在庫管理術
DPC制度とは【いつから・対象病院や患者・出来高算定との違い・メリットとデメリット】

DPC制度とは【わかりやすく・簡単に】
DPC制度(DPC/PDPS = Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)は、患者の傷病名・手術・検査などを組み合わせて 3,248 種類 に分類(診断群分類)し、その分類ごとに1日当たりの定額点数 で入院医療費を計算する仕組みです。点数は 「在院日数3区分 × 医療機関別係数」 で算定されるため、『包括医療費支払い制度』とも呼ばれます。
2003年4月に82の特定機能病院で試行導入され、その後も対象が拡大。2024年6月1日時点で 1,786 病院・約48万床に達し、急性期一般入院料1〜6・特定機能病院入院基本料の届出病床の約85%を占めています。
●DPC制度のポイント
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診断群分類数:3,248分類(うち包括支払い2,348分類)に基づき定額で支払う
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在院日数は3段階(初日〜短期/標準/長期)に分け、段階が進むほど点数が減少
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医療機関別係数(機能・実績・重症度等を評価)が掛け合わされるため、同じ分類でも病院ごとに点数が異なる
DPC制度導入の狙いは、診療の標準化と医療資源の効率的な配分にあります
DPC制度と従来の出来高算定の違い
従来方式である出来高払い方式は、検査・投薬・処置など実際に行った医療行為の種類と回数に応じ、その都度点数を積み上げて医療費を計算します。つまり、行為が増えるほど請求額も増える仕組みで、医療機関にとっては診療内容を細かく請求できる一方、原価管理が煩雑になりやすく、患者には行為が多いほど自己負担が膨らむという特徴があります。
一方、DPC/PDPS方式は前述の診断群と在院日数区分を軸にした1日あたり定額が基本で、病院ごとの係数や専門技術料だけを追加します。診療内容が標準化されコスト管理がしやすく、患者も短期入院であれば費用を抑えやすいという点が出来高払いとの最大の違いです。
DPC制度の歴史【いつから】
DPC/PDPS が正式に導入されたのは 2003年4月で、まず特定機能病院82施設で運用が始まり、その後全国へ広がりました。
導入前の1998年11月〜2004年3月には国立病院など10施設で「1入院当たり包括払い方式」を試行し、次の課題が判明しています。
- 同じ疾患でも患者ごとに 在院日数のばらつきが大きい
- 1入院まるごと定額より、1日当たり定額のほうが実コストとの差が小さい
これらの検証結果を踏まえ、在院日数3区分×医療機関別係数で1日定額を算定する現在のDPC制度が採用されました。
DPC制度の対象病院になるための要件
DPC/PDPS を適用する病院は、次の6つすべてを満たすことが求められます。
- 急性期一般入院基本料(7対1・10対1)または特定機能病院入院基本料を届出
- A207 診療録管理体制加算※1を届出
- 退院患者調査(毎年実施)に継続参加し、治療内容・病態データを提出
- 特別調査(中医協が必要に応じて実施)へ適切に協力
- 調査期間 1 か月あたりのデータ病床比が 0.875 以上
- コーディング委員会※2を年4回以上開催し、記録精度を担保
※1 A207診療録管理体制加算:診療情報を適切に管理・提供する体制を評価する加算。入院初日のみ算定可。
※2コーディング:カルテに記載されている病名などを、世界保健機構(WHO)の定める分類(ICD=国際疾病分類)に従い、コード(符号)化すること。
DPC算定病床
DPC算定病床とは、DPC制度の対象となる以下の一般病棟です。DPC算定病床を3グループに分け整理しました。
一般急性期病棟(標準治療領域)
- 一般病棟入院基本料
- 専門病院入院基本料
- 特定機能病院入院基本料
高度急性期ユニット(集中治療・救急領域)
- ICU:特定集中治療室管理料
- HCU:ハイケアユニット入院医療管理料
- SCU:脳卒中ケアユニット入院医療管理料
- 救命救急入院料
周産期・小児・感染症ユニット(特殊ケア領域)
- 小児/新生児特定集中治療室管理料
- 総合周産期特定集中治療室管理料
- 新生児治療回復室入院医療管理料
- 小児入院医療管理料
- 一類感染症患者入院医療管理料
出来高になるケース
ただし、DPC算定病床の対象とならない以下のケースは出来高算定となります。
- 24時間以内に死亡:医療資源投入が病院ごとに大きく異なるため
- 生後日以内の新生児死亡:周産期救命の特殊性を考慮
- 評価療養・患者申出療養:保険外併用療養の費用を切り分ける必要
- 臓器移植関連の一部:移植片管理コストが症例で大きく変動
- 診断群指定の高額薬剤投与:薬剤実費を出来高で精算
DPC制度のメリット【患者側・病院側】
DPC制度には患者側・病院側双方にとって、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
患者側
- 費用が予測しやすい
- 診療の標準化と透明性
- 質の底上げ
DPC制度は1日定額制を採用しているため、治療の途中で投薬や検査が増えても請求額が急激に跳ね上がりにくいです。ただし、重症度が高く入院が長期化した場合は、一定日数を超えた時点で出来高計算へ切り替わり、費用が上がるケースもあります。
さらに、診断群分類ごとに治療プロトコルと点数があらかじめ定められていることで診療の標準化と透明性が確保され、病院間での質のばらつきが小さくなります。定額の範囲内で最適な治療を提供しようとするインセンティブも働くため、過剰治療や過少治療が起こりにくく、医療の質全体が底上げされる点も、患者側にとって大きなメリットです。
病院側
- 業務効率の向上
- 在院日数短縮=収益確保
- データ活用による質改善
DPC制度を導入することで、まず業務効率が向上します。治療パスが定型化されるため、検査や薬剤の手配、看護師の配置をあらかじめ計画しやすくなり、院内オペレーションをスムーズに整備できます。
また、DPCでは在院日数が長くなるほど日当点数が逓減する仕組みのため、スムーズな退院促進が収益改善につながります。適切なタイミングでの退院支援を徹底することで在院日数を短縮し、病床回転率を高めながら採算性を確保できます。
さらに、病院にはDPCデータの提出義務があるため、蓄積した診療データを活用して自院のパフォーマンスをベンチマークしやすいという利点もあります。これにより、診療内容やコスト構造を客観的に分析し、医療の質を継続的に改善しやすくなります。
DPC制度は病院側にデメリットも?
DPC制度が導入されると、各病院は診療データを横並びで比較できるようになり、自院の強みを客観的に示すことができます。しかし同時に、他院より劣る領域や改善すべき課題も鮮明になる点は見逃せません。
効率化の成果として平均在院日数は短縮しますが、メリットの裏側で次のような問題が生じやすくなります。
早期退院による療養不足の懸念
入院期間が短くなる分、患者が十分に療養できず再入院リスクが高まるケースがあります。
地方病院での病床稼働率低下と病棟閉鎖
患者数が限られる地域では、在院日数の短縮がそのまま稼働率の低下につながり、病棟閉鎖を余儀なくされる事例も見られます。
とりわけ地域医療を担う中小規模病院では、DPC制度が経営面のデメリットを生む可能性があることを踏まえなければなりません。
そこで重要になるのが、医療材料費や薬剤費といった変動コストを抑制し、収益を確保する取り組みです。DPC制度下では、コスト管理の巧拙が病院の経営成績に直結するといえます。
スマートマットクラウドで発注・在庫管理を自動化
DPC制度では医療材料費や薬剤費のコントロールが収益を左右します。しかし、現場では
- 日々の残量確認が人手頼みでムダが多い
- 発注点の設定が担当者の勘に依存し、過剰在庫や欠品が発生
- 棚卸・発注書作成が煩雑で、看護師の残業要因になりがち
といった課題が山積しています。こうした課題を一掃するのが、重量センサー IoTを活用した在庫管理システム「スマートマットクラウド」です。
スマートマットクラウドが選ばれる理由
載せるだけで残量を自動計測
計測データはクラウドへ送信され、病棟・中央材料室・本部のどこからでもリアルタイムに確認できます。
発注点到達で自動発注
メール/FAX/メディコード連携に対応し、購買担当者の工数を削減します。
豊富なサイズ展開で設置自由
棚や引き出しに置くだけ。手術室・病棟・SPD など多拠点展開でも工事不要で導入できます。
(参考)
厚生労働省 医政局「DPC/PDPS 制度の概要」
厚生労働省 中央社会保険医療協議会(中医協)総会 資料「令和6年度診療報酬改定の概要」第 580 回総会 資料1
厚生労働省 医療課「DPC/PDPS 対象病院数・病床数の推移(〜令和6年6月1日版)」厚生労働省 医療課「診断群分類(DPC)数の推移および令和6年度改定内容」
厚生労働省「退院患者調査 実施要綱・結果概要(令和5年度)」
厚生労働省「特別調査(DPC データ補完調査) 実施要領・結果概要」
厚生労働省 保険局医療課 通知「A207 診療録管理体制加算の算定要件(最新 Q&A 含む)」
厚生労働省 保険局医療課 通知「医療資源投入の多い傷病名の取り扱いについて」