在庫管理術
BCP対策とは?中小企業がミニマムに始める策定手順とジギョケイ活用法
「BCPを作成するように言われたものの、何から手をつければいいかわからない」
「防災マニュアルとの違いがわからない」
「通常業務で忙しく、分厚い計画書なんてとても作れない」
このような悩みを抱えている方のために本記事では、BCPの基本と最短で策定する手順を紹介します。
BCP(事業継続計画)とは、災害・停電・感染症・サプライチェーン寸断といった緊急事態でも、事業を止めないための経営の備えです。
防災対策との違い、最初に着手すべき優先順位、そして中小企業でも無理なく作れる「事業継続力強化計画」を使った5ステップをわかりやすく整理します。
完璧な計画書を作る必要はありません。まずは A4・1枚のたたき台から始めれば十分です。
この記事でわかること
・BCPと防災マニュアルの違い、中小企業にとって欠かせない理由
・最短で策定できる「ジギョケイ」を活用したBCPの作り方
・作って終わりにならないための、現場で使える運用・定着のコツ
BCP(事業継続計画)とは?防災との違いを3分で理解する
防災は「人命と施設」を守る対策、BCPは「事業と信用」を守る戦略。目的と対象が異なるため、防災計画だけでは事業継続には不十分です。
多くの企業が最初に疑問を抱くのが、「防災計画とBCPは何が違うのか?」という点です。両者は混同されがちですが、実は役割が大きく異なります。
「人命」を守る防災、「事業」を守るBCP
従来の防災計画の目的は、従業員の命を守り、施設の損害を最小限に抑えることでした。しかし、命が助かっても 工場が稼働できない、システムが使えない、納期が守れない という状態が続けば、企業は信用を失い、倒産リスクにも直面します。
この問題を解決するために必要なのがBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)です。
BCPとは、緊急時でも中核業務を止めない、あるいは止まっても可能な限り早く復旧させるための仕組みを準備することです。

つまり、防災計画が生き延びるための計画だとすれば、BCPは生き残った後に、どうやって仕事を再開するかという計画といえます。

なぜ今、中小企業にBCPが必要なのか?
「うちは小さい会社だから関係ない」と思っていませんか? 実は、中小企業こそBCPが必要です。
近年、地震や台風などの自然災害が激甚化しており、日本中どこにいても被災リスクがあります。大企業であれば豊富な資金で復旧できますが、中小企業の場合、復旧が1週間遅れるだけで資金繰りが悪化し、廃業に追い込まれるケースも少なくありません。
さらに、サプライチェーン全体の視点でもBCPの重要性は高まっています。親会社や主要取引先からは「災害時でも安定して部品・資材を供給できる体制になっているか?」と確認されることが一般的になりました。いまやBCPを整備していないこと自体が、「取引上のリスク」と評価されてしまう時代です。
筆者の経験からの一言アドバイス
防災マニュアルの表紙を書き換えるだけではBCPになりません。「社長が不在でも、誰が注文を受けるか」を決めることから始めましょう。
BCP準備不足が原因で取引停止になる前に、最低限のルールを決めておくことが会社を守ります。
メリットは守りだけではない!BCP策定がもたらす3つの効果
BCPはリスク回避のための守りだけでなく、信用力向上や公的支援につながる「攻め」の経営施策でもあります。
BCP策定というと、「災害対策として仕方なくやるもの」「コストばかりかかる取り組み」と捉えられがちです。しかし、正しく設計すれば、BCPは企業価値を高め、経営判断を後押しする実務的な武器になります。
ここでは、社内提案や稟議でも説明しやすい3つの効果を整理します。
【信用力】取引先・金融機関からの評価が高まる
BCPを策定していることは、「非常時でも事業を継続できる体制を整えている企業」であることの客観的な証明になります。取引先にとっては、災害時でも供給責任を果たせるかどうかは重要な判断材料です。BCPの有無が、新規取引の検討や既存取引の継続判断に影響するケースも存在します。
次のセクションで紹介する事業継続力強化計画の認定を受けると、公的な金融支援制度の対象になり、資金調達面でメリットを受けられる可能性があります。
【税制・補助金】「事業継続力強化計画(ジギョケイ)」を活用できる
中小企業にとって、BCP策定の実利が最もわかりやすい制度が、事業継続力強化計画(通称:ジギョケイ)です。
これは、中小企業が策定した簡易的なBCPを経済産業大臣が認定する制度で、比較的少ない工数で申請できる点が特徴です。
認定を受けることで、次のような具体的なメリットが得られます。
- 税制優遇:自家発電機や制震ラックなどの防災
- 減災設備を導入した際、20%の特別償却が適用される
- 補助金の加点:ものづくり補助金などで加点対象となり、採択されやすくなる
- 金融支援:日本政策金融公庫による低利融資の対象になる場合がある
本格的なBCPはハードルが高いと感じる場合でも、まずはジギョケイの認定を目標に進めることで、現実的かつ効果的にBCP整備を進められます。
※最新の優遇措置や制度内容については、中小企業庁の公式サイトをご確認ください。
出典:中小企業庁「事業継続力強化計画」
【組織力】有事対応を通じて、通常業務のムダが見える
BCPは非常時の計画であると同時に、平時の経営を見直すツールでもあります。
BCP策定の過程では、どの業務が止まると致命的か、誰が判断し誰が動くのか、を整理します。この作業を通じて、属人化していた業務や、平常時から非効率だった業務フローが可視化されるケースは少なくありません。
結果、策定の過程で平時の業務の改善や業務標準化が進むことも、BCPの重要な効果といえます。

【法的対応】介護・福祉事業者は2024年から義務化
介護・障害福祉サービス事業者については、2024年度の介護報酬改定により、BCPの策定と研修・訓練の実施が完全義務化されました。
BCP未策定の場合、基本報酬が減算されるペナルティがあります。これは単なるルールの変更ではなく、利用者の命と生活を守る最後の砦としての役割が強く求められているためです。
介護・福祉事業者にとってBCPは、余裕があれば取り組む対策ではなく、事業運営に必要な制度対応の一つとして着手し、整理する必要があります。
【実践編】挫折しない!ミニマムBCP策定5ステップ
ここから実際にBCPを策定する手順を解説します。BCP策定では完璧を目指さず、まずは中核事業とボトルネックを特定し、ミニマムに計画書を作ることから始めましょう。
最初から分厚いマニュアルを作ろうとすると必ず挫折します。A4一枚に収まる内容で、「ジギョケイ」の申請書を埋める感覚で着手します。
Step1. 中核事業を1つに絞り込む
災害時に人・モノ・金のリソースが限られる中で、全ての事業を継続するのは不可能です。これが止まると会社が潰れる、社会的責任が大きい、という中核事業を1つだけ特定します。
筆者の経験からの一言アドバイス
一番売上が大きい事業ではなく、「一番キャッシュフローに影響する事業」を選択します。製造業ならこの製品の出荷だけは死守する、と一点突破で決めるのが鍵です。
Step2. ボトルネックを知る
特定した中核事業を継続するために必要な経営資源を洗い出し、何が欠けたら事業が止まるかを考えます。
- 人:特定の職人しかできない作業はないか?
- モノ:代替の効かない特殊な部品や機械はないか?
- 情報:顧客データが入ったサーバーが壊れたらどうするか?
Step3. 目標復旧時間(RTO)をざっくり決める
中核事業が停止した場合、いつまでに復旧しないと倒産するか、または顧客を失うかというデッドラインを設定します。これを目標復旧時間(RTO)と呼びます。
「3日ラインが止まると在庫が尽きる」や「1週間止まると他社に乗り換えられる」といった肌感覚で構いません。この時間が対策を考える基準になります。

Step4. 代替策を用意する
ボトルネックとなる資源が使えなくなった場合の代わりの手段を考えます。
以下は、現場でよく発生するリスクと、代替策になるプランBの一例です。
| リスク | ボトルネック | プランB |
|---|---|---|
| 停電 | 工場の機械が動かない | 小型発電機を用意する/一部工程を手作業に切り替える |
| 断水 | 冷却水が使えない | 貯水タンクを設置する/井戸水を利用できる協力工場を事前に確保する |
| 交通遮断 | 担当者が出社できない | Web会議や電話で指示を出す/近隣に住む代行担当者を決めておく |
| システムダウン | 受注データが見られない | 重要データを毎日紙で出力しておく/クラウドにバックアップする |
Step5.事業継続力強化計画を申請する
Step1〜4を踏まえ、
- 重要業務
- 想定リスク
- 代替策
が整理できていれば、BCPの骨子はほぼ出来上がっています。
その内容を中小企業庁の「事業継続力強化計画」申請フォーマットに整理し、電子申請システムから申請します。担当の経済産業局で確認され、認定を受けると、これまでに紹介した税制優遇や金融支援、補助金加点といった制度メリットを活用できる場合があります。

本格的なBCP文書をいきなり作る必要はありません。「ジギョケイ」のフォーマットを通じて、実行できる範囲でBCPを形にすることが、挫折しないための最短ルートです。
BCPの運用を定着させるためのポイント
BCPは作成して終わりではありません。最も避けたいのは、計画書はあるのに、いざという時に誰も中身を把握していないという状態です。
ここではBCPを現場で使えるものにする、比較的負担の少ない工夫を紹介します。
マニュアルはスマホですぐ見られる状態にする
災害は、平日の昼間に起きるとは限りません。夜間や休日、外出先で被災した場合、会社に保管している紙のファイルをすぐに確認することは困難です。
策定したBCPや緊急連絡網はPDF化し、全社員がスマートフォンから閲覧できる状態で保管し、初動対応の確認ができる状態を作っておきます。例えばGoogleドライブやDropboxなどのクラウドストレージ、ビジネスチャットのノート機能などを活用するとよいでしょう。
安否確認を仕組み化し初動対応を早める
災害発生直後は、電話がつながりにくく、メールも確認されにくくなります。その中で、従業員の安否や出社可否を迅速に把握できるかどうかは、事業復旧のスピードを大きく左右します。
そこで有効なのが、安否確認システムの導入です。一定以上の震度の地震が発生した際に、メールやアプリ通知を自動で一斉送信し、回答結果を自動集計できる仕組みです。
月額数千円から利用できるサービスも多く、連絡網を手作業で運用している場合と比べて、初動対応の負担を大きく軽減できます。
BCPに関するよくある疑問
Q. BCP策定にはどれくらいの期間が必要ですか?
A. 本格的なBCP策定は半年から1年かかりますが、本記事で紹介したミニマムBCPなら、集中すれば1〜2週間で策定可能です。まずは粗削りでも形にすることが重要です。
Q. コンサルタントにBCP策定を依頼する必要はありますか?
A. 必須ではありません。まずは自社で事業継続力強化計画の認定を目指しましょう。より高度なリスク対策やサプライチェーン管理が必要になった段階で、専門家の支援を検討する方が効率的です。
Q. 事業継続力強化計画申請のテンプレートやひな形はどこで入手できますか?
A. 中小企業庁の公式サイトで事業継続力強化計画の申請手引きや記載例が公開されています。また、各業界団体が作成している簡易版マニュアルも参考になります。
出典:
中小企業庁 「事業継続力強化計画策定の手引き」
厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」
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