在庫管理術
飲食店のDXとは【成功事例やメリット・デメリット、解決するべき課題とは?】
飲食店のDXとは
飲食業界は、開業3年で7割前後が廃業し、10年続くのは1割程度ともされる競争の激しい業界です。
外食産業の市場規模は、金額ベースの最新確定値で約24兆円規模まで回復しています。さらに日本フードサービス協会の市場動向調査では、2024年以降も売上が前年を上回る推移が続いており、回復基調にあります*1。
ただしその主因は値上げによる客単価の上昇であり、客数の戻りは限定的です。つまり売上は戻っても利益が残りにくい構造が続いています。コスト高と人手不足のなかで生き残るために、業務そのものを変革するDXの重要性がいっそう高まっています。
インバウンド需要の回復や、タブレット注文・セルフレジ・モバイルオーダーの普及など、飲食業界を取り巻く環境は大きく変化しています。深刻な人手不足やコスト高が続くなかで、今後も生き残るために業務そのものを変革し、新しい価値を提供するDXが必要となっています。
DXとはそもそも、「データやデジタル技術を活用して製品・サービス・ビジネスモデルを変革し、顧客や社会にとって新しい価値を提供することで競争性の優位に立つこと」*2と定義されています。
これを飲食店に当てはめると、飲食店のDXとはデータやデジタル技術を活用することで、接客や会計・予約・仕入れ・在庫管理・客筋や売れ筋分析などの業務を変革し、顧客満足度や「待ち時間が少なく、混雑しておらず、ゆとりのある接客対応で心地よく過ごせた」など、顧客体験を向上させることです。
しかしながら、デジタルツールの導入やデータ処理そのものが最終目標になってしまったり、業務改善は行われたものの顧客満足度や集客に繋がらなかったりすると、DXに成功したとは言い難いでしょう。
顧客や社会のニーズを理解し、デジタルツールやデータ処理を活用して新しい価値を顧客に届け、顧客満足度を向上させてこそ飲食店のDXと言えます。
*1:日本フードサービス協会「外食産業市場動向調査 令和6年(2024 年)年間結果報告 」
*2:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」

飲食店DXのメリット
DX推進のメリットは業務効率化による店舗スタッフの業務負担軽減だけではありません。コスト削減やデータ分析により新たな商品・サービスが提供できるため、顧客にも有益であり、厳しい競争社会を生き残れる要因となるメリットがあります。ここでは代表的な5つのメリットを紹介します。
業務の効率化
タブレットや専用機器を用いたモバイル・テーブルオーダーシステム、電子マネーやクレジットカード・交通ICなどのキャッシュレス決済、POSレジ*3を活用したレジ締めや販売データの記録・集計・分析により、注文から会計までの業務を大幅に効率化できます。
オーダーミスや会計待ちが減ることは、客席回転率の向上にも直結します。
人手不足の解消・省人化
セルフオーダーやモバイル注文を取り入れることで、限られた人数でも店舗を回せるようになります。ホールでの注文受け業務が減る分、スタッフは調理や接客といった付加価値の高い業務に集中できます。
コスト削減・利益率の改善
どの飲食店でも共通する大きな業務負担となっている食材の在庫管理・棚卸や仕入れといった業務をデジタルツール*4で自動化することで、業務負担を大幅に減らせます。
あわせて過剰在庫や欠品、廃棄ロスの削減にもつながり、FLコストの適正化に効きます。複数チェーン店であれば、共通システムを利用して本部で一括で仕入れ・価格管理することで、業務負担を減らすだけでなくコストダウンにも繋がります。
蓄積データの活用
データ集計・分析がカンタンにできると、商品の売れ筋や時間帯による客足の変化など、今まで見えなかった有益なデータを見える化できます。
勘や経験に頼っていた仕入れや新メニュー・新サービスの判断を、データに基づいて行えるようになります。
顧客満足度の向上・新サービスの提供
アプリによるテイクアウトの事前注文やウーバーイーツや出前館といったデリバリー専門業者による配達を活用することで、今までと変わらない人数でテイクアウトやデリバリーといった新たなサービスを導入することが可能。
待ち時間の短縮やゆとりのある接客と合わせて、結果、顧客満足度の向上にも繋がります。
*3:POSレジとは商品を販売した際に生じた金銭のやり取りの情報を、販売時点でデータ記録・集計するシステムを備えたレジのこと。現在では様々な形態に対応したキャッシュレス機能や集計したデータからあらゆる分析・管理が可能な機能が付随したものが多い。
*4:スマートマットクラウド(SMC)を用いれば、在庫管理・棚卸・発注が自動化できる。

飲食店DXのデメリット・失敗事例
飲食店のDXは顧客満足度の向上を最終目標として正しく進めると、ほとんどデメリットはありません。しかし以下のようなことが原因で失敗することもあります。
サービスが無機質になり顧客満足度が下がる
デジタルを急ぐあまり、接客や気配りや笑顔が減り、サービスが無機質なものになり、顧客満足度の低下に繋がるケースです。
省人化を進めながらも、人が担うべき接客は残すという線引きが重要になります。
導入コストの負担が大きい
ネット環境の整備や、利用する端末の購入費など、DX推進には初期費用とランニングコストがかかります。
対費用効果を見極め、優先度の高い業務から段階的に導入することが、負担を抑えるポイントです。
現場に定着せず使いこなせない
デジタルが苦手、スタッフによる拒否反応が強いと、せっかく導入したツールが使われずに終わってしまいます。
操作がシンプルなツールを選び、運用フローの設計と教育をセットで進めることが欠かせません。
このようにDXの失敗事例を招かないためにも、事前に自店舗やグループチェーンに適したシステム・デジタル技術かどうか、対費用効果があるのか、また導入時や導入後のカスタマーサービスが受けられるのかを確認しましょう。

飲食店のDX導入成功事例
実際にDXを導入した飲食店の興味深い取り組み・成功事例をご紹介します。
ロイヤルホールディングス株式会社
ロイヤルホールディングス株式会社は、DXの推進における取り組みが評価され、2024年12月1日付で、経済産業省が定めるDX認定制度において「DX 認定事業者」として正式に認定。
注文用タブレットの導入や業務プロセスの自動化により、顧客が自由に注文やカスタマイズを行える環境を整備し、従業員が調理や接客に専念できる体制を構築。これにより、お客様満足度の向上と業務効率化を同時に実現。
また、AIを活用した発注予測システムの導入により、在庫管理の効率化と食品ロスの削減を実現し、従業員の負担軽減にも貢献。
*参照:2025年1月8日 ロイヤルホールディングス株式会社 リリース
株式会社すき家(ゼンショーホールディングス)
株式会社ゼンショーホールディングスは、経済産業省が定めるDX(デジタルトランスフォーメーション)認定制度に基づき、「DX認定事業者」としての認定を2021年10月1日に取得。
人工知能(AI)・クラウド・IoT・セルフオーダー・セルフキャッシング等のデジタル技術やITによるデータ活用により、店内業務の効率化と顧客利便性の向上を推進。また仕入調達については、ゼンショーホールディングスのグループ共通のシステムで運用することで仕入れコストの低減を計っている。
結果、顧客の利便性が向上しさまざまな環境変化への柔軟かつ迅速な対応が可能となった。またグループ内で同じ基幹システムを利用することで、店舗・工場・物流・本部の生産性向上に繋がった。
参照:ゼンショーホールディングス DX(デジタルトランスフォーメーション)
株式会社すかいらーくホールディングス
全社横断的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、事業活動の変革と2025年戦略ビジョンの実現を目指している。デリバリー効率の最大化と配達員の採用難度の低下を目指し、注文ごとに自動的に配達ルートが表示される「配達員専用アプリ」を導入。
注文受け作業の削減による店舗生産性の向上、回転率UPによる客数増のためにデジタルメニューブック(セルフオーダー端末)の導入。全国の各レストラン店舗へフロアサービスロボットの導入を進めており、2022年中に2,149店舗に対し3,000台を配置した。

飲食店が抱える課題とDX推進の背景
人手不足
2022年の帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2022年4月)」によると、人手不足割合が上昇し、経営課題として浮上。特に飲食業とホテル業においてその傾向が顕著であることが報告されています。
通常営業に伴う人手不足に加え、テイクアウト・デリバリーに要する新たな人材不足も問題になっています。
売上・収益性の課題
原材料費や光熱費の高騰により、売上が伸びても利益が残りにくい構造になっています。価格転嫁にも限界があり、値上げによる客離れのリスクと利益確保のあいだで難しい判断を迫られる店舗が少なくありません。
また、リモートワークの定着で駅周辺やオフィス街の飲食店ではランチや仕事帰りの需要が変化するなど、立地によって集客環境が変わってきています。限られた席数・人員で客席回転率と生産性をいかに高めるかが、売上改善の鍵となっています。
必要経費の拡大
エネルギー価格や物流コストの上昇を背景に、水道光熱費や包材・消耗品などの経費が増加しています。加えて、最低賃金の引き上げが続き人件費も上昇。売上に直結しにくい固定的なコストが積み上がることで、利益が圧迫される飲食店が増えています。
こうした見えにくいコストを可視化し、ムダを削減することが、経営上の重要な課題となっています。
コスト削減・適正化が難しい
飲食店経営において、最も大きなコストであるのが、食材原価と人件費です。飲食店の経営者は、適切なコスト意識とコスト管理ができなければ店舗を続けることができません。
その重要な指標となるのが「FLコスト」と「FLコスト比率」です。「F」はFoodで原価、材料費を示し、「L」はLabor(労働)で人件費を示します。
- FLコスト=食材原価と人件費
- FLコスト比率(%)=売上高に占めるFLコストの比率。計算式は、(食材原価+人件費)÷売上×100
FLコスト比率は60%以下が適正値とされます。その内訳は、食材費24~40%、人件費20~36%ほどが目安と言われています。
近年ではヨーロッパやイスラエル情勢のため、食材原価や石油原価が上がり、日本でも全体的に物価高となっています。そのため飲食店でも営業を続けるため、やむを得ずメニュー価格を上げている店舗が数多くあります。

DX推進や課題解決にはコンサルに相談してもOK
DXをどのように進めてよいか分からない、そもそも抱えている課題が多すぎてDXを推進する余裕がない、という飲食店経営者は飲食業界専門のコンサルタントに相談することをお勧めします。
デジタルツールやなんらかのシステムを導入しなくても、既存の業務フローを改善するだけで抱えている課題が解決するかもしれません。
その後、新たな競争力を手に入れるためにDX促進に取り掛かっても良いのではないでしょうか。ともかくDX推進の前には必ず店舗・スタッフが抱える抱える課題を洗い出し、業務全般を見直すことからスタートしましょう。
飲食業界のDXに関するよくある質問
Q1. 飲食業界のDXとは何ですか?
A. 飲食店の仕入れ・在庫管理・発注・オペレーション・売上管理などにデジタル技術を取り入れ、業務を効率化・高度化する取り組みです。人の勘や手作業に依存していた業務をデータ化することで、店舗運営の安定化と省人化を実現します。
Q2. 飲食業界でDXが求められている理由は何ですか?
A. 飲食業界では慢性的な人手不足、原材料価格の高騰、廃棄ロスの増加が大きな課題です。飲食DXを進めることで、在庫や使用量を正確に把握でき、ムダな発注や欠品を防止できます。結果として、コスト管理とサービス品質の両立が可能になります。
Q3. 飲食DXの具体例にはどのようなものがありますか?
A. 代表的な例として、食材在庫の自動管理、発注業務のデジタル化、売上データと連動した需要予測などがあります。特に在庫管理DXは、棚卸作業の負担を減らし、廃棄ロス削減や原価率改善に直結しやすい取り組みとして注目されています。
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スマートマットクラウドで飲食店DXに成功した事例













