在庫管理術
変種変量生産【多品種少量生産との違い・移行する理由・対応するセル生産方式、具体例・メリットや課題】
この記事では、変種変量生産と多品種少量生産との違いや移行する理由、対応するセル生産ライン、具体例、メリットや課題についてわかりやすく解説していきます。
変種変量生産を行うことでより複雑化してしまう在庫管理をミスなく効率化するIoTソリューションもご紹介。
変種変量生産とは【多品種少量生産との違い】
製造業における生産方式は従来、同じ製品や商品を大量に生産する少品種大量生産方式が主流でした。
絞り込んだ売れ筋の製品を大量生産することで、低コストで高品質な製品を大量に市場に提供する製造形態です。
ところが、市場や消費者ニーズの多様化、グローバル化に伴い、1990年代以降から製造業の現場では市場や顧客のニーズや好みに合わせて、多種多様な製品や商品を少量ずつ製造する多品種少量生産が主流になっています。
そして、消費者ニーズのより激しい変化に対応するために登場したのが、多品種少量生産対応の発展形とも言われている変種変量生産(英語:Variable-mix variable-volume production)です。
変種変量生産では、より多彩な製品をその都度の市場規模に合わせ、仕様を変更しながら少量から大量まで必要に応じた量を生産し、供給を可能にします。
変種変量生産は多品種少量生産よりも、生産する製品が多様化するだけでなく、生産数量や納期が頻繁に変動するため、これらに対応できる体制やシステム、最新技術の導入が欠かせません。
変種変量生産に対応するセル生産方式
変種変量生産を実現するためには、セル生産方式の導入が必須だと言われています。
セル生産方式とは、一人または小人数の作業スタッフで製品を組み立てる生産方式です。
これまでは、1913年にアメリカの自動車メーカーであるフォードが導入したのが起源とされるライン生産方式による大量生産が主流でした。
そして、市場や消費者ニーズの多様化、グローバル化に伴い変種変量生産に移行するのにあたり、登場したのがセル生産方式です。
さらにセル生産方式とライン生産方式から生産性向上に有益な特徴を組み合わせた生産方式を「ダイナミックセル生産方式」と言います。
これら3つの生産方式について具体的に説明していきましょう。
ライン生産方式
ベルトコンベアなどの搬送システムで製品を移動させながら、所定の位置についた作業者が順番に組立て作業を担い、各工程を遂行していく生産方式です。
所定の位置についた作業員の前を製品が流れていくので、作業員は移動せずオペレーションを実行。単一の製品を大量に製造でいるため、少品種多量生産に適しています。
セル生産方式
1人または少人数の作業者のユニットで、部品や工具をU字型などに配置した「セル」と呼ばれるラインで、製品の組立工程を完成まで行う生産方式。
現場スタッフはL字やU字の作業台に沿って、移動したり、体の向きを変えたりしながら作業を遂行していきます。
一人または少人数の作業員がオペレーションを行い、需要や工場の稼働状況によって臨機応変に調整することが可能なため、変種変量生産はもちろん、多品種少量生産にも適しています。
ダイナミックセル生産方式
変種変量生産に欠かせないセル生産方式ですが、
- 1人あたり作業範囲が広く、高いスキルが求められる
- 作業スタッフ育成にコスト・時間が掛かる
- セル内の作業や状況が属人化しがち
といった課題やリスクが指摘されています。
1人あたりの作業範囲が広くなるだけでなく、オペレーションの高度化・煩雑化が進み、スキルの習得だけでなく、スタッフの負担増もリスクとして挙げられています。
また、1人の作業員が担当しているセル内の工程作業や治具や工具の保全の進め方や作業変更履歴や稼働状況に応じた対応の詳細内容が共有化されず、属人化に陥りやすいことも否めません。
これらの課題を解消するために生まれたのが、セル生産方式とライン生産方式それぞれのメリットを組み合わせたダイナミックセル生産方式です。
さらに特定の作業員のスキルに依存していた作業をIoTや人工知能、ロボットが行うことで、セル生産方式の属人化の課題を解消。またヒューマンエラーが削減されることで、生産効率の向上にも寄与します。
セル生産方式では産業用ロボットはほとんど用いられませんでしたが、ダイナミックセル生産方式では人とロボットのオペレーション範囲をおのおの得意分野に応じて住み分けています。
このような場合、機械やロボット同士が連携するためのIoTやセルの組み合わせを柔軟に変更するための上位システムへのネットワークは不可欠。さらに産業用ロボットの新しい作業習得やトラブルシューティングのためにAI機能が必要となります。
変種変量生産の具体例
日本の製造業を牽引してきたトヨタ生産方式のひとつに、「ジャストインタイム(JIT)*1」があります。
「必要なモノを、必要な時に、必要な分だけ、流れるように停滞なく」生産を行なうことを意味し、多品種少量生産を目的として生まれた考え方です。
近年では、「ジャストインタイム(JIT)」により多品種少量生産を行っていた自動車業界、家電業界、化粧品業界など多くの製造業の企業が、より多彩なニーズに応えるため、変種変量生産へとシフトしています。
変種変量生産のメリット
変種変量生産には以下のようなメリットがあげられています。
- 多様化する市場・消費者ニーズに対応できる
- 短期化する製品ライフサイクル*に対応できる
- 生産計画を柔軟に変更できる
*製品ライフサイクル:製品が市場に登場してから退場するまで、消費者が製品を購入することができる期間全体のこと。商品の寿命とも言われ、年々短くなってきていることが指摘されている。
変種変量生産の課題
メリットが多く、今後の製造業には欠かせないと言われている変種変量生産ですが、以下のような点には注意が必要です。
- 生産管理・品質管理がより複雑化してしまう
- 生産する製品が頻繁に変わるため、生産性が上がらない
- 種類や数量が頻繁に変わる資材の在庫管理に時間やコストがかかる
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