在庫管理術
医療材料の定数管理|病院経費削減を進める医療材料の物品管理の方法とは

医療行為の提供に不可欠な医療材料。
病院、クリニックでは、医療材料の購入や管理にかかるコスト削減が課題となってます。ここでは医療材料のコスト削減の仕方、過剰在庫を予防するのに効果的な物品管理の手法「定数管理」について解説。また医療材料管理に最適な在庫管理IoTシステムを紹介します。
医療材料の概要
医療材料とは
医療材料とは、診療行為に不可欠な医薬品・医療機器・器具などを総称したものです。病院・クリニックでは数万点規模の品目を適切に管理し、患者の安全と治療品質を支えています。
医療材料の種類
医薬品医療機器等法(薬機法)では、医療材料はおおむね次の4区分に整理されます。
- 医薬品:注射薬、消毒薬など
- 医薬部外品:手指消毒用アルコール、うがい薬など
- 医療機器:カテーテル、ステント、注射針など
- 医療機器:ガウン、シリンジポンプ用バッグ など
中でも 「特定保険医療材料」 は保険点数が設定されており、手技料や薬剤料とは別建てで請求できます。
そのため病院は「いつ/誰に/いくつ使用したか」を正確に記録しなければなりません。特に消費量の多い手術室・内視鏡室・カテーテル室では、治療の合間に行う記録・在庫確認が大きな負担となっています。
医療材料と衛生材料
医療材料と似ている言葉に、「衛生材料」があります。衛生材料はガーゼ、包帯、マスク、グローブなど、清潔保持を目的としたディスポーザブル品を指します。
衛生材料は清潔であることが求められるため、使い捨てで使用されるものがほとんどです。ディスポーザブル品は一般的に保管量が多くなります。保管スペースに制限がある医療現場では、これら衛生材料を含めた医療材料を「切らさず・余らせず」管理する仕組みづくりが急務となっています。
医療材料のコスト
医療材料コストが病院経営に与える影響
病院の経営改善で課題となるのは以下の2点です。
- 医薬品のコスト
- 医薬品以外の医療材料のコスト
病院の費用構造を見ると、医薬品費は収益の13〜15%、医療材料費は機能別で10〜20% を占めます。一般病院では材料費が2割に迫り、人件費に次ぐ経営インパクトがあります。
そのため医療材料の在庫コントロールは医薬品の次に経営インパクトが大きく、最小必要在庫を設定し維持する「定数管理」は必須の施策になります。
医療材料コスト削減が難しい4つの理由
医療材料のコスト削減は、医薬品よりも難しいという声をよく耳にします。
・責任分散
発注は事務部門、在庫管理は助手や SPD 担当、使用は医師・看護師と分かれており、情報が部署間で共有されにくい側面があります。
・膨大な品目数と早い更新サイクル
数万点ものSKUを抱えるうえ、毎年10〜20%が新製品に切り替わるため、マスタ更新と価格収集の手間が大きくなっています。
・機能と価格のトレードオフ
高機能ほど高価格になりやすく、臨床成績・保険償還・医師の好みなども勘案するため、コストだけで選定しにくいです。
・複雑な院内ガバナンス
医療安全委員会や診療材料委員会、購買部門など意思決定プロセスが多層化し、変更合意に時間がかかります。
医療材料のコスト削減対策
ベンチマーク分析
ベンチマーク分析とは、医療材料ごとに購入単価や購入量を比較する分析です。ベンチマーク分析を行うことで自院で購入している医療材料の価格が市場の中でどのようなポジションにあり、適正かどうか判断できるようになります。他の医療材料のシェア率や価格を知ることで、課題のある医療材料を切り替えを検討することも可能になります。
共同購入の検討
他の病院やクリニックと提携し、医療材料を共同購入をする方法があります。仕入れる量が多く、購入回数をまとめるほど、医療材料のディスカウント率は大きくなります。
適切な物品管理
基本となるのは、適切な医療材料の物品管理です。発注・在庫管理・棚卸の管理を正確におこなうことが院内の医療材料の適正在庫維持に欠かせません。
医療材料の物品管理方法【定数管理】
定数管理の概要
医療材料の物品管理の基本は定数管理です。使用頻度の高い物品ごとに最小必要数をあらかじめ設定し、消費した分だけ補充する管理手法です。
カードやバーコードラベルを物品に取り付け、使用時に外して一括回収 → 集計 → 発注 という運用が一般的に採用されています。
定数管理の目的
医療材料の定数管理を行う目的は次の3つです。
- 欠品防止
- 期限切れによる廃棄防止
- 過剰在庫防止
定数管理の課題
定数管理は誰でも医療材料の管理が行いやすい仕組みではありますが、次のような課題もあります。
①定数が形骸化しやすい
一度配置する定数を決めてしまうと、その後、数値が見直されることが少ない傾向があります
②定数が多くなりがち
定数を決定する際、品切れを回避するため、必要数より多めに定数を決める傾向があります。
③定期的に在庫確認をする必要がある
バーコードなど読み取りツールを使っても、結果として医療スタッフに物品管理の手間がかかります。
医療材料の物品管理方法【物品請求方式】
物品請求方式の概要
医療材料を管理する方法に物品請求方式があります。
定期的に使用実績を集計し、「使った数=補充量」として物品請求書を提出する方式です。定数管理が前もって決めた最小在庫を守るのに対し、請求方式は使った分だけ補うアプローチといえます。
最小限の手間で在庫切れを回避しつつ、過剰在庫にならない数を発注できる、緊急手技などで想定外に消費が増えた場合も、使用実績に基づく請求で迅速に補充できるため、定数管理を補完する役目を果たすこともあります。
物品請求方式の課題
・在庫カウントの負荷
請求書を作成するたびに保管棚や手術室の在庫を数え直す必要があり、医師・看護師の時間を圧迫します。
・手入力ミスのリスク
数値転記や伝票作成が手作業の場合、集計ミスや二重請求が発生しやすくなります
・情報のタイムラグ
集計から発注までにタイムラグが生じるため、消費スピードが速い材料は欠品リスクが発生します。
いずれの方法でも定期的にいまある在庫を数えて、物品請求書を作成すること自体が医療スタッフにとっては大きな負担になっています。
医療材料の物品管理はスマートマットクラウドで。発注・在庫管理を自動化
在庫管理システム「スマートマットクラウド」は在庫の計測から発注書の送信まで、すべて自動。煩雑な定数管理・物品請求方式の課題を一気に解消します。
重量センサーが 24時間リアルタイムで在庫の残量を監視し、設定しきい値を下回るとクラウドが自動で発注します。消費スピードが読めない物品でも欠品ゼロを実現し、導入はマットを設置してすぐ始められます。
さまざまな自動発注に対応
「スマートマットクラウド」は、メール・FAXに加え、医薬品やディスポーザブル製品の受発注などに広く使われている標準商品コード「メディコード」を使ったAPI連携により、貴院で現在お取引のある主要ディーラーに対し自動で発注を行うことができます。
スマートマットは、サイズ展開豊富
- 倉庫室のラック上
- 診療エリア備え付けの棚の中
- 引き出しの中
貴院のスペースや使用状況、導線に合わせた設置が可能です。
医療材料を一元管理。スマートマットクラウド導入事例
スマートマットクラウドは、現在多くの医療機関に導入いただいています。導入をきっかけに医療材料の一元管理を実現した事例をご紹介します。
スマートマットクラウドで、在庫管理を“人”から“システム”へ。
医療材料コストとスタッフ負荷を同時に削減し、選ばれる病院づくりを始めましょう。
(参照)
厚生労働省「医療施設静態・動態調査(令和6年版)」
厚生労働省「診療報酬点数表・特定保険医療材料一覧(2024年度)」
日本医科器械学会雑誌 Vol.35「医療材料コスト構造と削減策の最新動向」
経済産業省ヘルスケア産業課「医療分野におけるIoT活用事例集 2024」
全国SPD研究会「SPD導入による医療材料最適化事例報告書(第10版)」
この記事を書いた人

スマートマットクラウド 医療メディア編集部
医師をはじめとする医療従事者、医療業界の課題に精通している日本最大級の医療情報専門サイト 「m3.com」出身のライターが、医療業界の課題から業務効率化・DX推進までわかりやすく解説します!
【スマートマットクラウドとは?】
スマートマットの上にモノを置き続け、重さで数を数えるIoTサービスです。
ネジなどの部品、副資材・仕掛品・粉モノや液体の原材料まで、日々の在庫確認や棚卸・発注まで自動化します。