在庫管理術
フードロス【日本の現状や経済的影響、有効な対策や取り組み事例を紹介】

「フードロス」とは、本来食べられるはずの食品が無駄に捨てられる現象です。国内外で深刻な問題となり、環境や経済、社会に大きな影響を与えています。本記事では、フードロスと食品ロスの違いから現状、原因、対策、さらにはSDGsとの関連性までを詳しく解説します。
フードロスとは?
「フードロス」とは、本来食べられるにも関わらず、さまざまな理由で廃棄される食品のことです。フードロスは、環境・経済・社会の各側面において国内にとどまらず、世界規模で深刻な問題となっています。
特に日本は先進国の中でも食品廃棄量が多く、SDGsの目標12.3(2030年までの食品ロスを半減)達成に向けた取り組みが急務とされています。
フードロスと食品ロスの違い
国際基準では、「食品ロス(Food Loss)」は生産・流通の初期段階(サプライチェーン前半)で発生する損失のことです。一方で、主に小売・消費段階などサプライチェーン後半で発生する廃棄ロスをフードウェイスト(Food Waste)と表します。
日本ではこの区別が曖昧に扱われがちですが、精緻な分析には両社の明確な区分が不可欠です。日本での一般的な「食品ロス」「フードロス」の使われ方は以下のとおり。
用語 | 意味 | 備考 |
---|---|---|
食品ロス (国内用語) |
「本来食べられるのに捨てられてしまう食品」の総称。国際基準のFood Loss + Food Waste の要素を含む | 農林水産省・環境省もこの定義 |
フードロス (国内俗語) |
一般的には「食品ロス」とほぼ同義で扱うが、厳密には Food Waste 寄りの意味で使われることが多い | メディアや市民啓発では広く普及 |
日本におけるフードロスの現状
世界から見た日本の現状
国際基準絵は棄の現状を見てみましょう。FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界の食料廃棄量は年間13億トンで、これは人のために生産された食品の約1/3を廃棄していることになります。
国連の補助機関であるUNEP(国連環境計画)がまとめた初の世界の食品ロスに関するレポート「UNEP Food Waste Index Report 2021」によると、日本は食品廃棄量で世界14位にランクされ先進国の中ではかなり上位に位置しています。
日本国内の最新状況
2023年度の推計値によると、事業系食品ロスと家庭系食品ロスを合わせた日本の食品ロス量は約489万トン。前年度と比べてやや増加傾向にあり、食料の廃棄を2030年までに世界全体で半減させるSDGsの目標達成には減少スピードの加速が必要です。
食品ロスを国民1人当たりに換算すると約106g、おむすび1個分の食品が毎日捨てられている計算となります。
フードロスがもたらす問題点|世界全体への影響
フードロスがもたらす問題は限定的なものではなく、世界全体に影響があります。具体的にフードロスがどのような悪影響を引き起こすか見ていきましょう。
環境負荷の増大
捨てられた食品は処理工場に運ばれ、可燃ゴミとして処分されます。水分を含む食品は、運搬や焼却の際に地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を排出します。また、焼却後の埋立処理による土地資源の浪費にもつながります。
廃棄コスト
食品の廃棄には、運搬、廃棄、管理など多くのコストがかかります。これは企業にとっても家庭にとっても経済的損失です。
社会的矛盾
2024年時点の統計によると、世界全体の栄養不足状態の人口は7.13~7.57億人と報告されています。この数字は、世界人口の約11人に1人に相当します※1。食べられる食品を廃棄している国や地域がある一方で、多くの人が飢餓に苦しんでいるという矛盾が生じています。
※1:「2024年世界の食料安全保障と栄養の現状」(SOFI)を参照
フードロスの区分と主な発生原因
フードロスは、大きく以下の2つに大別されます。
家庭系フードロス
買い物のしすぎで腐らせてしまう、野菜の皮を過剰に剥く、作りすぎて食べきれないことが原因で家庭内で起こるものを、家庭系フードロスと呼びます。
事業系フードロス
食品メーカー、スーパーやコンビニ、ファミリーレストランなどの飲食店、サービス業企業や病院、学校等から出るものを、事業系フードロスといいます。事業系フードロスの主な原因は次のとおりです。
- 在庫管理が不十分で、必要量以上に食品の発注を出している
- 流通の過程(スーパーやコンビニの店頭)で賞味期限切れになってしまう
- 会社が販売できる量以上の食品を製造・調理し、売れ残る
日本のフードロスの半分以上は事業所から排出されたもの。日本国内全体のフードロスを減らすためには企業の努力が不可欠といえるでしょう。
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事業系フードロス削減の事例を見る>>
個人でできるフードロス対策
フードロスの削減は私たち一人ひとりの小さな行動から始まります。日常生活の中で実践できる効果的な対策をご紹介します。
買い物の工夫|冷蔵庫の中身を確認してから
買い物前に冷蔵庫の中身を確認し、必要な分だけ購入することがポイントです。買い物リストを作成したり、冷蔵庫の写真を撮ってから買い物に行くのも効果的です。また、店舗では「てまえどり」を実践し、賞味期限が近い商品から選ぶことで小売店のフードロス削減にも貢献できます。
保存・調理の工夫|適切な保管とムダの最小化
食材の適切な保存方法を知ることで食品の寿命を延ばせます。野菜や果物ごとの最適な保存場所を調べ、冷凍保存も積極的に活用しましょう。調理面では、野菜の皮や茎など普段捨てる部分も料理に活用したり、余った料理を別のメニューにリメイクする技術を身につけると無駄が減ります。
外食時の対策|完食意識
食べきれる量を注文し、残さず食べることを心がけましょう。どうしても食べきれない場合は持ち帰りを活用します。また、「TABETE」などのフードロスアプリを利用して、飲食店の余った料理を割引価格で購入するのも一つの方法です。
社会との連携|フードバンクの活用
フードドライブやフードバンク活動への参加・支援も大切です。家庭で余っている未開封食品を寄付したり、自分のフードロス削減の取り組みをSNSで発信して周囲に広めることも効果的です。
食品ロスを減らす行動は環境保護だけでなく、家計の節約にもつながります。一人ひとりの小さな変化が、持続可能な社会の実現に貢献するのです。
企業・事業所のフードロス対策
企業や事業所にとって、フードロスの削減は社会的責任を果たすとともに、コスト削減にもつながる重要な取り組みです。効果的な対策をいくつかご紹介します。
デジタル期限管理(QRコード・バーコード)
バーコードやQRコードを活用したデジタル管理システムで、賞味期限が近づいた商品に自動アラートが出るようにします。また、業界慣行の「3分の1ルール」の見直しや、年月日表示から年月表示への変更も検討価値があります。これらの取り組みは小売店と製造業者の協力が不可欠です。
死筋の販売方法を工夫
閉店間際や賞味期限が近い商品の計画的な割引販売は効果的です。また、消費者が必要な分だけ購入できるバラ売りや小分け販売の導入も有効です。フードシェアリングアプリと連携し、売れ残り商品を割引価格で提供するシステムも活用しましょう。
社内研修による意識改革
フードロスの環境・社会・経済的影響について全従業員を対象とした研修を実施し、部門横断的かつ多角的な改善提案を促します。また、削減実績の継続的な計測と分析を行い、短期・中期・長期の目標を設定して進捗を評価することが重要です。
フードロス対策は環境負荷の低減だけでなく、企業イメージの向上にもつながる重要な経営課題です。長期的な視点で取り組むことが成功の鍵となります。
在庫管理の最適化|FIFOの徹底など
事業系フードロスの主要因は過剰在庫です。
AIや機械学習を活用した需要予測の精度向上や、IoT技術による在庫のリアルタイム把握が効果的です。特に季節変動や天候、イベント情報を取り入れた予測モデルは精度が高まります。また、FIFO(先入れ先出し)の原則を徹底し、古い商品から使用する仕組みを構築しましょう。
フードロスへの企業の取り組み事例
フードロスを削減するために多くの企業でも取り組みを始めています。その具体例をいくつかご紹介します。
スターバックス コーヒー ジャパン
2021年8月から、店舗での食品の廃棄を極力減らす「フードロス削減」を目指すプログラムをスタート。2024年には「Food Share Program」として全国約1000店舗以上に拡大しました。
ドーナツやケーキ、サンドイッチなどの店舗ごとの当日の在庫状況に応じて、閉店前の割引販売を行っています。消費者の関心も高く、廃棄対象商品の9割以上を販売できた店舗も見受けられます。
オイシックス・ラ・大地株式会社
有機・無添加食品、ミールキットの通信販売を行う会社で、キットを通じて家庭内フードロスの削減に注力しています。2024年より「もったいない食材応援便」の定期販売を本格化し、さらに成果流通の規格外品を活用して、農業ロス削減との両立体制を整えました。
TABETE(タベテ)
TABETE(タベテ)は、まだおいしく安全に食べられるにも関わらず、廃棄される可能性のある食品を“レスキュー”できるサービスです。店舗は販売可能だが売れにくい食品をアプリに出品し、消費者はアプリから近隣店舗の出品商品を検索・購入・テイクアウトすることが可能です。
首都圏を中心に、名古屋・大阪・福岡など全国の主要都市に約2,900店舗以上が参加しています。
SmartMat Cloudで進化するフードロス削減|新機能生成AI
企業がフードロス対策の一環として在庫の最適化があります。スマートマットクラウド(SmartMat Cloud)は、IoT×生成AIを活用し、「在庫を最適化し続ける仕組み」によってフードロス削減を飛躍的に支援します。
フードロスの「原因が不明」という悩みを、SmartMat CloudがAIの力で解き明かし、「常に適正な在庫状態」を維持することで、持続可能な在庫運用を実現します。
従来の在庫管理 | SmartMat Cloud×生成AI |
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ロスが起きてから気付く | 起きる前にアラートで防止 |
手動チェックが必須 | 自動検知+重点箇所だけ対応 |
毎月の棚卸が手間 | 常時モニタリング+差異だけ検証 |
① 課題の兆候を未然に検知
SmartMat Cloudは、生成AIが在庫の消費傾向や変化パターンを継続的に学習・分析し、ロスや滞留につながる"予兆"を自動で検知します。
人の目では捉えにくい在庫の停滞や異常な使用変動をリアルタイムで可視化し、問題が本格化する前にアラートで通知。現場に先回りした対応を可能にし、計画的なフードロス削減を支援します。
② 最適な在庫を維持し続ける
消費傾向や納品サイクル、過去の利用実績をもとに、生成AIが常に最適な在庫量を算出します。季節変動や突発的な需要にも柔軟に対応し、在庫の過不足を未然に防ぐことで、事業所全体で無理や無駄のない在庫バランスを保ち続けられます。
③ 棚卸のズレも分析してロス防止
実棚卸と帳簿在庫(理論在庫)のズレをAIが常時監視し、一定以上の乖離があれば自動的にアラートで通知します。これにより、棚卸ミスや記録の不整合を即座に特定・可視化し、人的ミスの傾向分析や再発防止にもつなげられます。
フードロスを在庫最適化で削減!「SmartMat Cloud」
事業所でのフードロス対策をさらに進化させるために、重量でリアルタイムの在庫を検知する「SmartMat Cloud」をご提案します。最新のIoT技術を採用したこのシステムは、在庫管理の自動化を実現し、効率的な運用と食品ロス削減に大きく貢献します。
主な特徴
リアルタイムで在庫を自動計測:
スマートマット上に置くだけで、在庫の重さを自動的に計測。冷蔵庫や倉庫内の見えにくい場所の在庫も正確にモニタリングできます。
自動発注システム:
在庫の減少や急激な変動を検知すると、事前に設定された基準に基づいて自動的に発注処理を行うため、過剰在庫や欠品のリスクを最小限に抑えます。
簡単設置・導入:
ケーブルレスで様々なサイズのマットが用意され、設置場所を選びません。既存のシステムともCSVやAPI連携が可能で、スムーズな導入と提携取引先との連携が実現。適切な在庫量の維持に貢献します。
導入効果
食品ロスの大幅削減:
過剰在庫の防止により、不要な廃棄物の発生を抑え、フードロス削減に直結します。
コスト削減と効率化:
自動化された在庫管理により、人的ミスや余分な発注を防ぎ、運用コストの削減と業務効率の向上が期待できます。
環境負荷の軽減:
廃棄物削減により、焼却や埋め立てに伴う環境負荷も低減。サステナブルな社会づくりに貢献します。