在庫管理術
医療用医薬品バーコード GS1とは【法改正と表示義務化、目的とメリット、医療医薬品管理を効率化するIoT】

GS1標準バーコードは、医薬品の安全性と流通効率を高める国際規格です。
日本では厚生労働省通知(平成28年〈2016〉8月)を受け、2021年4月メーカー出荷分から全医療用医薬品への新バーコード表示が原則義務化されました。本稿では GS1データバーと GS1-128 の違い、制度改正の背景、病院在庫管理における導入メリットを解説します。
GS1とは何か?
GS1(ジーエスワン)とは、商品識別コード(GTIN)やバーコード、EDIメッセージなどを標準化し、流通の効率化と透明性を高める国際非営利組織です。
本部はベルギーのブリュッセルにあり、2025年現在で116以上の国・地域が加盟しています。日本における窓口は「一般財団法人 流通システム開発センター(GS1 Japan)」です。
GS1標準は一般流通だけでなく医療分野でも広く採用されており、医療用医薬品や医療機器にGS1バーコードを付与することで、
- 偽造品の排除
- サプライチェーン全体のトレーサビリティ向上
- 物流・在庫管理の効率化
といったグローバル課題の解決に寄与しています。
GS1標準バーコードとは?
医療用医薬品や医療機器に貼付される「GS1 標準バーコード」(GS1 DataBar/GS1-128など)は、製品識別コード(GTIN)に加え、ロット番号や有効期限などの重要情報を同時に読み取れる国際共通の識別子です。
日本は厚生労働省の指針により2016年通知、2021年4月メーカー出荷分から全面義務化というスケジュールで導入を加速し、世界でも早期にGS1標準化を実現した国の一つといえます。
医薬品バーコードの法改正と表示義務化
法改正の概要
厚生労働省が2016年8月発表した「医薬品の新バーコード表示義務化」により、すべての医療用医薬品は 2021年4月からGS1 標準バーコードでの表示が必須になりました。
調剤包装と販売包装にはGS1データバー、輸送用の元梱包装にはGS1-128 を使用し、GTINに加えて有効期限・ロット番号・数量を一括表示しています。
コードの使い分けと必須情報
包装単位 | 採用コード | 必須項目 | 任意項目 | 完全義務化時期* |
---|---|---|---|---|
調剤包装 (PTPシート・バイアル等) |
GS1データバー | GTIN | 有効期限・ ロット番号 |
2016年通知時点で即日 |
販売包装 (調剤包装を収めた箱) |
GS1データバー | GTIN | 有効期限・ ロット番号 |
2021/4/1 出荷分から完全必須 |
元梱包装 (輸送用ダンボール等) |
GS1-128 | GTIN・ 有効期限・ ロット番号・ 数量 |
― | 2021/4/1 出荷分から完全必須 |
注:販売包装・元梱包装の「*」項目は 2021 年 4 月以降に出荷される製品で必須化
対象となる医薬品カテゴリー
いずれのカテゴリーでも 調剤包装は最低GTINを必須とし、カテゴリー・包装単位に応じて有効期限やロット番号が追加されます。
- 特定生物由来製品
- 生物由来製品
- 注射薬
- 内用薬
- 外用薬
医療用医薬品バーコード GS1とGS1-128の分類と種類
医療用医薬品に表示する、GS1バーコードは次の5種類があります。
シンボル種別 | 表示できる情報 | 主な用途 | 備考 |
---|---|---|---|
GS1データバー限定型 | 商品コード(GTIN)のみ | 調剤包装・販売包装 | 印字面積に余裕がある場合の基本形 |
GS1データバー二層型 | 同上 | 調剤包装・販売包装 | 容器が小さく、横幅を確保しにくい場合に採用 |
GS1データバー限定型 合成シンボル | GTIN + 有効期限 + 製造番号 |
調剤包装・販売包装 | 1次元コードに 2 次元コンポーネントを重ねて追加情報を保持 |
GS1データバー二層型 合成シンボル | 同上 | 調剤包装・販売包装 | 横幅を抑えつつ追加情報を保持したいときに使用 |
GS1-128 | GTIN + 有効期限 + 製造番号 + 数量 |
元梱包装(輸送箱) | 大容量データを扱える 1 次元シンボル。物流現場の読み取りに最適 |
包装単位ごとの採用ルール
「二層型(Stacked)」は印字スペースが限られる小型容器に使われる設計で、情報量は限定型と同じです。合成シンボルは1次元バーコードの上に2次元コードを載せる形式で、追加データを省スペースで格納できます。
調剤包装単位(最小包装)/販売包装単位
商品コードだけで良い場合 ▶ GS1データバー限定型/二層型
有効期限やロット番号も必要 ▶ 合成シンボル(限定型・二層型)
元梱包装単位(輸送箱)
商品コード・有効期限・ロット番号・数量をまとめて表す ▶ GS1-128
包装形態と必要な情報量に合わせて最適なGS1シンボルを選択することで、院内在庫管理から物流トレーサビリティまで一貫したコード運用が可能になります。
医療用バーコードリーダーの選定ポイント
包装単位ごとに「GS1合成対応 2Dイメージャ」と「GS1-128対応リーダー」を揃えることで、院内から物流現場までバーコード情報を漏れなく取得できます。
●調剤包装・販売包装(4種のバーコード)
- GS1データバー合成シンボルは、1次元コードの上に2次元コードを重ねた複合構造
- CCD やレーザースキャナ(1D専用)では線コード部分(GTIN)しか読めず、有効期限やロット番号は取得できない
●元梱包装の(GS1-128)
- 大容量データを扱う物流向け1次元シンボル
- 読取にはGS1-128対応スキャナ(リニアイメージャ、レーザースキャナ、または対応 2D イメージャ)が必須
医療用医薬品バーコード GS1の目的とメリット
GS1 標準バーコードを医薬品・医療機器に付与し、専用リーダーで読み取ることで、次のような効果が期待できます。
- 誤投与・取り間違えの防止
患者IDと投薬情報をバーコードで照合し、ヒューマンエラーを大幅に低減 - 医療事故リスクの低減
投薬履歴を自動記録し、投与量・投与タイミングの管理をシステム化 - トレーサビリティの強化※
個装単位で GTIN + ロット番号 + 有効期限を追跡できるため、偽造薬排除やリコール時の迅速な回収が可能 - 医療従事者の業務負荷軽減
手作業だった入力・確認作業をスキャンで完結。投薬確認や在庫管理にかかる時間を短縮 - 在庫適正化とコスト削減
バーコード読取りにより過剰在庫や期限切れ医療機器を可視化し、廃棄ロスを削減 - サプライチェーン全体の効率化※
調達・製造・物流・院内消費までを同じコード体系で一元管理し、情報の精度向上とリードタイム短縮を実現
※トレーサビリティ:その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか、を明らかにすること
※サプライチェーン:原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売、消費までの全体の一連の流れ。
バーコード読み取り不要。スマートマットクラウドで在庫管理を自動化
重量IoT在庫管理システム「スマートマットクラウド」なら、消耗品から医薬品まで、置くだけで見える化・自動発注・在庫最適化を実現。人的ミスと発注業務の負担を同時に削減し、スタッフは本来業務に専念できます。
スマートマットの上に管理したいモノを載せると設置が完了。あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理し、適切なタイミングで自動発注してくれます。
さまざまな自動発注に対応
「スマートマットクラウド」は、メール・FAXに加え、医薬品やディスポーザブル製品の受発注などに広く使われている標準商品コード「メディコード」を使ったAPI連携により、貴院で現在お取引のある主要ディーラーに対し自動で発注を行うことができます。
スマートマットのサイズは、A6サイズ〜A3サイズまで
- 倉庫室のラック上
- 診療エリア備え付けの棚の中
- 引き出しの中
貴院のスペースや使用状況、導線に合わせた設置が可能です。
(参照)
厚生労働省 医政経発0824第4号・薬生発0824第1号「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要項の改正について」(2016-08-30)
厚生労働省 医薬・生活衛生局「医療用医薬品バーコード表示 フォローアップ資料」(2020-04)
GS1 Global Office “GS1 Member Organisations – Facts & Figures”(2025-02 更新)
GS1 Japan(一般財団法人 流通システム開発センター)「医療業界向け GS1 標準導入状況と運用ガイドライン」(2024 版)
GS1 “General Specifications Ver 23.1”(2024-01)
日本産業規格(JIS)JIS X 0509:2021 バーコードシンボル体系―GS1データバー
日本産業規格(JIS)JIS X 0504:2021 バーコードシンボル体系―GS1-128
世界保健機関(WHO)“Substandard and Falsified Medical Products – Fact Sheet”(2023-06)
この記事を書いた人

スマートマットクラウド 医療メディア編集部
医師をはじめとする医療従事者、医療業界の課題に精通している日本最大級の医療情報専門サイト 「m3.com」出身のライターが、医療業界の課題から業務効率化・DX推進までわかりやすく解説します!
【スマートマットクラウドとは?】
スマートマットの上にモノを置き続け、重さで数を数えるIoTサービスです。
ネジなどの部品、副資材・仕掛品・粉モノや液体の原材料まで、日々の在庫確認や棚卸・発注まで自動化します。