在庫管理術
歯科医院・病院の継承開業【医院継承の実情・メリットとデメリット・相場・継承年齢・トラブルや失敗を防ぐポイント】
早く開業したいけれど、資金がなかなか貯まらない勤務医
後継者がいない開業医。開業を希望しているけれど、資金が足りず勤務医を続けている歯科医師。
双方の問題を同時に解決できる方法に、継承開業(承継開業)があります。継承開業は、新規開業に比べて初期費用がかからず、リスクをおさえて開業できる仕組みです。継承開業をする歯科医師は、医院開業平均年齢より早いタイミングで開業出来ている傾向があります。
継承開業はすでに開業している歯科医院の経営者からも、歯科経営拡大の手段として注目を集めています。
今回は、承継開業とは何か、承継開業の流れ、承継開業のメリット、デメリットについて解説。また承継開業で失敗しないポイントもあわせて紹介します。
最後に敬称開業への備えに必要な日常業務のDX化をサポートする今、話題のIoT、DXツールについてもご紹介しますので、ぜひチェックを!
医院継承とは
医院継承とは、文字通り、既に開業しているクリニックを引き継ぎ運営することです。
クリニック継承や医業継承とも呼ばれています。
そして、ここ数年、少子高齢化を理由に、経営者の後継者不在の問題が大きくクローズアップされているなか、病院・歯科医院においても後継者問題は深刻化しています。
帝国データバンクによる「2021年医療機関の休廃業・解散動向調査」によると、倒産(法的整理)は前年比6件増の33件。休業・廃業・解散などにより事業を終えた医療機関は567件と、過去最高水準となったことが報告されています。
また、その要因を「経営者の高齢化を背景に、休業・廃業・解散という形で事業を終える医療機関が増加。さらにコロナが加速要因となった」と分析しています。
このように高齢化、後継者不在という課題を抱えた病院・歯科医院の廃業が増加している背景を受けて、注目を集めているのが、継承開業というわけです。
継承開業とは
継承開業とは、すでに開業している現院⻑から歯科医院やクリニックを譲り受け開業するスタイルのことです。継承開業は以下の通りに分類されます。
- 親族内継承:親戚や血縁関係のあるものに継承する
- 親族外継承:親戚以外の勤務医や知り合いに継承する場合と第三者に承継する場合がある
- 第三者承継:M&A仲介事業者(m3:エムスリーなど)といった第三者にM&Aで承継する
継承開業では、前医院から土地や建物、医療機器などを譲り受けます。それまで通っていた患者のカルテも引き継ぎ、双方の合意があれば勤務していたスタッフも継続して雇用することができます。
継承開業にかかる費用・相場
開業を希望する医師にとって最も気になるのは継承開業にかかる費用ではないでしょうか。継承開業にかかる主な費用をピックアップしてみました。
▼継承開業にかかる主な費用
- 譲渡代:営業権と譲渡対象資産を合計したものを支払う
- 仲介手数料:仲介業者を利用した場合に業者に支払う手数料
- 弁護士費用:譲渡契約書の作成費等
- 医師会入会金:医師会に入会する場合は加入時に入会金が発生
- 内装費:内装を新しくする場合に発生する工事費
- 医療機器代:医療機器の買い替えが発生する場合の費用
継承開業のうち大きな割合を占めるのが、譲渡代です。引き継ぐクリニックの所在地や評価によって値段が大きく変わりますが、一般的な相場は2,000〜4,000万円程度。
後継者がみつからないまま廃業してしまうより、通っていた患者さんのため、勤務していた歯科衛生士や歯科助手等スタッフの雇用を守るため、地域医療を守りたい等、前院長の意向により無償で譲渡、というケースもまれにあります。
医院の継承年齢は?
一般的に開業に必要な経験能力を身につけ、ある程度の自己資金の準備をし、20年以上の事業を始めることを総合的に考えると、開業の適齢期は40代から50代前半が望ましいと言われています。
そして、継承開業の場合は、親子(実子)が引き継ぐか第三者が引き継ぐか、いずれの場合でも、引き継ぎには、一定期間、譲渡側と承継者が一緒に勤務する時間が必要です。
このことから、
- 遅くとも引き継ぐ側の医師の年齢が70代前半には承継したい
- 継承後、最低でも20年ほど事業を続けたい
という事情を踏まえると、承継する子や第三者の譲受人は40代が望ましいと言えそうです。
継承開業のメリットとデメリットやトラブル
多額の譲渡費用が発生すると言っても、新規開業に比べると医院開業資金をぐっと抑えることができるのが、継承開業のメリットです。
さらに、すでにクリニックに通っている患者さんを引き継ぐため、歯科医院開業から経営が軌道に乗るまでの期間が相対的に短く、広告宣伝費を通常より削減できます。現在の職場で勤務医を続けながら開業準備を進めるのはかなり大変ですが、継承開業ならその分時間も労力も削減することが可能です。
▼継承開業のメリット
- 新規開業より低コストで開業ができる
- 良好な診療圏エリアで開業しやすい
- 開業区域の患者さんを引き継げる
- 開業準備期間を短縮できる
- 金融機関から融資を受けやすい
- スタッフを継続雇用の場合、採用費・研修コストを節約できる
継承開業のデメリット
メリットの多い継承開業ですが、実際に継承開業するにあたっては、後のトラブルにつながらないようにするために気をつけるべき事項もあります。
- 引き継いだ施設や医療機器の老朽化がすすんでいることがある
- 開業後、前院長の治療方針や治療内容の影響を受けることがある
- スタッフを引き継いだとき、新しい方針が浸透しにくいことがある
せっかくのクリニック継承が失敗に終わらないためにも、事前にデメリットを把握して、対応策を考えておくことが重要と言えるでしょう。
継承開業を成功させるポイント
また全院長の退職から時間が経過してからのリニューアルオープンになると、患者が別の医者に通い始めてしまうことがよくあります。前院長からのヒアリング・話し合いを重ねて、スムーズに継承できるよう準備をした方がよいでしょう。
また第三者承継の場合、継承後に判明する法人借入金があったり、前院長による医療過誤が発覚し係争が発生するリスクもゼロではありません。
リサーチ力が高く公正な立場で判断ができるM&A仲介業者や、弁護士、司法書士など専門家を活用することで、リスク回避の可能性が高まります。
最後に継業開業では、節約できた開業コストを歯科DXに投資することができます。
導入するシステムの選択肢は多くありますが、確実に効率アップや経費削減につながる部分を優先して自動化をすすめて行きましょう。
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