在庫管理術
歯科医院の人件費【人件費の現状・最適化する方法・人件費削減に必須のIoT】

人件費が膨らみ利益率が伸び悩む、そんな課題はありませんか。まずは自院の人件費の構造と適正水準を把握し、無駄を省く改善策を見極めましょう。
歯科の人件費の平均額と労働分配率・人時生産性の目安を最新データで提示し、衛生士賃金高騰や残業増への対策を解説します。給与体系の見直しからIoT在庫管理・クラウド勤怠活用まで、人件費を最適化する具体的ステップを紹介します。
歯科医院の人件費とは?
人件費は、歯科医院がスタッフを雇用・維持するために発生するすべての労務関連コストを指します。損益計算書(P/L)では「販売費及び一般管理費」に区分され、材料費と並ぶ大きな固定費です。適正水準を把握しないまま増加を許すと、利益率が急速に悪化します。
人件費に含まれる主な費目と算入ルール
人件費のうち約85〜90%は給与・賞与・法定福利費が占めます。残る法定外福利費や研修費は過度に切り詰めるとスタッフのモチベーション低下や離職率上昇を招くリスクがあります。変動させやすい費目として削減の候補に挙がりやすいものの、かえって経営効率を損なう恐れがある点に注意が必要です。
区分 | 主な内訳 | コメント |
---|---|---|
給与・基本給 | 歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、受付・助手など全従業員の月給 | 歩合給や資格手当を含むケースも |
賞与(ボーナス) | 夏季・冬季賞与、決算賞与 | 給与規定と連動して支給 |
法定福利費 | 社会保険(健康・厚生年金)、雇用・労災保険、子ども子育て拠出金 | 事業主負担分のみ計上 |
法定外福利費 | 退職金積立、制服・シューズ支給、健康診断、懇親会補助など | 院内制度ごとに変動 |
通勤手当 | 交通費(定期代・ガソリン代等) | 上限設定でコスト管理しやすい |
研修費・教育費 | 外部セミナー受講料、資格更新費 | 将来の収益貢献を見込んで投資 |
歯科特有の手当・インセンティブ
歩合給(出来高払い)
歩合給は、自費診療や技工物の売上に応じて支給する出来高制。衛生士や技工士のモチベーションを高めやすくなります。上限額と算定基準を就業規則で明確にすると人件費の予測が立てやすくなります。
衛生士手当
衛生士手当は、常勤の歯科衛生士確保を目的に月2~5万円ほど上乗せするケースが主流です。資格更新費や研修補助と組み合わせると人員の定着効果が高まります。
皆勤手当や役職手当
皆勤手当や役職手当は、欠勤ゼロやリーダー業務への責任感を評価して支給するものです。能力給との二重評価にならないよう、支給基準をシンプルに保つことがポイントです。
資格取得補助
ホワイトニングやインプラント認定衛生士など自費診療につながる資格の受講費用を支援します。投資額と収益効果をひも付けるため、取得後の売上目標を設定しておくと管理しやすくなります。
売上と人件費のバランス指標
労働分配率と人時生産性の2つのKPIを月次でモニタリングします。労働分配率が高止まりしている場合はシフトの組み直しやタスクの自動化、人時生産性が低い場合はチェアタイムの稼働率向上や自費メニュー拡充など、どちらの数値を動かすかを切り分けて対策します。
労働分配率
労働分配率は「稼いだ売上をどれだけ給与などに充てているか」を示す指標です。
「人件費 ÷ 医業収入× 100」で算出し、歯科医院の場合、25〜35%が健全ゾーンとされ、分配率が 40%を超えると材料費や家賃を差し引いた時点で利益が残りにくくなります。反対に20%前後まで低いと、給与水準が業界平均を下回り、人材流出や採用難を招きやすくなるため注意が必要です。
人時生産性
人時生産性はスタッフ 1人が 1 時間でいくらの売上を生み出しているかを把握します。「医業収入 ÷ 総労働時間」 で求め、4,000〜5,000 円/時間が一般的な目安です。3,000 円を切ると人件費比率が上がりやすい傾向があります。逆に 6,000 円以上なら業務効率が高く、給与改善や設備投資の原資を確保しやすくなります。
人件費が高止まりする3つの要因
① 歯科衛生士の需給逼迫と賃金高騰
国家試験合格者数は横ばいでも求人倍率は5倍超に。優秀な衛生士を確保しようと各院が初任給を引き上げ、資格手当を厚くするため、固定費が膨らみやすい状況です。
② 無計画なシフトと残業の常態化
予約枠に対して過剰にスタッフを配置したり、逆に人手不足を残業で補ったりすると、労働分配率は簡単に跳ね上がります。患者数とチェアタイムに合わせたシフト設計と、残業時間の上限管理が不可欠です。
③ バックヤード業務の非効率(在庫・発注・集計)
手書きの発注ノートや目視棚卸は時間を奪い、人時生産性を押し下げます。重量センサーやクラウド集計ツールでバックヤードを自動化することで、チェアサイドに充てる時間を確保し、残業削減にも直結します。
人件費最適化のステップ
現状分析(給与体系・分配率・残業実績)
まずは給与テーブル・各種手当・賞与を一覧化し、労働分配率と人時生産性を算出。併せて直近 6 か月の残業時間・残業コストを洗い出し、「どの職種に、どの時間帯でコストが集中しているか」を可視化します。現状を数値で把握することが、最適化プロジェクトの出発点です。
タスク棚卸しと業務標準化
次にスタッフ全員の業務を患者対応・診療補助・バックヤードに分けて棚卸しし、担当者・所要時間・発生頻度を整理します。標準化マニュアルを作成し、重複や非効率タスクを削減。自動発注やクラウド勤怠などツールで置き換え可能な業務は即時デジタル化し、チェアサイドに人員を集中できる体制を整えます。
KPI を踏まえたシフト設計
最後に、目標労働分配率25〜35%・人時生産性4,000〜5,000 円/時間を KPI として設定し、患者数予測・チェア稼働率に合わせて人数と時間帯を最適化したシフト表を作成します。月次で実績をモニタリングしKPI 乖離が出たら残業抑制・予約枠調整・タスク再分配でリバランスする PDCAを回しましょう.
IT・IoT 活用で人件費を削減できる業務
レセプト自動点検
レセプトチェックを AI が行うシステムを導入すれば、入力漏れや算定ミスを自動で検知し、再提出・返戻の手間を削減できます。月末締め作業が数時間で終わり、スタッフが患者対応に充てる時間を増やせます。
在庫・発注自動化
重量センサー付きマットが残量をリアルタイムでクラウドに反映。設定ラインを下回るとディーラーへ自動発注がかかるため、欠品リスクを抑えながら発注書作成や棚卸の時間を大幅に短縮できます。
クラウド勤怠とシフト管理
打刻から残業アラートまでクラウドで一元管理すると、紙タイムカード集計や手入力のミスがゼロに。リアルタイムで勤務状況を把握し、シフトの過不足を即調整できるため、残業防止と勤務時間の適正化に直結します。
スマートマットクラウドで発注・在庫管理を自動化
サービス概要
スマートマットクラウドは重量センサー内蔵マットとクラウド管理ソフトを組み合わせた置くだけ在庫管理ソリューション。マットの上に材料を置くだけで残量がリアルタイム表示されます。
ディーラー自動発注フロー
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残量検知 → 2. 閾値割れアラート → 3. 自動発注 → 4. 納品後に在庫更新。
サービス概要
重量センサーを内蔵したマットに薬剤や消耗品を載せるだけで、残量をクラウドへリアルタイム送信。設定ラインを下回るとアラートと同時にディーラーへ自動発注がかかるため、欠品リスクを抑えつつ発注書作成の手間をゼロにします。
スマートマットクラウド導入事例
スマートマットクラウドは、現在多くの歯科医院にご利用いただいています。スマートマットクラウド導入が人件費削減に貢献した事例をご紹介します。
この記事を書いた人

スマートマットクラウド 医療メディア編集部
医師をはじめとする医療従事者、医療業界の課題に精通している日本最大級の医療情報専門サイト 「m3.com」出身のライターが、医療業界の課題から業務効率化・DX推進までわかりやすく解説します!
【スマートマットクラウドとは?】
スマートマットの上にモノを置き続け、重さで数を数えるIoTサービスです。
ネジなどの部品、副資材・仕掛品・粉モノや液体の原材料まで、日々の在庫確認や棚卸・発注まで自動化します。