在庫管理術
荷姿とは?種類一覧とコストを最適化する選び方を専門家が解説
荷姿とは、貨物を輸送する際の外観や形態を指し、その最適化が物流コストの削減や業務効率化に直結します。
本記事では、JIS規格に基づく荷姿の定義、主要な種類、さらに製造業や物流業におけるコストおよび品質向上の観点から、最適な荷姿の選定方法を専門家の視点で詳しく解説します。
●この記事でわかること
- JIS規格に基づく荷姿の正確な定義と梱包との違い
- 図解でわかる代表的な荷姿の種類一覧とそれぞれの特徴
- 輸送コストと品質を両立させるための、最適な荷姿の選び方
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荷姿とは?輸送効率を左右する貨物の外観の基本
製造業や物流業の現場で、出荷や保管、輸送に関わる方なら荷姿(にすがた)という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。荷姿は単なる物流現場の通称ではなく、輸送効率や作業の安全性、コスト、品質管理にも直結する非常に重要な概念です。
適切な荷姿設計ができていないと、輸送中の破損や湿気・衝撃による品質低下が起こることもあります。
一方で、製品の性質や形状に応じた最適な荷姿を選択することで、現場作業の効率化とコスト削減を同時に実現できます。
JIS規格で定義される荷姿の正確な意味
まず押さえておきたいのは、荷姿は日本産業規格、JISによってその意味が明確に定義されている点です。
日本産業規格のJIS Z 0108 包装—用語では、荷姿を「輸送を目的とした包装貨物の外観」と定義しています※。

つまり荷姿は、倉庫から出荷され、トラック・船・コンテナなどで輸送される時点での貨物の形状や状態を指しています。たとえば単体の段ボール箱も荷姿の一つですし、複数の段ボールをパレットに積み上げ、ストレッチフィルムで固定した状態も荷姿と呼ばれます。
荷姿と梱包の違いとは?
荷姿と梱包という言葉との違いが気になる方も多いでしょう。この2つは密接に関連しますが、指し示す対象が異なります。
梱包は、製品や部品を保護するために箱詰めをしたり、緩衝材を入れて固定する作業やその技術を指します。
一方、荷姿は、その梱包を終えた後にパレットやコンテナに積載された貨物全体の外観・形状・状態を指します。

| 用語 | 指し示すもの | 具体例 |
|---|---|---|
| 荷姿 | 状態・外観 | パレット積み、コンテナ入り、段ボール箱 |
| 梱包 | 作業・技術 | 箱詰め、緩衝材を入れる、ラッピング |
この違いを正しく理解し、製品の性質・形状・重量に合わせて梱包を設計し、その結果として適切な荷姿を標準化できれば、物流コスト削減の第一歩となります。
※参照:「JIS Z 0108:2012 包装—用語」
物流コスト削減の鍵「ユニットロード」
なぜ荷姿の最適化が重要なのか?
荷姿を考えると聞くと、多くの物流担当者の方は商品の段ボールサイズを小さくするといった個別の改善をイメージするかもしれません。しかしそれだけではコスト削減効果は限定的です。
物流コストにインパクトを与えるのは、個別の梱包改善よりも、輸送・荷役の最小単位を標準化するユニットロードという考え方です。

個別の梱包改善より輸送単位の標準化がインパクトを生む
ユニットロードとは、複数の商品や箱をパレットなどにまとめ、1つの輸送単位、ユニットとして扱う仕組みを指します。この考え方を導入することで、荷役作業の省力化、輸送中の破損リスクの低減、倉庫スペースの効率的な利用といった効果が期待できます。
ある企業では、商品ごとにサイズの違う段ボールをバラバラに輸送し、トラックの積載率が60%台と非常に非効率な状態でした。そこで、商品を規格化されたカートンにまとめた上でパレットに積むパレット荷姿を導入し、ユニットロード化を徹底した結果、積載率が90%以上に向上し、年間で300万円以上の輸送コスト削減に成功しました。
荷姿とは、このユニットロードを実現するための具体的な形そのものです。荷姿の最適化とは、梱包単位の改善にとどまらず、物流全体の流れを最適化する取り組みといえます。
【図解】代表的な荷姿の種類一覧と特徴
荷姿には段ボール箱からパレット、コンテナまで多様な種類があります。それぞれ製品の形状・重量・輸送距離・保管環境によって使い分けられ、梱包方法や素材によって特性が異なります。
具体的にどのような荷姿があるのか、代表的なものをイラストとともに見ていきましょう。自社の製品や部品のサイズ、出荷ロット、輸送手段を思い浮かべながら、どのタイプが最適かを検討してみてください。

ケース・カートン
例:段ボール
最も身近な荷姿です。一般的に段ボール箱を指し、ECの個口配送で広く使われます。軽量で安価ですが、手作業での荷役が基本となり、大量輸送には向きません。
袋物
例:フレコンバッグ
粉末状や粒状のものを輸送する際に用いられる荷姿です。化学原料や穀物、飼料などの輸送でよく見られます。
パレット
例:平パレット、ボックスパレット
ユニットロードの核となる荷姿です。板状の平パレットの上には貨物を積み付け、ストレッチフィルムなどで固定できます。フォークリフトでの荷役が前提となり、輸送・保管効率が飛躍的に向上します。
コンテナ
国際輸送や鉄道輸送で標準的に使われる、非常に堅牢な金属製の箱です。貨物を天候や盗難から守り、船からトラックへなど異なる輸送モードへの積み替えを容易にします。
その他
例:木箱、ドラム缶、束
重量物や精密機械を運ぶための木箱、液体を運ぶドラム缶、鋼材などをまとめるバンドルなど、商材の特性に応じて様々な専門的な荷姿が存在します。
【3ステップで実践】最適な荷姿を選ぶための思考フレームワーク
ここまで読んで、自社にとってどの荷姿がベストなのか?という疑問が湧いてきたかと思います。最適な荷姿は、以下の3つのステップで体系的に考えることで、誰でも導き出すことができます。
Step1: 商材の特性を洗い出す【重量・形状・破損しやすさ】
まず、輸送したい商材の特性を正確に把握します。 一つあたりの重さはどれくらいか、形状は複雑か、衝撃や温度変化に弱いか、といった物理的な特性をリストアップしましょう。例えば、壊れやすいアパレル雑貨と、頑丈な工業製品とでは、求められる保護性能が全く異なります。
Step2: 輸送・保管の条件を確認する【輸送モード、保管環境】
次に、その商材がどのようなルートで顧客に届くのかを考えます。 国内のトラック輸送がメインなのか、海外への海上輸送が必要なのか。保管する倉庫は常温か、冷蔵・冷凍か。これらの条件によって、耐水性や強度の要件が変わってきます。
Step3: トータルコストを試算する【包装費、運送費、荷役費】
最後にコストを計算します。ここで重要なのは、段ボール代などの包装費だけを見るのではなく、輸送にかかる運送費、そして倉庫での積み下ろしにかかる荷役費まで含めたトータルコストで判断することです。

荷姿選択時の注意点:荷役コストの見落とし
荷姿を選ぶ際、最も見落としがちなのが荷役コストです。
パレット荷姿を導入すると、パレットやフィルムの費用がかかるため、包装費は上がることがあります。しかし、それによって荷役作業をフォークリフト化できれば、作業員の人件費や時間を大幅に削減でき、結果としてトータルコストは下がる、というケースは非常によくあります。目先の費用に惑わされずにコストを評価しましょう。
荷姿に関するよくある質問(Q&A)
Q. 荷姿は英語で何と言いますか?
A. 一般的に Packing Style や Type of Packing と表現されます。貿易書類などでは、より具体的に in Cartons(カートン荷姿)や on Pallets(パレット荷姿)のように記載されることが多いです。
Q. 荷姿と梱包の違いは何ですか?
A. 梱包が商品を保護するための箱詰めなどの作業を指すのに対し、荷姿はその結果として輸送されるときの貨物の外観・状態を指します。梱包はプロセス、荷姿は成果物と考えると分かりやすいでしょう。
Q. 荷姿の単位はどのように使い分けますか?
A. 荷姿はバラ(ピース)、ボール、カートン(ケース)、パレットのように段階的な単位で管理します。単位が変わると1箱に入る入り数も変わるため、入出庫や棚卸で正確な在庫管理を行うには荷姿ごとの単位を明確にしておく必要があります。とくに製造・物流では、発注ロットや保管スペースの算定にこの単位が直接影響します。
荷姿の保管と在庫管理
荷姿の種類や選び方は、輸送の効率化だけではなく、保管や発注、出荷などの在庫管理にも大きく関わってきます。また、荷姿によって、保管設備や保管場所のレイアウトも変わります。
荷姿の単位と表記には、
- バラまたはピース(PC)1つの商品の最小単位
- ボール(BL または Inner CT):ピースがいつくか入っている箱(袋)
- カートン(C/S)またはケース(C/T):ボールがいくつか入ったもの
などがあり、レイアウトを考える上で大切になります。1つのケースにダンボール箱に入れたそのままの状態で出荷する場合と1点1点商品を箱から出して、保管する場合があります。缶ビールを例にとり説明します。

- ケース(入り数:24缶)
- ボール(入り数:6缶)
- バラ(1缶)
このように荷姿が変わると、1つの箱や袋などに入っている入り数が変わるため、在庫管理が複雑になってきます。
製品を保管する倉庫では、正確な在庫数を把握するため、荷姿を単位とした管理が必要ということです。そして、荷姿に応じた在庫管理をおこなうことを、荷姿別管理といいます。荷姿別管理に対応した在庫管理システムを導入することで、煩雑で負担の多い在庫集計業務の効率を大幅に向上させることができます。
荷姿別管理に対応!スマートマットクラウドで重量管理
スマートマットクラウドは、IoT機器スマートマットを利用した在庫管理・発注自動化サービスです。
スマートマットクラウドでは重量に種類をもたせ、柔軟な計測を実現しています。あらかじめ正しく設定することで、パレットに載せたまま、段ボールに入れたまま個数をカウントすることができます。
あらかじめ段ボールやパレットの重量を登録していただくことで、中身の数量を正しく管理することができます。
またフレコンバッグ入りの粉末やセメント、ドラム缶や一斗缶にはいった液体など数えられない在庫も重さで管理が可能です。
スマートマットクラウドの機能

現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、発注を自動化するDXソリューション「スマートマットクラウド」を使えば、簡単に自動化が可能です。スマートマットの上に管理したいモノを載せるだけで設置が完了。
あとはマットが自動でモノの在庫を検知、リアルタイムの残量と推移をクラウドに可視化し、在庫補充のタイミングを自動で判断・発注します。
さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能です
在庫圧縮を促進
推移を把握できるグラフで適切な在庫量を判断し、在庫圧縮を促進します
置く場所を選びません
スマートマットはサイズ展開豊富。ケーブルレスで、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。
API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、より在庫管理効率UPを実現します。

















