在庫管理術
物流DX【業界の課題・物流DXのメリットと注意点・事例・必要なデジタル技術】

物流DXの必要性を示す業界課題、メリット・デメリット、最新事例、さらに物流DXを支援するIoTソリューションまでをわかりやすく解説します。
物流DXとは【定義や意味】
製造元が生産した商品や物を消費者へ届ける一連のプロセス「物流」は、日本の産業競争力を高め、豊かな生活や地域活性化を支える社会インフラです。物流には配送・輸送だけでなく、在庫管理・保管、梱包、荷役、流通加工など多岐にわたる業務が含まれます。
しかし近年の物流業界は慢性的な人手不足をはじめ、深刻な課題を抱えています。こうした背景から 物流DX(デジタルトランスフォーメーション)が急務となっています。
国土交通省は物流DXを「機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること」と定義し、次の2つをスローガンに掲げています。
- 既存のオペレーション改善・働き方改革を実現
- 物流システムの規格化などを通じ物流産業のビジネスモデルそのものを革新
サプライチェーン全体を機械化・デジタル化することで、情報やコストを見える化し、作業プロセスを単純化・定常化することが最終目標です。
物流業界が直面している課題と背景
物流業界が直面している主な課題は以下の通りです。
2024年問題
働き方改革関連法により、トラックドライバーの時間外労働に上限規制がかけられ、年間960時間に制限されます。規制に伴い、1人あたりの走行距離が減り、特に長距離輸送で輸送力不足の深刻化が問題となっています。試算では2030年には最大で荷物の約35%が運べなくなる可能性が指摘されています。
労働環境の悪化
厚生労働省の調査によれば、トラックドライバーの労働時間は全業種平均より約2割長く、労働環境の悪化が深刻化しています。加えて、2021年度に脳や心臓の病気で労災が認定された件数は56件に上り、トラックドライバーなど「道路貨物運送業」だけで全体の3割以上を占めている点も大きな問題です。
人手不足
物流業界では、自動車運転職の有効求人倍率が2.46倍、倉庫内での包装職が2.62倍と、全産業平均の1.23倍を大きく上回る水準が続いており、求人に対する応募者の不足が常態化しています。賃金の低さや長時間労働が人材流出を引き起こす悪循環を生んでいます。
*参照:「第2回 持続可能な物流の実現に向けた検討会 トラック運送業界の2024年問題について」
再配達の増加
ECの拡大で宅配便取扱個数は2010年度の約32億個から2024年度には約50.7億個へ急増、再配達率もそれに伴い増え続け、直近1割前後で推移しています。再配達に要する労働力は、ドライバー不足と環境負荷を同時に悪化させています。政府は宅配ボックス設置補助や置き配促進策を打ち出していますが、依然として高止まりしているのが現状です。
燃料費高騰
原油価格の高騰に加え、電気料金や車両コストの上昇が物流業界の収益を大きく圧迫しています。軽油が1円値上がりするだけで年間約167億円もの追加負担が発生するとの試算もあり、その影響は甚大です。
こうしたコスト増を吸収するため、2023年2月以降、国内大手の宅配各社は相次いで運賃の値上げを余儀なくされています。
物流DXのメリット【可能にすること】
ご紹介してきたように深刻な課題を数多く抱えている物流業界ですが、DXを取り入れることで、課題を解決、以下のようなことが可能になります。
手続き作業や管理の効率化
運送状やその収受の電子化、点呼や配車管理のデジタル化による業務効率化。
在庫管理の効率化
物流業界に欠かせない在庫管理。目視や手書きによるアナログな管理にDXを導入することで、数え間違いや発注ミスを防ぎ、正確な在庫管理が可能に。
作業の効率化
梱包、荷姿など人が行なっていた作業をAIやカメラ搭載のロボットなどを導入することで効率化。
ビッグデータの共有・活用
配送データ、取り引きデータ、配送日時や時間、天候のデータ、人気商品のデータなど、物流に関連するさまざまなビッグデータ。
これらを蓄積、分析、共有することで、最適なルートや人材配置などを決めることが可能になります。
このように物流DXは、生産性向上、業務効率化を実現し、人手不足解消、コスト削減など多くの課題解決につながります。
物流DXのデメリット・注意点
物流業界が抱える課題を解消し、メリットの多いDXですが、以下のような点には注意が必要です。
初期費用の負担が大きい
AIシステム、カメラ、ロボットシステムなど、DXに欠かせないデジタル機器やシステムを購入する必要があります。
システムやデジタルの苦手意識
DXは最新の技術を使用するため、中高年やデジタルが苦手という人にとっては利用するハードルが高いと感じてしまうリスクも。
社内でDXに関する講習会を開いたり、DX担当部署を設置するなどの取り組みが必要です。
セキュリティリスク
デジタル化によってセキュリティ事故は年々増加。新たなセキュリティリスクも生まれています。
「情報漏えい」「データ破壊・損失」といったセキュリティ事故を起こさないための対策や社内でのセキュリティリスクの共有なども必要に。
物流DXの事例【国内・海外】
では、実際に物流DXを導入し、成功した国内外の実例をいくつか見ていきましょう。
ヤマト運輸(ヤマトホールディングス株式会社)「YAMATO NEXT100」
宅急便のデジタルトランスフォーメーション(DX)、ECエコシステムの確立、法人向け物流事業の強化に向けた3つの事業構造改革と、グループ経営体制の刷新、データ・ドリブン経営への転換、サステナビリティの取り組みの3つの基盤構造改革からなる経営構造改革プラン。
その中でDXの取り組みとして以下を掲げています。
●データに基づいた経営へ転換する
デジタルトランスフォーメーション(DX)による物流オペレーションの効率化、標準化に加え、データ分析に基づく業務量予測、経営資源の適正配置、プライシングを上位レイヤーで迅速に意思決定するデータ・ドリブン経営へ転換し、第一線がお客さまにしっかりと向き合える「全員経営」を復活する。
●「宅急便」のデジタルトランスフォーメーション(DX)
デジタル化とロボティクスの導入で、「宅急便」を当社の安定的な収益基盤にするとともに、セールスドライバーがお客さまとの接点により多くの時間を費やせる環境を構築し、お客さまとの関係を強化します。
徹底したデータ分析とAIの活用で、需要と業務量予測の精度を向上し、予測に基づく人員配置・配車・配送ルートの改善など、輸配送工程とオペレーション全体の最適化、標準化によって、集配の生産性を向上します。
さらに、従来の仕分けプロセスを革新する独自のソーティング・システムの導入で、ネットワーク全体の仕分け生産性を4割向上させるなど、取扱個数の増減だけに影響されない、安定的な収益構造に改めます。
ダイキン工業 西日本パーツセンター「ハンドリフト牽引型AGV」
物流倉庫の入出庫搬送の時間を短縮し負担を軽減することを目的にハンドリフト牽引型の自動搬送装置(AGV=Automated Guided Vehicle)とは、目的地まで人に代わって荷物を搬送する装置)を導入。
負担が大きかった中物部品の入出庫搬送の負荷が軽減した。最長往復約500mもある搬送作業が自動化され、行先指示も簡単で、現場からは喜びの声があがったと報告。
また導入の結果、生産性が15%向上し、2名相当の省人化という効果も。
佐川グローバルロジスティクス「RFIDと仕分けシステム」
繁閑差の激しい現場運営の効率化に加え、個別の作業工程だけではなく倉庫内の最適化を図るために、RFID+仕分けシステムの2つのソリューションを導入。
新規就労者の早期戦力化や作業スキル修得時間低減を実現。特に、修得時間は約7割削減。
作業生産性の大幅な向上に加え、作業品質も向上。仕分けミスは、ほぼゼロに。
ドミノピザ「ドローン・自動運転車」
「Domino's Pizza」ブランドの宅配ピザチェーンを展開するDomino's Pizza Enterprisesは、ドローンを活用し、ピザを配達するサービスを実現。
今後の飛行から収集した情報を利用して、オーストラリア、ベルギー、フランス、オランダ、日本、ドイツにドローン宅配サービスを拡大する計画。
さらに、米テキサス州ヒューストン市で自動運転車によるピザの宅配サービスを開始。ニューロが手掛ける完全自立型の車両(無人の路上走行を行う完全自立型の車両)がピザを配達。
交通渋滞の緩和、人手不足の解消、コスト削減、配達効率の向上、災害時などの活用に。
参照:ヤマトホールディングス ニュースリリース
参照:国土交通省「物流・配送会社のための物流DX導入事例集~中小物流事業者の自動化・機械化やデジタル化の推進に向けて~」
参照:CNNニュース
物流DXをサポート!「スマートマットクラウド」
スマートマットクラウドは、現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、在庫管理・発注を自動化するDXソリューションです。
スマートマットの上に管理したいモノを載せるだけで設置が完了。
あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理し、適切なタイミングで自動発注してくれます。
タグやバーコードの貼り付け・読み取りなどの作業負担もなく、管理画面から実在庫の自動記録や、確認ができます。
さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能です。
在庫圧縮を促進
推移を把握できるグラフで適切な在庫量を判断し、在庫圧縮を促進します。
置く場所を選びません
スマートマットはサイズ展開豊富。ケーブルレスで、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。
API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、より在庫管理効率UPを実現します。
安心サポート
現場への導入に向けては、専門のカスタマー・サクセス担当が、お客様を厚くサポートします。
リアルタイム実在庫のデータを収集、分析、遠隔管理が可能
スマートマットクラウドはリアルタイム実在庫のデータを収集、分析、遠隔で管理。無人店舗の在庫管理をサポートするIoTソリューションです。
物流効率化に成功した事例