高単価品の廃棄ロスを防ぐスマート在庫管理 - 京セラが実践する薬品・資材の見える化

京セラ株式会社 鹿児島国分工場

社名 | 京セラ株式会社 鹿児島国分工場 |
業種 | 機械 |
課題 |
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効果 |
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・薬品や資材の在庫管理が各工程の担当者に任され、属人的で全体最適ができていなかった
・在庫状況が共有されず、必要量や残量が不透明だった
・現場での計測や確認など管理業務が煩雑で、人材育成や省人化の面でも課題があった
・在庫の見える化により、協力会社との照合作業や現場確認が不要になり工数を削減
・遠隔倉庫や金庫内の在庫も事務所から確認でき、高所や遠隔地への移動負担を軽減
・数量精度の向上により不整合や業務遅延を防止し、安定した供給体制を構築
京セラ株式会社は、1959年の創業以来、「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」という経営理念のもと、ファインセラミックス、電子部品、情報通信機器、半導体、医療機器など、幅広い分野で事業を展開しています。今回は鹿児島国分工場のコアコンポーネントセグメント 半導体部品セラミック材料事業本部 セラミックパッケージ1事業部 薄膜工程管理課 副主任技師の野妻さま、薄膜工程管理課責任者の川上さま、精密加工係責任者の村江さまにお話を伺いました。
御社の事業内容について簡単に教えてください
京セラ株式会社 鹿児島国分工場は、セラミックパッケージ1事業部の製造拠点のひとつとして、主にLED用セラミック基板や光通信用セラミック基板の製造を担っています。
国内では鹿児島川内工場・東近江工場と連携し、鹿児島川内工場で成形・焼成されたセラミック基板を受け取り、研磨、薄膜成膜、フォトリソ加工、ケミカルエッチング、ダイシング、外観検査、出荷といった後工程を担当しています。
製品は一般照明用LEDや車載ヘッドライト用LED、光通信用サブマウントのほか、医療機器、無線基地局、Blu-ray/DVD用途など幅広い分野に供給されています。
スマートマットクラウド導入前の在庫管理の課題を教えてください
全体在庫が把握できず、
属人的管理と煩雑な現場作業が業務効率を阻害
当工場では、LED用セラミック基板や光通信用セラミック基板をはじめとする製品の製造にあたり、酸やアルカリ系の薬液、粉末原料、ダイシングテープなど、多種多様かつ用途ごとに管理基準が異なる薬品や資材を取り扱っています。
これらは品質や安全性の観点から適正な保管・数量管理が求められる一方で、導入前は各工程の担当者がそれぞれの使用分を個別に発注・管理していました。
多種多様な薬品もスマートマットクラウドで管理
そのため、事業が大きくなり、管理物の種類が増えるにしたがって、在庫情報は担当者の頭の中や個別の管理表に留まり、他の担当者や部門からリアルタイムに状況を把握することが難しく、事業部全体での横断的な在庫把握はほぼ不可能な状態でした。
結果として、同じ事業部内であっても工程ごとに“部分最適”の発注判断になり、必要以上の在庫を抱える工程がある一方で、別の工程では不足や欠品が発生するリスクが常に存在していました。
さらに、現場では残量の確認や棚卸のために実際に倉庫や金庫まで赴き、目視や手作業で計測する必要があり、この繰り返しが担当者の業務時間を圧迫。属人化した管理方法は、引き継ぎや担当変更時に情報共有の手間や漏れを生じやすく、人材育成の面でも課題となっていました。
省人化と効率化を同時に実現できる新たな在庫管理体制の構築が急務となっていたのです。
一部の薬品は鍵付きの金庫に保管されており、開錠の際には申請や立ち会いが必要に
スマートマットクラウドを知ったきっかけは何だったのでしょうか?
スマートマットクラウドの存在を知ったのは、当初は社内での情報共有がきっかけでした。
外部の展示会や広告、取引先からの紹介といったルートではなく、まずは事業部内で行われた製造会議や定例の改善活動の場で、「在庫管理を自動化・可視化できるシステムがある」という簡単な紹介を受けたことが始まりです。
さらに、その後の情報共有やヒアリングを通じて、協力会社を含めた在庫管理にも応用できる可能性があることが分かり、本格的に検討を進めるきっかけとなりました。
他に検討した方法・ソリューションはありますか?
RFIDや電子台帳も検討するも、
省人化効果と柔軟性に課題
導入検討の初期段階では、RFIDタグを活用した在庫管理や、Excel・電子台帳によるデータ化といった方法も候補に挙がりました。
RFIDタグは一見すると効率的に思えましたが、実際にはタグの貼り付けや読み取り作業、タグ不良時の再発行といった人手が必ず必要で、自動化や機械化をすべき作業が多く、低コスト・短期間で属人化の解消や完全な省人化の成果を上げるには課題が多くありました。
電子台帳についても、入力の手間や更新漏れのリスクがあり、結局は担当者が現場で確認・記録する作業を続けざるを得ないと判断しました。
さらに、これらの仕組みは導入・撤退時のシステム設定や機器回収などのオペレーションコストが高く、柔軟な運用変更がしづらい点も課題となりました。
スマートマットクラウドを選んだ決め手は何でしたか?
現場工数削減の期待とサブスク型による導入のしやすさ
最終的にスマートマットクラウドを選んだ大きな理由は、現場の工数削減効果が見込めることと、サブスクリプション型による導入・撤退の容易さでした。
専用マットを設置するだけで即日運用を開始でき、撤退時もマットを外すだけで完了するシンプルな仕組みは、現場の負担を最小限に抑えます。また、重量変化を自動で計測するため、「人がやらなければならない管理作業」を確実に減らせる点も魅力でした。
こうした導入効果の期待値や投資リスクの低さが評価され、採用が決定しました。
現在スマートマットクラウドでどういった物品を管理していますか?
薬品から重量資材まで、幅広い在庫を一元管理
主に工場内で使用する薬品やダイシングテープを管理しています。毒劇物の保管場所である金庫内でもスマートマットを使用しており、グラム単位でのタイムリーかつ正確な在庫把握が可能になり、手動での測定が不要になりました。粉体や重量物もスマートマットに乗せて管理しています。
また、協力会社の倉庫にもスマートマットを設置し、遠隔での在庫の常時監視も行っています。これにより、わざわざ現地に足を運ばなくても、事務所のパソコン上で残量がリアルタイムに確認できるようになり、必要な補充数を判断する際の重要な参考データとなっています。
導入してどのような効果や改善が見られましたか?
在庫の見える化で照合作業や現場訪問を削減し、精度と効率を向上
在庫の「見える化」が進んだことにより、倉庫のある協力会社との間で行っていた在庫照合作業がほぼ不要になりました。従来は電話やメールで数量を確認し合い、双方で記録を突き合わせる必要がありましたが、スマートマットクラウドの導入によって双方が同じ在庫データをリアルタイムに確認できるようになったため、こうしたやり取りや調整の手間が大幅に削減されました。
在庫確認のために担当者が現場へ足を運ぶ回数も格段に減りました。以前は高所倉庫や遠隔倉庫に保管されている資材の残量確認のために、わざわざ現場まで移動し、確認作業を行う必要があり、時間と労力の両面で負担が大きかったのです。導入後は事務所からPC画面で残量を確認できるようになりました。
さらに、計測精度の向上によって、在庫の不整合や想定外の欠品がほぼ発生しなくなりました。必要な資材を必要なタイミングで確実に確保できるようになり、突発的な在庫不足による生産ラインの停止や出荷遅延といったリスクも大幅に低減。結果として、安定した生産活動を維持できる強固な管理基盤が整い、現場全体の業務効率と安心感が向上しました。
中身の見えない薬品でもスマートマットクラウドで在庫量を常時把握
具体的な数値や事例があれば教えてください
現場で100%の費用回収、将来的には倍以上の効果を見込む
現時点での費用対効果は、現場運用だけで導入コストを100%回収できています。
加えて、今後は在庫ロスや期限切れによる廃棄削減など、定量的にも倍以上の効果が期待できます。例えば薬品やダイシングテープのような高単価資材では、在庫量を適正化することで1件あたり数十万円規模のコスト削減が可能です。
期限切れ廃棄の防止は、経費削減だけでなく、品質リスク低減にも直結しています。
スマートマットクラウドを今後どのように活用していく予定ですか?
今後はAIを活用した在庫閾値の最適化や、過剰在庫を自動で検出する機能を導入し、在庫圧縮を実現したいと考えています。
さらに、生産管理システムとの連携によってCSVデータからの自動発注に近い運用を構築し、省人化と精度向上を同時に進める計画です。
今後広く社内展開していく計画や予定はありますか?
協力会社や他事業部へ横展開し、社内DXの象徴的事例に
協力会社での利用範囲を広げると同時に、他事業部からも導入に関心が寄せられています。現場での省人化やコスト削減の成果が分かりやすく、DX推進の象徴的な事例として横展開しやすいことも背景にあります。
今後は全社的な在庫管理の高度化に貢献するモデルケースとして、積極的な展開を目指します。
インタビューへのご協力、誠にありがとうございました。京セラ株式会社 鹿児島国分工場さまは、スマートマットクラウドを活用して、工程ごとに属人的に行われていた薬品・資材管理を可視化し、協力会社との在庫共有や金庫内毒劇物の効率管理を実現されました。これにより、不整合や業務遅延の防止、現場工数削減と精度向上を同時に達成されています。今後はAIによる閾値最適化や在庫圧縮、自動発注への発展を目指しており、私たちも引き続き現場の省人化とDX推進に貢献してまいります。
京セラ株式会社 鹿児島国分工場|スマートマットクラウド導入の概要
- 導入目的
省人化と効率化を同時に実現できる新たな在庫管理体制の構築が急務だった
- 設置場所
自社の倉庫や金庫、協力会社の倉庫
- 管理商材
酸やアルカリ系の薬液、粉末原料、ダイシングテープなど、多種多様かつ用途ごとに管理基準が異なる薬品や資材など
- スマートマット導入の決め手
現場工数削減の期待とサブスク型による導入のしやすさ