合う物品なのか、導入により業務が明確に効率化されるのか、充分に検討を重ねましょう。
AI画像認識カメラ
在庫の識別ツールとしてカメラを用いる場合、主にAIが搭載された画像認識カメラが使われています。AI画像認識カメラなら、認識した画像・映像の撮影や記録だけでなく、学習ロジックによる画像解析が可能です。
カメラから送信された画像データを上位システムで解析し、遠隔から管理対象の在庫の認識・情報の分析が可能です。例えば、在庫が急激に減少した状況を検知すると、アラートを送信し、在庫補充や見廻り、原因追及などを迅速に対応できます。
AI画像認識カメラの特徴【メリット・デメリット】
【メリット】
- 盗難・犯罪行為の抑止力になる
- 遠隔で在庫を管理できる
- 24時間監視ができる
【デメリット】
- 導入コストがかかる
- 設置工事が必要である
- 在庫の置き方に制限がある
- カメラの監視範囲に死角が生じる
適した管理物品は?
管理したい物品が画像認識できるように、整って陳列できるモノ。例えば人の出入りを制限できない実店舗で、犯罪抑止の側面も併せて、ショーケースに陳列されているジュエリーや腕時計・IT機器などの高額商品の管理に適しています。
また危険物・毒劇物の盗難・横流しの犯罪抑止、流出事故等が起きた場合の原因究明に記録された映像が役立つケースも。但し、毒劇物・危険物は遮光性の高い容器に入っていたり、消防法で許された範囲で積載保管をしたりするケースが多いため、カメラでの識別や在庫量把握は難しくなります。
IoT重量計
IoT重量センサを識別ツールとして使用するなら、管理したい物品を載せるだけで在庫の数量把握が可能です。在庫データはクラウドに転送され、クラウド内のソフトウェアに記録・管理されます。
※SmartMat Cloudは在庫の識別ツールとしてIoT重量センサを用いています。
IoT重量センサの特徴【メリット・デメリット】
【メリット】
- リアルタイムで在庫数量の把握が可能
- 目視カウントが難しい液体や粉末・巻物の的確な計測
- センサが自動で計測・記録するのでカウント工数が不要
- 人為的なミスや作業忘れが発生しにくい
【デメリット】
- 1資材に最低限は1台のIoT重量計が必要
- 初期設定として物品の単位重量の登録が必要
適した管理物品は?
数えにくい小さなボルトやナット、長尺物やワイヤー形状のモノは1個あたりもしくは1M(1本)あたりの重さを登録するだけで数量を自動カウントします。また目視では確認できない液体・粉体もIoT重量センサに載せるだけでOK。正確な分量を計測し、上位システムに自動送信します。
さらには心理的にも負担が大きく、使用の度に履歴を残す必要がある毒劇物や少量危険物の管理にも適しています。
識別ツール選定のポイント
識別ツールを選定する際には、以下のポイントを考慮することが重要です。
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1.管理対象物品の特性:物品の形状、材質、サイズ、重量など。
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2.業務プロセス:入出庫の頻度、棚卸の方法、発注のタイミングなど。
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3.導入コストと運用コスト:初期投資とランニングコストのバランス。
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4.システムとの連携性:既存の在庫管理システムやERPとの連携の可否。
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5.現場の作業環境:作業者のスキル、作業スペース、電源やネットワーク環境など。
これらの要素を総合的に評価し、自社の業務に最適な識別ツールを選定することが、在庫管理の効率化と精度向上につながります。まずは各種ツールの特徴や適用事例を理解し、自社の業務プロセスや管理対象物品に最適なツールを導入することが重要です。
IoT重量計を用いた在庫管理システム「スマートマットクラウド」
現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、クラウドにデータを蓄積することで在庫状況をリアルタイムに把握できる「スマートマットクラウド」。専用のIoT重量計「スマートマット」の上に管理したい物品を載せるだけで、設置が完了します。
あとは自動計測されたデータがクラウド上に更新されるため、過剰在庫や欠品を防ぎながら常に適正在庫を保ちやすいのが特徴です。エクセル管理のような手動入力を大幅に削減し、発注タイミングの自動化や消費推移の分析が瞬時に可能となります。
さらに在庫キャッシュと滞留期間を並行して把握できるため、不動在庫の早期発見にも有効です。業務効率化を図りたい企業や、複数拠点をもつ製造業・小売業にとって、クラウド型の在庫管理ソフトとして大きく貢献するでしょう。
さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能。既定の閾値を下回ると自動で発注やアラートを送るため、スムーズな在庫補充が行えます。
在庫圧縮を促進
重量データに基づく消費推移グラフで在庫を可視化。適正な安全在庫の見直しがカンタンにできるため、過剰在庫を減らし在庫回転率の向上を支援します。
置く場所を選びません
スマートマットはサイズ展開が豊富で、ケーブルレス&防塵・防水仕様のため、冷蔵庫・冷凍庫内での管理も可能。狭い倉庫や屋外など、設置場所を選ばずに使用できます。
API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、データを自動で送り合うことで在庫管理や発注に関わる業務の効率化・自動化をさらに高めます。
「スマートマットクラウド」で在庫管理を効率化した成功事例
識別ツールの一つであるIoT重量計「スマートマットクラウド」は、正確な在庫把握を自動化することで、現場の課題を大きく改善します。
ここでは、スマートマットクラウドを導入した企業の在庫管理の実態がどう変わったのかをご紹介します。数ある成功の中から、2社の代表的な事例をピックアップしました。
この記事を書いた人

スマートマットクラウド メディア編集部
スマートマットクラウド メディア編集部です。業務効率化や業務の課題解決などをわかりやすく解説します!
【スマートマットクラウドとは?】
スマートマットの上にモノを置き続け、重さで数を数えるIoTサービスです。
ネジなどの部品、副資材・仕掛品・粉モノや液体の原材料まで、日々の在庫確認や棚卸・発注まで自動化します。