在庫管理術
ホテルの在庫管理システムとは?棚卸の時間を接客とリピーターに変える方法
「ホテル 在庫管理システム」と検索すると、客室の空き、つまり客室在庫を扱うPMSの情報も混じって出てきます。
本記事では、アメニティやリネン、食材といった物品の在庫管理についてお伝えします。棚卸や発注に追われている時間を接客やリピーター獲得に振り向けるために、課題の整理からIoTによる解決策までを解説します。
この記事でわかること
- 客室在庫と物品在庫の違いと、自分に必要なのはどちらかの判断基準
- 手入力・バーコード・IoT重量計、3つの管理方式の違いと向き不向き
- 実際の導入事例から見る、棚卸時間をどれだけ接客に振り向けられるか
まず整理:客室在庫と物品在庫、ボトルネックはどちらか?
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「ホテルでの在庫管理がうまくいっていない」と感じるとき、その原因は大きく2つの領域に分かれます。
客室在庫:
販売可能な部屋数やプランのこと。時間が経つと売れなかった分の価値が消えてしまう性質があり、OTAとの空室連携などをPMSやサイトコントローラーが担います。
物品在庫:
アメニティ、リネン、食材、飲料など、日々の運営を支える消耗品・備品のこと。欠品すればサービス品質が下がり、持ちすぎれば廃棄ロスにつながります。
こんな悩みなら → 客室在庫(PMS・サイトコントローラーの領域)
- OTAごとに空室状況がずれてオーバーブッキングが起きる
- 稼働率は悪くないのに、思ったほど売上(RevPAR)が伸びない
- 複数の予約サイトを手作業で更新していて時間がかかる
こんな悩みが強いなら → 物品在庫(本記事の対象)
- 棚卸や発注に毎回時間を取られ、接客に手が回らない
- アメニティや食材の欠品・過剰在庫が繰り返し起きる
- 発注のタイミングが特定のスタッフしか分からない
両方がボトルネックだという施設ももちろんあるでしょう。その場合には、客室在庫はPMS・サイトコントローラーの領域、物品在庫は在庫管理システムの領域とは切り分けつつ、優先順位をつけながら解決していくのがおすすめです。
ここから先は、物品在庫の悩みを抱えている方に向けて、課題の整理から解決策まで解説していきます。
ホテルの物品在庫管理でよくある課題
👉 このパートをまとめると!
人手不足そのものより、発注判断が特定の担当者に閉じていること、そして過剰在庫と欠品という相反するリスクの間で板挟みになっていることが、現場の負担を大きくしている根本的な要因です。

人手不足と属人化
宿泊業界は人手不足が続いており、在庫確認や発注といった定型業務が、残っているスタッフの負担として重くのしかかっています。
さらに厄介なのは、発注のタイミングや量の判断が特定のベテランスタッフの経験に頼っているケースが多いことです。その担当者が休んだり、シフト制で不在だったりすると、現場が回らなくなるというリスクを抱えている施設は少なくありません。
過剰在庫によるロスと欠品による顧客満足度低下
「欠品を出したくない」という思いから在庫を多めに確保する施設は多いのですが、これが裏目に出ることがあります。食材であれば廃棄ロスに直結し、アメニティやリネンであっても過剰在庫は保管スペースを圧迫するため、管理をさらに煩雑にします。
かといって在庫を絞りすぎると、今度は欠品によって顧客対応に支障が出てしまい、結局どちらの方向にも失敗するリスクがついて回ります。
目視・手作業によるカウントの限界
ホテルの物品在庫は、フロアごとのパントリーや冷蔵庫、倉庫など複数の場所に分散していることがほとんどです。スタッフはその都度現場まで足を運んで目視でカウントする必要があり、身体的な負担も小さくありません。
特に冷蔵庫や冷凍庫の中身は、扉を開けて確認するまで在庫状況が分からないため、気づいたときには不足していたということも起こりやすくなります。
💬 専門家の視点
「人手不足が課題」とされる現場の多くは、実際には「発注の判断がひとりに閉じている」ことが本質的な問題です。担当者の勘や経験を否定するのではなく、その判断基準を誰でも見える形にしておくことが、課題解決に至る近道となります。
——エスマット メディア編集部
物品在庫管理の3つの方式とその特徴
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👉 このパートをまとめると!
手入力・バーコード・IoT重量計は、精度と手間のトレードオフが異なります。「作業自体は残るが精度を上げたい」というジレンマを解消できるのが、重量の変化を自動で読み取るIoT重量計型です。
物品在庫を管理する方法は、大きく以下の3つに分けられます。それぞれ精度やコスト、向いている品目が異なるため、自施設の状況と照合して検討しましょう。
| 方式 | 精度 | リアルタイム性 | 導入 コスト |
向いている品目 施設規模 |
|---|---|---|---|---|
| 手入力・Excel | 低〜中(人的ミスが起こりやすい) | 低 | ほぼ無料 | 品目数が少ない小規模施設 |
| バーコード・ハンディ端末 | 中〜高 | 中(都度スキャンが必要) | 中程度 | 品目数が多く個別に管理したいもの |
| IoT重量計 | 高(自動計測) | 高(常時自動更新) | 中〜やや高め | アメニティ・食材・飲料など重量で計測できる消耗品 |
手入力・Excel運用は導入コストがかからない反面、記録の手間や転記ミスが避けられません。バーコードやハンディ端末は精度を上げられますが、貼り付けやスキャンといった作業自体は人の手に残ります。
この記事では、一覧表に挙げたなかでも、自動化の効果が大きいIoT重量計型について詳しく見ていきます。
IoT重量計型で変わること|「重さ」での管理が有効となるのは?
👉 このパートをまとめると!
IoT重量型の在庫管理システムについて解説しています。重量でモノが自動計測され、閾値を下回れば自動発注される仕組みや、規模の異なる2つの導入事例から、棚卸にかかる時間と属人化のリスクが共通して解消されていることがわかります。
仕組み:置くだけで在庫を自動検知・自動発注

IoT重量計型のシステムは、体重計のような形をしたセンサーの上に管理したいモノを置くだけで、重さの変化から在庫数量を自動で計測します。バーコードの貼り付けやスキャンといった作業が一切不要になり、設定した閾値を下回ると自動でメールやFAXによる発注、あるいはアラート通知が届く仕組みです。
冷蔵庫や冷凍庫の中に設置できるタイプもあり、確認のたびに扉を開けてモノを取り出し、数えて戻すという作業自体がなくなります。大型の冷蔵・冷凍庫では、庫内の温度管理や作業時の負担軽減の観点でもメリットがあります。
IoT重量型システム導入効果の実例
棚卸・在庫管理の仕組みを変えることで、現場の負担がどう変わったか。実際の導入事例を2件紹介します。
イシン・ホテルズ・グループ「the b 銀座」
課題:週1〜2回、棚卸・在庫確認に30分〜1時間。シフト制のため担当不在時に欠品・過剰発注・二重発注が発生し、発注量も担当者依存でばらついていた
効果:棚卸・在庫確認の負担が大幅に軽減。適正在庫がデータで可視化され、過剰発注・欠品リスクが低減。現場から改善アイデアが生まれる文化も醸成された
担当者依存による発注のバラつきやシフト制の弊害など在庫管理そのものが属人化していた。倉庫・冷蔵庫にスマートマットを設置し、閾値をもとにした自動発注へ移行。「調達課」の機能をシステムが代替する形で、担当者の不在時でもオペレーションが回る体制になりました。
事例をみる →
新宿ワシントンホテル(藤田観光株式会社)
課題:本館1,281室分のアメニティ在庫を、月1回・2名体制で3日かけて棚卸。発注はホワイトボードに書き留めて月2回まとめて手入力する、アナログかつ属人的な運用だった
効果:スマートマットを設置した対象品目(全体の約25%)の棚卸はCSV確認だけで数分に短縮。閾値通知メールで発注判断がデータ化され、計算ミスや数え間違いの不安も大幅に軽減
以前は在庫検数を全て手作業・手書きで行っており、異常値が出ると原因調査に夜までかかることも。スマートマット導入で在庫管理を自然な形でデジタル化でき、担当者の心理的負担も軽くなったといいます。
事例をみる →規模の小さい都市型チェーンでも、1,000室を超える大規模施設でも、共通して「棚卸にかかる時間」と「属人化」が解消されている点が特徴です。
導入前に確認すべき選び方のポイント
👉 このパートをまとめると!
選ぶ前に確認すべきは「品目の特性」「既存システムとの連携要否」「導入範囲」の3点です。いきなり全館導入するのではなく、負担の大きい場所から絞って試すのが現実的な進め方です。
管理対象品目の特性を確認する
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物品の性質によって、適した管理方式は変わります。IoT重量計は重さの変化から数量を自動で計測する仕組みのため、飲料・食材・アメニティ・リネンなど、重量に比例して数えられる消耗品に向いています。
一方、貸出用の加湿器やアイロン、携帯電話の充電器といった、個体ごとに貸出・返却状況を追跡したい備品や、単価の高いものについては、バーコードやハンディ端末による個別管理のほうが適している場合があります。
なお、個体識別の精度を特に重視するアパレル業界などではRFIDタグが使われることもありますが、タグ単価や読み取り環境の整備にコストがかかりやすく、ホテルの一般的な物品在庫では採用例はまだ限定的です。
既存PMSとの連携要否を確認する
物品在庫のデータを、客室稼働や発注管理と合わせて分析したい場合は、既存のPMSやシステムとAPI連携できるかどうかを事前に確認しておくと安心です。連携が不要であれば、物品在庫管理システム単体での導入でも十分に効果を発揮します。
施設規模に応じた導入範囲を検討する
施設規模や対象品目に応じて、どこから手をつけるかも検討ポイントです。小規模施設であれば、まず数品目・数か所に絞って試験的に導入し、効果を確認しながら範囲を広げていくのが現実的です。
大規模施設やチェーン展開している場合は、負担の大きい倉庫や厨房から着手し、成果を見ながら他のフロアや拠点へ展開していく進め方だと定着しやすいでしょう。
よくある失敗パターン
👉 このパートをまとめると!
失敗の多くは「システムそのもの」ではなく「導入後の運用設計」に原因があります。閾値の見直しや現場の巻き込みまでセットで考えることが定着の鍵です。
- 導入しただけで満足してしまう
システムを入れても、現場の運用フローに落とし込まないと定着しません。閾値の設定や発注ルールの見直しまでセットで行うことが大切です。 - 対象品目とシステムの相性を確認しないまま導入する
重量で計測しにくい品目にIoT重量計を使おうとすると、期待した効果が得られないことがあります。 - 現場スタッフを巻き込まずに選定してしまう
実際に運用するのは現場のスタッフです。使いやすさや設置場所への納得感がないと、せっかく導入しても浸透しません。
💬 専門家の視点
導入を検討する担当者は、「やった方がよいのは分かるが、何から手をつけるべきか分からない」「要件をどう固めればよいのか・・?」「現場と何を話し合うべきか」という段階でつまづくケースが数多く見られます。まずは対象品目を1〜2種類に絞り、現場スタッフに「今、何にどれくらい時間がかかっているか」をヒアリングするところから始めると、要件は自然と見えてきます。
——エスマット メディア編集部
ホテルの在庫管理システムでよくある質問(FAQ)
Q1. 「ホテル 在庫管理システム」と検索すると客室在庫の話も出てきますが、違うのでしょうか?
A. 「在庫管理システム」という名称は、多くの場合アメニティや食材といった物品在庫を指します。客室の空室・料金管理はPMSやサイトコントローラーという別のシステムが担当します。
Q2. ホテル管理システムにはどんな種類がありますか?
A. 大きく分けてPMS(客室・顧客管理)、サイトコントローラー(OTA連携)、物品在庫管理システム(アメニティ・食材等)の3種類があり、それぞれ目的に応じて使い分けます。
Q3. 在庫管理の基本的な考え方はありますか?
A. 一般的な在庫管理では「整理・整頓・可視化・標準化」が基本とされており、ホテルの物品在庫でもこの考え方は共通して当てはまります。
Q4. IoT重量計型は食材やリネンにも使えますか?
A. 重量で数量を把握できる品目(飲料、アメニティ、一部の食材、リネン類)には非常に適しています。ただし個体ごとに管理したい高額備品などには不向きな場合があるため、対象品目に応じて他の方式と組み合わせることも検討してください。













