在庫管理術
医療材料の棚卸効率化|現場負担を減らす改善アプローチと手順
医療材料は、処置や手術の現場で切らすことが許されない物品です。その緊張感を抱えながら、「品目が多すぎて半日がかりになる」「日勤中に棚卸をすると患者対応が手薄になる」という声は、病院・クリニックを問わず共通して聞かれます。
棚卸の負担を減らすには、「もっと丁寧に数えれば正確になる」という発想ではなく、作業の設計そのものを見直すことが出発点です。本記事では、医療材料の棚卸がなぜ大変になるのかを整理したうえで、現状の体制に合わせて段階的に改善するための手順を解説します。
\資料を無料ダウンロード!/ スマートマットクラウド医療業向けサービス説明資料
医療材料の棚卸しで、医療スタッフが院内を歩き回っている・残業している・患者対応が薄くなっているなどの課題はありませんか?棚卸しを効率化し、スタッフが本業に集中しやすい環境をつくるIoT在庫管理システムの機能と導入事例をまとめた資料です。
今すぐ無料ダウンロード医療材料の棚卸とは──目的と、なぜ負担が大きいのか
👉 このパートをまとめると!
医療材料の棚卸は単なる数量確認ではなく、在庫精度・コスト・安全確保の3つを同時に担っています。医療材料はその性格上、品目数・期限管理・部署分散という三重の複雑さが重なり、一般的な在庫管理よりも工数が大きくなりやすい構造です。
棚卸の3つの目的(在庫精度・コスト管理・安全確保)
棚卸とは、実際に棚や保管場所にある物品を数え、帳簿上の在庫記録と照合する作業です。医療現場における棚卸には、主に次の3つの目的があります。
① 在庫精度の維持
日常の入出庫が積み重なる中で、帳簿と実態の間にはズレが生じやすくなります。棚卸によって差異を検出し、記録を実態に合わせることで、「あるはずなのに手元にない」という事態を防ぎます。
② コストの可視化と最適化
期末の棚卸は財務・会計上の資産評価にも使われます。過剰在庫や使用期限切れによる廃棄ロスを数値として把握することで、定数や発注量の見直しにつなげられます。
③ 医療安全の確保
医療材料には使用期限・滅菌期限があるものが多く、期限切れ品の混入は医療安全上のリスクに直結します。棚卸は「期限管理の確認機会」としても機能します。
医療材料ならではの難しさ
一般的な棚卸と比べて、医療材料の棚卸が特に大変になりやすい理由が4つあります。
■ 品目数と多様性
消耗品・衛生材料・処置材料・高額医療材料(ステントや骨接合材など)が混在し、品目数が数百〜数千規模になることも珍しくありません。品目によって管理単位(パック・個)もバラバラなため、数え方のルールを統一するにもひと手間かかります。
■ 部署ごとの分散管理
病棟・外来・手術室・処置室がそれぞれ在庫を保有しており、全体を一度に集計しようとすると関係者の調整だけで時間を消費します。また担当者が部署ごとに異なり、記録精度にもばらつきが出やすい構造です。
■ 診療継続とのジレンマ
棚卸作業中も診療は止められません。業務の合間を縫って対応するか、業務終了後に残業として行うか、どちらにしても現場への負担が大きくなります。
■ 使用期限管理の加わる複雑さ
数量を数えるだけでなく、ロット・期限の確認が必要な品目も多く、単純な数量棚卸より作業時間が長くなります。
▶ 医療材料の在庫管理に関して:「医療材料の在庫管理|課題と解決策の総合ガイド」
棚卸でよく起きる問題と、その根本原因
👉 このパートをまとめると!
「棚卸が大変」よりも問題なのは、棚卸をやっても改善サイクルに入らないこと。「定数と実態のズレを放置」「データが次の発注に活用できない」という2つのパターンが根本にある施設では、効率化ツールを導入しても効果が出にくくなります。
定数と実態がズレたまま放置されるスパイラル
定数管理とは、各場所に置いておく在庫の基準量(定数)を設定し、その水準を維持するように補充する仕組みです。しかし、この定数が実際の消費量と合っていないケースが多くの現場で起きています。
たとえば、使用頻度が上がった処置材料の定数を更新しないままにすると、棚卸のたびに「定数5に対して実在庫2」という差異が繰り返し記録されます。差異が出るたびに記録と補充の手間が発生しますが、定数そのものを見直すフローがないと、この状態が何ヶ月も続きます。
「棚卸が大変」の相当部分は、定数と実態のズレを毎回補正することに費やされています。棚卸の効率化を考えるなら、定数の定期的な見直しをセットで設計することが前提になります。
棚卸データが次の発注・補充に活かされない
棚卸を終えた後、そのデータはどこへ行きますか。集計した結果が担当者のExcelファイルに保存されているだけで、次の発注量や補充のタイミングに反映されていないケースは珍しくありません。
棚卸データが発注・補充の判断に使われないと、「棚卸は棚卸、発注は発注」として別々に動いてしまいます。棚卸で過剰在庫が判明しても発注が減らず、欠品が記録されても定数が上がらない。このような状態では、棚卸の時間を費やしても在庫の最適化には近づきません。
「棚卸を効率化する」とは、作業時間を短くするだけでなく、棚卸結果を在庫管理のサイクルにつなげる仕組みを作ることが本来の目的です。
💬 専門家の視点
棚卸の結果が発注や補充の判断に使われていない病院は、意外と多いです。現場が忙しいほど『棚卸は棚卸、発注は発注』と切り離されてしまう。棚卸で判明した過不足を、次の補充サイクルに反映する仕組みがないと、どれだけ棚卸の精度を上げても在庫の問題は繰り返します。
——エスマット 医療メディア編集部
効率化の3ステップ──現状に合わせた段階的アプローチ
👉 このパートをまとめると!
効率化には「まず仕組みを整える→次にスキャンで省力化する→最終的に自動化する」という段階があります。一足飛びにシステム導入を目指すより、現状の体制に合ったステップから始める方が定着しやすく、投資対効果も見えやすくなります。
改善に入る前に確認しておきたいのが、現在の棚卸方式が自施設の規模に合っているかという点です。品目数が多い大規模病院にもかかわらず「月次全品目棚卸」を続けている場合は、まず棚卸方式の見直し(循環棚卸への移行など)が効率化の第一歩です。
▶ 関連記事:
ステップ1|棚卸フォーマットの標準化
最初に取り組むべきは、「誰が担当しても同じように記録できる」フォーマットの整備です。担当者によって記録の粒度や抜け漏れが変わる状態では、集計後の精度が安定しません。
整備のポイントは以下の3つ。
- 記録項目の統一: 品目名・品番・管理単位(個/箱)・数量・使用期限の欄を固定する。担当者が「どこに何を書くか」を判断しなくて済む設計にする
- 場所ごとのリスト化: 棚・引き出し・カート単位でリストを作り、確認漏れを構造的に防ぐ。「次はどこを数えるか」を考える時間をなくす
- 差異の記録欄を設ける: 帳簿との差異を記録する欄をフォーマットに含め、棚卸後の差異確認を集計と同時に行えるようにする
費用をかけずに始められるため、まず取り組みやすい改善です。一方で、記録はあくまで手作業のため、記入ミスや集計時の転記ミスのリスクはこの段階では残ります。
ステップ2|バーコード・QRコードの活用
フォーマット標準化が整ったら、次はスキャンによる省力化を検討します。品目ごとにバーコードやQRコードを貼付し、ハンディスキャナやスマートフォンで読み取ることで、品目名・品番の手入力が不要になります。
メリットは主に2つです。品目の入力ミスが減ること、そして品目の検索・照合にかかる時間が短縮されることです。特に品目数が多い施設ほど効果が出やすく、比較的低コストで導入できます。
ただし、棚卸のたびに「実際に棚の前に行ってスキャンする」作業は残るため、工数をゼロにはできません。また、部署間の集計をリアルタイムで確認したい場合は、スキャンしたデータを集約するシステムとの連携が別途必要になります。
ステップ3|IoT重量センサーによる自動化
最も自動化が進んだ形が、IoT重量センサーを活用した仕組みです。棚や保管ボックスの下にセンサーを設置することで、在庫の重量変化から残量をリアルタイムで推定します。担当者が数える作業をしなくても、システム側で在庫数を常時把握できる状態になります。
スマートマットクラウドでは、このIoT重量センサーによるリアルタイム在庫把握を起点に、在庫が基準値を下回った際の自動発注や補充依頼まで一連の流れを自動化できます。棚卸を「定期的にやらなければならない作業」から「日常業務に溶け込んだ仕組み」へ転換することが目標です。
システム導入が向かないケース・判断の軸
IoTやシステム導入がすべての施設に適しているわけではありません。以下の観点で費用対効果を判断することを推奨します。
- 品目数が少ない小規模クリニック: 扱う品目が数十品目程度であれば、フォーマット整備とExcel管理で十分なケースが多い。システムのランニングコストと削減できる工数を比較したうえで判断する
- 品目ごとの消費単位が大きく、動きが少ない: 月に数回しか動かない高額医療材料は、個別台帳管理で十分なことが多い。センサーは日常的に消費される消耗品・衛生材料に効果が出やすい
- 現場へのシステム定着に懸念がある: 導入後に現場で使用されなければ投資効果は出ない。段階的な導入と現場への丁寧な支援を行うベンダー選定の重要度が高い
\資料を無料ダウンロード!/ スマートマットクラウド医療業向けサービス説明資料
医療材料の棚卸しで、医療スタッフが院内を歩き回っている・残業している・患者対応が薄くなっているなどの課題はありませんか?棚卸しを効率化し、スタッフが本業に集中しやすい環境をつくるIoT在庫管理システムの機能と導入事例をまとめた資料です。
今すぐ無料ダウンロード棚卸を効率化した先に得られること──定数見直しと発注の自動化
👉 このパートをまとめると!
フォーマットを整理しただけで差異が見えやすくなり、発注の判断が自然と楽になる、というケースも十分あります。棚卸の効率化は、そこからさらに定数管理や補充の仕組みとつなげることで、現場の手間をもう一段減らせます
棚卸結果を定数見直しに活かすサイクル
棚卸で差異が出たとき、「記録して終わり」になっていないでしょうか。差異が繰り返し出る品目は、定数そのものがずれているサインであるケースが大半です。
差異の原因は大きく3つに分けられます。①記録ミス(入出庫の記録漏れ)、②消費量の変化(使用頻度が増減している)、③廃棄ロス(期限切れや破損による廃棄が記録されていない)。このうち②であれば、定数を見直すタイミングです。
見直しのサイクルとして月次の棚卸結果をもとに四半期に一度は、定数の妥当性を確認するという運用が現実的です。全品目を毎月見直すのではなく、差異が大きい品目・消費変動が激しい品目を優先することで、負担を抑えつつ精度を上げられます。
SPD連携・自動発注との接続
さらに一歩進めると、棚卸で把握した在庫の実態をSPD(Supply Processing & Distribution)や自動発注の仕組みと連動させることができます。在庫が設定した基準値を下回った時点で補充依頼や発注が自動で行われるようになれば、担当者が棚を確認して発注書を作成するという手作業がなくなります。
最初からすべてを整える必要はありません。ステップ1の「フォーマット標準化」から始め、棚卸の結果が発注や補充の判断に使われる状態を少しずつ作っていくことが、現実的かつ続けやすいアプローチです。
▶ 関連記事:「物品請求方式|医療材料管理を効率化。煩雑な物品請求書作成…」
💬 専門家の視点
「棚卸の頻度や精度を上げることに注力している病院は多いですが、その結果を定数や棚卸業務全体の見直しに反映するプロセスが抜け落ちているケースは少なくありません。棚卸は『確認する作業』ではなく『改善の起点』として設計することで、はじめてコスト削減と現場負担の軽減が同時に進みます。」
——エスマット 医療メディア編集部
スマートマットクラウドによる医療材料の棚卸・在庫管理

スマートマットクラウドは、IoT重量センサーを活用した在庫管理サービスです。棚や保管ボックスの下にセンサーを置くだけで、在庫の残量をリアルタイムで把握できます。担当者が棚の前に立って数える作業がなくなるため、棚卸にかかる時間と人手を大幅に削減できます。
医療材料の管理に特化した主な機能は以下となります。
- リアルタイム在庫可視化: センサーが重量変化を常時検知し、在庫数をシステム上で自動更新。「今どこに何がどれだけあるか」を足を運ばずに把握できる状態を維持します
- 自動発注・補充依頼: 在庫が設定した基準値を下回ると、システムが自動で発注や補充依頼を行います。発注漏れや欠品リスクを構造的に防ぎます
- 棚卸工数の削減: 在庫数が常時記録されているため、定期棚卸の作業量を大幅に減らせます。月次棚卸の確認作業工数を圧縮します
- 複数拠点・複数部署の一元管理: 病棟・外来・手術室など部署をまたいだ在庫をひとつの画面で管理でき、集計の手間を解消します
▶ 関連記事:発注自動化の仕組み「医療材料の発注を自動化する方法|SPD・IoT…」
\資料を無料ダウンロード!/ スマートマットクラウド医療業向けサービス説明資料
医療材料の棚卸しで、医療スタッフが院内を歩き回っている・残業している・患者対応が薄くなっているなどの課題はありませんか?棚卸しを効率化し、スタッフが本業に集中しやすい環境をつくるIoT在庫管理システムの機能と導入事例をまとめた資料です。
今すぐ無料ダウンロードスマートマットクラウド導入事例|IoT重量計管理で棚卸しは変わったか
棚卸・在庫管理の仕組みを変えることで、現場の負担がどう変わったか。実際の導入事例を2件紹介します。
社会医療法人頌徳会 日野病院
課題:適正在庫が把握できず、欠品の不安から過剰発注が常態化。在庫が院内に点在し、何がどこにあるかわからない状態が続いていた
効果:在庫確認・発注・棚卸の時間削減。過剰在庫の解消と欠品リスクの排除を両立。スタッフが探し回るストレスがなくなり、労働環境が改善。人が辞めにくくなり採用コストの削減にも寄与しました。また「適正在庫数が10個なのに100個ないと不安」と欠品への恐れが過剰発注につながっていましたが、1,500台のスマートマットを段階的に導入し、在庫の見える化と自動発注により適正在庫の維持を実現。探す手間とストレスがなくなったことで、新人育成や働きやすさの改善に貢献しました。
事例をみる →
レナトゥスクリニック
課題:看護師と専任担当者の両方で管理を試みたが人的ミスがなくならず、月1回の在庫総チェックがスタッフ全員の負担になっていた
効果:在庫管理にかかる時間が従来の1/3以下に短縮。雑務が減ったことでスタッフの定着にもよい影響が出ている
冷蔵保管が必要なボトックスの残量確認のために1日3回別フロアまで確認に行くなど、管理の手間が現場に蓄積していました。110台のスマートマットを導入し、冷蔵庫内を含む在庫をリモートで常時把握できる体制へ。「雑務に仕事を中断されるストレスがなくなった」と院長が語るほど、現場の負担感が変わりました。
事例をみる →医療材料の管理に関するよくある質問
Q1. 棚卸を効率化するには、まず何から手をつければいいですか?
A. 最初の一手としては棚卸フォーマットの標準化が有効です。品目名・品番・管理単位・数量・使用期限を記録欄や保管場所のチェックリストを作ることで、担当者依存なく同じ精度で記録できる状態を作ります。ツールやシステムの導入より先に、「誰がやっても同じ手順で進められる仕組み」を整えることが、効率化の土台になります。
Q2. 病院で棚卸をする目的は何ですか?
A. ① 在庫精度の維持(帳簿と実態のズレを検出し、記録を正確な状態に保つ)、② コストの把握と最適化(廃棄ロスを数値で確認し、定数や発注量の見直す)、③ 医療安全の確保(使用期限・滅菌期限切れの品目混入の回避)の3つが主な目的です。単なる数量確認ではなく、安全な医療提供を支えるプロセスとして位置づけられています。
Q3. 消耗品はどこまで棚卸の対象にすればいいですか?
A. 原則として施設内のすべての医療材料・消耗品が対象ですが、品目の単価・期限の有無・消費頻度の3つを軸に管理単位と頻度を分けるのが現実的です。定数管理品は差異確認を中心に、高額材料(インプラント・ステントなど)は1個単位の個別管理、日常的に使い切る低単価品は箱単位など粗く管理することで、工数を抑えながら精度を保てます。
まとめ
医療材料の棚卸が大変になる理由は、品目の多さや部署の分散という構造的な要因にあります。ただし、それ以上に改善を妨げているのは「棚卸をしても定数が変わらない」「データが次の発注に使われない」という運用上のループです。
効率化の手順を整理すると以下のようになります。
- フォーマットの標準化で、誰がやっても同じ精度で記録できる基盤を作る
- バーコード・QRコードの活用で、記録の省力化とミスの削減を図る
- IoT重量センサーの活用で、棚卸作業そのものを日常業務に溶け込ませる
- 棚卸データを定数見直し・自動発注につなげることで、在庫管理のサイクルを回す
どのステップから着手すべきかは施設の規模や体制によって異なりますが、「まず仕組みを整える」ことが共通した出発点です。現状の棚卸がどこで止まっているかを確認し、自施設に合った改善の一歩を踏み出してください。
\資料を無料ダウンロード!/ スマートマットクラウド医療業向けサービス説明資料
在庫確認・発注業務が医療スタッフの負担になっていませんか。IoTで発注を自動化し、残業削減・欠品防止・離職リスク低減を実現。歯科・整形外科・総合病院の導入事例と具体的な効果をまとめた資料です。
今すぐ無料ダウンロード










