在庫管理術
在庫日数【図解つき!計算式と適正化によるメリットとは】

適正在庫を見極めるうえで「在庫日数」という指標は欠かせません。
この記事では、在庫日数の定義や計算方法だけでなく、業種別の適正日数の考え方や、在庫コスト・キャッシュフローへの影響、また在庫日数をどのように適正化すべきかを具体的に解説しています。
棚卸・仕入れ・発注業務を効率化したい現場担当者から、在庫投資と資金回収のバランスに悩む経営層まで、ぜひご活用ください。記事後半では、リアルタイム在庫データで在庫日数の把握に役立ち、かつ在庫管理を超効率化する「スマートマットクラウド」をご紹介します。
在庫日数とは?図でわかる基本の意味
在庫日数※1とは、「現在の在庫の数量が何日分の販売・消費に相当するか?」を示す指標です。例えば下の図では、10日分の販売量/消費量の在庫を抱えていることになります。
扱う物品によって適正な在庫日数はそれぞれ変わってきます。そのため、「在庫日数○○日が良い」とは一概に言えません。しかし、在庫日数はよく「長い・短い」という表現を使って評価されます。
その理由は、「保有期間に掛かっている在庫コストが売上を圧迫しているのか、抑えられているのか」を表すために「日数が長い・短い」と評価されます。また実質的に在庫管理・保有にコストが余り掛からないケース※2でも、利益を上げるまでに時間が掛かる場合、その期間中はキャッシュ周りに悪影響を及ぼしています。
- 在庫日数が長い=保管期間の在庫コストや売上に悪影響があると評価
- 在庫日数が短い=保管期間の在庫コストや売上への影響を抑制したと評価
そのため、在庫日数は在庫コストや売上にどれほど影響を与えているかを示す指標となります。悪影響があるなら「長い」、上手くコストや期間が抑えられているなら「短い」と評されます。
※1:英語では「Stock days」と表される。
※2:自社倉庫に余裕があり、在庫管理のシステム化や自動化が進んでいる場合。
在庫日数と在庫回転日数との違い
在庫管理において、在庫日数と並んでよく使われる指標が「在庫回転日数(棚卸資産回転日数)※3」です。これは、保有している在庫が何日ごとに入れ替わっているかを示すもので、在庫の流動性や資金回収スピードを測る上で重要な数値です。
在庫回転日数は、「在庫回転率」をもとに計算されます。
回転率とは、一定期間に在庫が何回売れたか(回/年)を示す指標であり、以下の式で算出されます。
- 在庫回転率(回/年)= 年間売上原価 ÷ 平均在庫原価
- 在庫回転日数=365(日)÷ 在庫回転率
つまり、在庫回転日数とは「回転率を日数で表現したもの」であり、在庫日数(原価ベース)とほぼ同義として扱われることもあります。ただし、在庫日数は売価ベースでも使われることがあるため、使用する計算式や目的に応じて使い分けることが重要です。
在庫回転日数も、日数が短いほど在庫が速く回転しており、効率的に売上や消費が進んでいることを意味します。反対に、回転日数が長い場合は、滞留在庫や過剰在庫が多くなっている可能性が高く、キャッシュフロー悪化や保管コスト増加の要因となるため注意が必要です。
※3:在庫回転日数は商品回転日数と呼ばれることもある
在庫日数の計算式・求め方|週・月単位の求め方も解説
在庫日数の計算式は、主に以下の2パターンの式で算出されます。
◆ 売価ベース
- 在庫日数=在庫高(売価)÷1日の平均売上高
◆ 原価ベース
- 在庫日数=在庫高(原価)÷1日の平均売上原価
多くの企業では、キャッシュフローや在庫回転率との整合性を取るため、原価ベースでの管理が主流です。 会計指標やKPIに組み込む際は、どちらのベースを使うか社内で統一しましょう。
図解!Excelで平均在庫日数を求める手順
下のイラストのように、まず月ごとの在庫高を縦列に入力します。次に、赤い矢印で示したセルに「=SUM(範囲)」という関数を入れて合計値を算出しましょう。続いて、青い丸印が付けられているセルには「=AVERAGE(範囲)」を使い、平均在庫高を求めます。
最後に、「平均在庫高(売価) ÷ 1日の平均売上高」で算出される数値が月単位の平均在庫日数です。イラストの場合の在庫日数は平均在庫高(¥350,583)÷1日の平均売上高(¥20,569)=17.04日となっています。
この方法を応用すると、週単位や四半期単位など、集計期間を変えた在庫日数の確認も簡単に行です。イラスト内の矢印・丸印を参考にセル範囲や関数を間違えないよう設定すれば、より正確に在庫状況を把握できるでしょう。
週単位・月単位で在庫日数を計算する方法
在庫日数は“週”や“月”といった異なるスパンで算出することで、需要変動に柔軟に対応しやすくなります。週単位では、1週間の売上を基に在庫を評価できるため、変動を素早く捉え、在庫過多や欠品を防ぎやすくなります。売上に波がある業態では、週ごとの調整が効果的です。
月単位では、売上や仕入れの推移を俯瞰でき、トレンドの把握に役立ちます。季節商材やキャンペーン品の動きを見る際も有効で、仕入れ計画への活用にもつながります。
どちらも定期的に見直すことで、キャッシュフローや販売機会の最適化に寄与します。
在庫日数の適正化によるメリットとは?
「在庫日数が長い」と評される物品・商品は在庫数量を見直すのがマスト。仕入れ数や生産計画を見直すことで、在庫数の適正化を図ることが可能です。仕入れ数や生産数を調整するなら、単純に数量を減らせば在庫日数も短縮されます。
たとえば製造業で「在庫日数が長い」場合、生産リードタイムの短縮など、生産計画や工程間のボトルネックの有無などの見直しが必要です。在庫日数を短縮し適正化することは、在庫コストの圧縮や売上への悪影響を最小限に抑えられるメリットがあります。
在庫日数は適正在庫の維持の指標にも
在庫日数は、適正在庫の維持にも欠かせない指標のひとつです。経営視点では、在庫管理コストの抑制やキャッシュフローの健全化に直結するため、できるだけ在庫日数を短く保つほど資金回収が早まり、財務リスクも低減できるという有益性があります。
在庫日数が長ければ長いほど、仕入れコストの回収が遅れやすく、不良在庫によるキャッシュフロー悪化を招く点にも注意が必要です。一方で、在庫を持たなければ販売機会の損失を招くため、在庫回転日数や需要予測を踏まえながら、商品特性や市場動向を考慮して適正な在庫を維持することが重要です。
在庫日数の目安と対処【業種別】
在庫管理を最適化するには、業種や商品の特性に応じて在庫日数を考えることが重要です。こうした業種別の特徴を踏まえることで、「在庫日数の最適化=コスト削減と機会損失防止の両立」を実現できます。
業種・業界 | おおよその適正在庫日数 | 解説 |
---|---|---|
飲食店・生鮮流通 | 2〜7日 | 消費期限や廃棄ロス防止を重視。高頻繁かつ在庫日数内に消費できる適正量の仕入れが鍵 |
アパレル | 30〜60日 | 流行サイクルが短く、回転率重視。MD(商品を効果的に販売する)戦略が重要 |
製造業(部材・部品) | 30〜90日 | 調達~生産のリードタイム長。予測精度と安全在庫のバランスが重要 |
半導体・重工業 | 90〜180日 | グローバル調達・工程の多段階化により日数長めが標準。 社会情勢や、工場空転ロスの影響を受けやすい |
スーパー・量販店 | 商品カテゴリごとに10〜60日 | ムダな仕入や欠品防止のため、回転率・鮮度管理を商品単位で分解して判断する |
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在庫日数の可視化・最適化にスマートマットクラウド
現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、発注を自動化するDXソリューション「スマートマットクラウド」を使えば、在庫管理のあらゆる業務の自動化が可能に。IoT重量計であるスマートマットの上に管理したいモノを載せるだけで設置が完了。
あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理し、適切なタイミングで自動発注してくれます。また新たに搭載された「在庫最適化エージェント」により、カンタンに在庫の適正化のPCDAを回すことができます。
生成AIとの連携:在庫最適化エージェントの活用
最新の在庫管理では、「在庫日数を計算して終わり」ではありません。
スマートマットクラウドと、2025年6月に追加された生成AI「在庫最適化AIエージェント」を組み合わせることで、以下のような高度な最適化が可能です。
- IoT重量計(スマートマット)による在庫量のリアルタイム可視化
- AIによる発注点自動調整と在庫日数の最適化
- リードタイム・在庫推移を分析し、在庫圧縮を自動提案
- 需要予測×在庫動向の掛け合わせによる欠品防止
さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能です。また一日複数回の高回転発注や発注残を考慮した高度な発注システムを実装しています。
置く場所を選びません
スマートマットはサイズ展開豊富。ケーブルレスで、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。あらゆるロケーションで使用できるため、狭小スペースから重量物・高地置き場もOK。
API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、より高効率な在庫管理や発注業務を実現します。