在庫管理術
在庫金額とは?計算方法・削減のコツ・リアルタイム管理まで製造業向けに徹底解説
「在庫金額が膨らんでいるのに、原因が特定できない」
棚卸のたびに帳簿と実在庫がずれ、月次決算に追われる現場は少なくありません。特に製造業・医療・化学業界では、品目数の多さと動きの速さから、在庫金額の把握が慢性的な課題になっています。
本記事では、在庫金額の定義・計算方法から、金額が膨らむ根本原因、製造業での削減事例まで、実務に直結する情報を体系的にまとめました。
在庫金額を経営判断と在庫削減施策に活かしたいという方にこそ、役立つ内容です。
この記事でわかること
- 在庫金額の定義と、キャッシュフローや経営に与える影響
- 平均在庫金額・在庫回転率・在庫金利の計算方法と活用法
- 在庫金額が膨らむ根本原因と、製造業での具体的な削減アプローチ
在庫金額とは何か?基本と経営への影響
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在庫金額とは、企業が保有する原材料・仕掛品・製品など棚卸資産を金額換算した経営指標です。金額が増えるほどキャッシュが在庫に固定され、資金繰りを圧迫しやすくなります。保有コストや滞留リスクも伴うため、可視化と適正化が重要です。
在庫金額の定義と棚卸資産との違い
在庫金額とは、ある時点で企業が保有する在庫(棚卸資産)の合計を金額で表した指標です。貸借対照表(BS)上では棚卸資産として計上され、原材料・仕掛品・半製品・製品・貯蔵品などが含まれます。
在庫数量と混同されやすいですが、在庫金額は数量×単価で算出され、品目ごとの価値を経営レベルで比較できる点が特徴です。製造業では部品点数が多いため、数量だけでなく金額で把握することで、優先的に管理すべき品目が見えやすくなります。
なお、在庫金額は現場管理や経営判断で広く使われる表現である一方、決算や税務で用いる在庫評価額は会計上の評価方法に基づいて算定されます。
▶︎会計上の考え方を知りたい方は、在庫評価方法の記事もあわせてご覧ください。
在庫金額がキャッシュフローを圧迫する仕組み
在庫は会計上は資産ですが、現金化されるまでの間は資金が眠った状態になります。在庫金額が膨らむと、以下のような連鎖が起こります。
- 仕入代金の支払いにより、現金が在庫へ変わる
- 倉庫費・人件費・劣化リスクなどの保有コストが発生する
- 需要と在庫のミスマッチにより欠品や廃棄が起こる
- キャッシュフローが悪化し、投資余力が低下する
在庫金額の計算方法と重要指標3選
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在庫金額管理では、平均在庫金額・在庫回転率・在庫金利の3指標が重要です。在庫回転率が低いほど在庫が滞留しており、キャッシュ効率が悪い状態といえます。在庫金利を使うと、見えにくい保有コストまで数値化できます。
① 平均在庫金額の計算式
平均在庫金額は、在庫回転率など各種KPIの土台になる基本指標です。
平均在庫金額 =(期首在庫金額 + 期末在庫金額)÷ 2
たとえば、期首在庫が800万円、期末在庫が1,200万円なら、平均在庫金額は1,000万円です。月次で追うことで、在庫増減のトレンドが把握しやすくなります。
② 在庫回転率で在庫の健全性を測る
在庫回転率は、一定期間内に在庫が何回入れ替わったかを示す指標です。一般に、金額ベースでは売上原価や出庫金額を用いて算出します。
在庫回転率 = 年間売上原価 ÷ 平均在庫金額たとえば、年間売上原価が7,500万円、平均在庫金額が1,000万円なら、在庫回転率は7.5回転です。
| 在庫回転率 | 状態の診断 |
|---|---|
| 12回転以上 | 在庫効率が高い。ただし欠品リスクに注意が必要 |
| 6〜12回転 | 概ね適正範囲 |
| 6回転未満 | 在庫が滞留気味。過剰在庫の削減を検討 |
| 3回転以下 | 不良在庫・死に筋在庫が蓄積している可能性が高い |
▶︎在庫効率の考え方をあわせて知りたい方は、在庫回転率の記事もご覧ください。
③ 在庫金利で隠れコストを見える化する
在庫を持つこと自体にどれだけコストがかかっているかを把握する指標が在庫金利です。
在庫金利 = 平均在庫金額 × WACC(加重平均資本コスト)
WACC(加重平均資本コスト)とは、企業の資金調達コストを表す指標で、実務では財務部門が借入金利や資本構成などをもとに算出します。
たとえば、平均在庫金額1,000万円、WACC5%なら年間50万円の資本コストが発生します。さらに倉庫賃料・人件費・廃棄ロスを加えると、在庫保有コストはより大きくなります。
在庫金額が膨らむ3つの根本原因
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在庫金額がかさむ最大の原因は、人が数えて記録しないと在庫が見えない運用にあります。さらに発注判断の属人化により、感覚で在庫が積み増されやすくなります。また棚卸差異が積み重なることで、帳簿と実在庫の乖離が拡大します。
原因①:人手による記録頼りの見えない在庫
Excelや紙台帳に手入力で在庫を記録している現場では、誰かが記録しない限り在庫が見えないという構造的な問題があります。記録漏れや入力ミス、タイムラグが積み重なると、帳簿上の在庫金額と実在庫の金額が乖離しやすくなります。
原因②:発注判断の属人化による過剰在庫
「この部品は〇〇さんの経験で管理している」といった状態では、担当者ごとに発注基準がばらつきます。その結果、ラインを停止させないように、多めの発注が積み重なり、在庫金額全体が膨らみやすくなります。
原因③:棚卸差異が積み重なる構造
年数回の定期棚卸だけで在庫を把握している企業では、棚卸と棚卸の間に起きた在庫変動が見えにくくなります。差異が出ても原因追跡ができず、差異処理だけが繰り返されることで、精度改善につながりにくくなります。
在庫金額を削減する5つのアプローチ
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在庫金額削減は、まず適正在庫を設計することから始まります。ABC分析で優先順位をつけると、少ない工数で大きな改善効果を狙えます。最終的には、人の判断頼みから仕組みで自動管理する運用への転換が必要です。
アプローチ①:安全在庫・サイクル在庫で適正在庫を設計する
在庫金額を削減するには、まず「いくら持つべきか」を数値で設計する必要があります。
安全在庫 = 安全係数 × 使用量の標準偏差 × √(発注リードタイム+発注間隔)
適正在庫 = 安全在庫 + サイクル在庫(1日の平均使用量 × 発注リードタイム)
このように基準を明確にすることで、感覚的な発注から脱却しやすくなります。
アプローチ②:ABC分析で削減優先度を決める
在庫金額の大きい順に並べると、上位20%の品目が全体の約80%を占めることが多くあります。まずA品に絞って改善することで、在庫金額全体へのインパクトを出しやすくなります。
| 分類 | 在庫金額シェア | 管理方針 |
|---|---|---|
| A品(上位20%) | 約80% | リアルタイム管理・発注点を厳密設定 |
| B品(中位30%) | 約15% | 定期的なレビューで適正化 |
| C品(下位50%) | 約5% | 定量発注・在庫上限を設ける |
▶︎ABC分析について詳しく知りたい方は、ABC分析の記事もあわせてご覧ください
アプローチ③:発注方式を品目別に最適化する
需要が安定している品目は定量発注、変動が大きい品目は定期発注といったように、品目特性に応じて方式を使い分けることで、過剰発注と欠品の両方を抑えやすくなります。
アプローチ④:リアルタイム可視化で見えない在庫を排除する
在庫金額を削減するうえで効果が大きいのが、在庫をリアルタイムに可視化する仕組みの導入です。リアルタイムで把握できれば、適正在庫との差異をすぐ検知し、発注タイミングも最適化しやすくなります。
バーコード運用では読み取った時点の在庫しか把握できませんが、IoT重量センサーを活用した方式なら、在庫の変動を自動で記録できます。
▶︎具体的な進め方を知りたい方は、在庫の見える化の記事もあわせてご覧ください。
アプローチ⑤:不良在庫を定期的に処分・再活用する
長期間動きのない在庫や使用期限切れの資材は、不良在庫として在庫金額を押し上げます。定期的に回転率を確認し、処分・転用・返品交渉などを進めることで、在庫金額を継続的に圧縮できます。
▶︎リスクや処分方法を詳しく知りたい方は、不良在庫の記事もあわせてご覧ください
在庫金額管理をDXするスマートマットクラウドの仕組み
在庫金額の把握が困難な最大の理由は、現場の入力に依存している点にあります。スマートマットクラウドは、この構造を根本から変えるソリューションです。在庫金額のリアルタイム把握・自動発注・棚卸負担の軽減を同時に実現できます。

置くだけで在庫金額を更新
IoT重量センサーの上に在庫を置くだけで、重量変化から在庫数量と在庫金額を自動計算し、クラウドに反映できます。入力やスキャンが不要なため、記録忘れや入力ミスを大きく減らせます。
拠点や倉庫といった場所ごとの在庫金額を表示・集計できる機能により、特定のエリアに資産が滞留していないか、どこにいくら分の在庫があるかを一目で把握することが可能です 。

生成AIによる在庫最適化でデータを行動に
重量センサーで収集したデータをもとに、生成AIが欠品リスクの兆候を日次で自動検出します。さらに、在庫圧縮の効果が高い品目を優先度順に提案するため、現場は迷うことなく具体的な削減アクションへ移れます。定量的な最適化の成果がレポートされるため、分析や社内報告の工数も大幅に削減可能です。
データ活用を属人化させず、人手不足の現場でも利益を生む管理を仕組みで実現します。
バーコード・RFID管理との根本的な違い
バーコードやRFID管理は、人が読み取りや登録を行うことが前提です。そのため、運用ルールが徹底されないと精度が崩れやすくなります。スマートマットクラウドは、人が何もしなくても在庫金額が自動更新されるため、属人化の温床を排除できるのが特長です。
| 比較項目 | バーコード/RFID管理 | スマートマットクラウド |
|---|---|---|
| 記録のトリガー | 人がスキャン | 重量変化を自動検知 |
| リアルタイム性 | スキャン時のみ | リアルタイム |
| 属人化リスク | 残る | 人の介在不要 |
| 棚卸工数 | 削減効果は限定的 | 大幅削減 |
| 在庫金額の精度 | 記録漏れで乖離のリスク | 実態と一致 |
【事例】在庫金額削減を実現した企業の取り組み
事例①:機械・照明製造業|在庫金額を半年で約300万円(15%)圧縮
株式会社MARUWA SHOMEIでは、661台のスマートマットを導入し、約200品目を対象に在庫金額を半年で約300万円圧縮しました。あわせて在庫管理工数も50〜60%削減し、欠品ゼロの継続にもつなげています。
事例②:化学・製薬|廃棄ロスと欠品リスクを同時解消
協和キリン株式会社では、培地など高価な資材の在庫管理にスマートマットを活用。廃棄ロスと欠品リスクの両方を抑え、研究者が本来業務に集中しやすい環境づくりにつなげています。
事例③:インフラ・設備管理|月30時間の業務削減と在庫の正確把握
東京ガスネットワーク株式会社では、入庫・発注業務を中心に月30時間の工数削減を実現。屋外倉庫での在庫確認作業も減り、在庫金額をより正確に把握しやすくなりました。
在庫金額に関するよくある質問(FAQ)
Q. 在庫金額はどうやって計算しますか?
A. 基本的には、各品目の在庫数量に単価を掛け合わせ、その合計を出して算出します。管理指標としては、平均在庫金額や在庫回転率、在庫金利などもあわせて確認するのが一般的です。
Q. 在庫金額が増えすぎると何が問題ですか?
A. キャッシュが在庫に固定され、資金繰りが悪化しやすくなります。また、倉庫費・人件費・劣化・陳腐化・廃棄ロスなどの保有コストも増加しやすくなります。
Q. 在庫金額を減らすには何から始めればよいですか?
A. まずは平均在庫金額・在庫回転率を把握し、ABC分析で優先度の高い品目から着手するのが基本です。そのうえで、リアルタイム可視化や自動発注など、仕組みで管理する運用へ移行していくのが効果的です。
まとめ:在庫金額の最適化は見える化から
在庫金額の管理は、単なるコスト削減の取り組みではありません。キャッシュフローの改善、欠品リスクの排除、そして経営判断の精度向上という、企業の根幹に関わる重要なテーマです 。
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現状を数値で把握:平均在庫金額・在庫回転率・在庫金利の3指標で、どこに問題があるか明らかにする
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優先度をつける:属人化・棚卸差異という根本原因を洗い出し、ABC分析でA品から着手する
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仕組みで自動管理:IoTツールを活用し、人の介在に依存しない管理の体制を整える
最も重要なのは、在庫金額をリアルタイムで正確に把握できる基盤を作ることです 。実態に即した見える化が進み、分析からアクションまでが自動化されれば、適正在庫の維持はもちろん、経営判断のスピードも飛躍的に高めることが可能になります 。














