三菱ケミカル株式会社 東海事業所では、さまざまな製品を製造しており、私たちの部署は検査部門を担当しています。主に化学製品の製造、品質管理という事業内容になります。
業務改善を強く推進する社内の流れの中で、その一環としてまず備品管理に着目して改善をスタートしたのが始まりです。現場レベルで改善効果が出やすく、かつ比較的短期間で成果が見込める領域として、備品管理に着目しました。
当時の課題は、紙やExcelでのアナログな管理方法に起因する属人化と作業の非効率性であり、そこに変化を加えたいという思いがありました。
まず、「3S(整理・整頓・清潔)」をテーマとして掲げ、整理からスタートし、整頓、清潔という流れで進めました。Excelなどを活用して簡易的な仕組みを構築し、備品の引数管理を開始しました。
その後スマートマットクラウドを知り、自動で管理・発注できる仕組みに魅力を感じ、導入を決めたという経緯ですね。
導入前の備品管理は紙ベースで、発注は個人の判断に任されていました。その結果、在庫数の把握ミスや連絡の行き違いが頻発し、欠品によって検査業務に支障をきたすこともありました。
検査業務に必要な備品が欠品すると、検査そのものが止まってしまうため、最悪の場合、出荷が遅れることにも繋がります。
例えば手袋のような安全に関わる備品が欠品した場合、うちの部署は50人程度いますが、その全員の作業が止まる可能性もあります。
私たちのグループには5つのチームがあり、それぞれで検査を実施しています。備品については共通で使うものとチームごとで使うものに分かれており、共通備品に関してはグループ単位で管理していましたが、実際のところ、ほぼ1人が担当していた状態で、属人化していた部分がありました。
属人化していたため、共通の備品、特にティッシュなどの日用品については、後回しにされがちで、発注が漏れるケースも…。
現場スタッフの安全にも関わる手袋。このような備品が欠品すると、全員の作業が止まる可能性も
一番大きな課題は、やはり既存のやり方に慣れている現場の皆さんに対して、異なるやり方を導入する際の理解を得ることでした。
組織の規模が大きいため、皆さんにしっかりと内容を説明し、納得いただいたうえで変更する必要がありました。
また、新しい仕組みを導入しても、それを継続的に運用できるかどうか、PDCAを回して維持・改善できるかという点も懸念していました。
DXという言葉に対して、構えてしまう方もいますし、技術的なハードルを感じられる方もいます。
ただ、スマートマットクラウドに関しては操作が非常に簡単で、私自身もITスキルに自信がある方ではありませんが、問題なく導入できました。
現場のスタッフが使うにあたって、どれだけ業務が楽になるかを実感できるかが定着のカギになります。
今までは、数を数えて紙に書いていたのですが、それが丁寧に物を取るだけで済むようになったというのは、大きな改善でした。
ミスや記入漏れといったヒューマンエラーも多かったですが、それを仕組みで防げるのは大きなメリットです。
例えば、備品が減った際に発注担当に連絡するのを忘れて欠品してしまうということが以前は起きていましたが、スマートマットでは最小引数を下回ると自動で通知が届くので、それも防げるようになりました。
最初に三重事業所で開催された展示会に私が参加し、「これは良さそうだ」と思い、他の事業所でも使われていると聞いて、香川・富山の担当者に使い方や運用方法をヒアリングしました。
私は名古屋の展示会でスマートマットを知りました。ちょうど備品管理に課題を感じていた時期だったので、導入を前向きに検討することに。
奥田さんと別々の展示会でしたが、それぞれの視点から情報を得て、結果的に導入につながりました。
他事業所からRFIDを紹介してもらい検討はしました。ただ、結局リーダーの呼び込みという作業は外せませんし、結構コストもかかるということで、「さすがに現実的じゃない」という結論で止まっていました。
初期はExcelやマクロを用いた自作の在庫管理システムを試していましたが、結局「人が数えて人が発注する」部分に限界を感じていました。
そんな中、展示会でスマートマットクラウドを見て、減ったら自動で通知が飛び、発注ができるという仕組みに強く惹かれました。
導入前に管理基準やルールは整えていたため、それとスマートマットクラウドが完全にマッチしたのが決め手でしたね。
また、最も大きかったのは、在庫の「可視化」と「自動発注通知」による業務負担の軽減です。
スマートマットクラウドはシンプルで直感的に使える仕組みであり、既存業務に最小限の変更で適用できた点が、現場目線でも非常に大きなポイントでした。
マットの上に在庫を置くだけのシンプルな仕組みにより、既存業務に最小限の変更で導入が可能
最も意識したのは「理想の姿を共有すること」。どう改善したいか、何を解決したいかを明確にし、それが導入によって実現できるというビジョンを現場と共有するよう努めました。
また、変化による負担を最小限にするため、ハード面では既存の棚や運用に合わせた導入を徹底し、無理なくスタートできる工夫をしました。
共有備品はグループ単位で管理していますが、導入前は属人化していたため、運用ルールを明確化し、担当を横断的に連携することで、協力体制を整備しました。
今は主に備品をスマートマットクラウドで管理していますが、今後は試薬の管理も予定しています。試薬は使用期限があり、処分にもコストがかかるため、在庫数の適正化もしていきたいですね。(※補足:25年8月前後開始予定)
また、検査器具についても一部ではすでにスマートマットで管理しています。具体的にはサンプルを入れる容器や、スポイトと呼ばれる液を採取するための器具などですね。
備品管理は本来の業務ではありませんが、なくてはならないものです。その負担を減らすことで、本来の検査業務に集中できるようになりました。
業務中に備品が切れると、倉庫に取りに行く必要があります。その移動時間や作業の中断が、結果として生産性を下げる原因になります。
現場へのアンケート調査では、回答者42人中39人が「良くなった」と回答していて、残りの3人はまだスマートマットクラウドを使っていないか、備品管理に関わっていない方々でした。
特に多かった意見は「在庫確認の削減」「発注時間の短縮」「属人化の排除」「他業務への集中」の4点です。
「在庫量を毎回見なくてよくなった」という声もありました。以前は本当にアナログで、持ち出す数を記録していたんですが、今はそれが不要です。
話を聞く限りでは、「物を持っていくだけで済む」、「定位置に戻すだけで良い」という点で、かなり業務が簡素化されたようですね。
何かシステムを変えるとき、普通は文句が出るものですが、それがなかったので、現場にはスムーズに定着したと考えています。
備品の管理場所が固定されたことで、3Sの維持にもつながっています。スマートマットの上に丁寧に置かないといけないため、自然と整理整頓されるんですね。
綺麗な場所に適当に置くのは難しいんですよね。だから綺麗に保つ意識が自然と根づいていくように感じています。
導入時も、ハード的な対策は最小限にして、できるだけ既存の棚にそのまま設置しましたが、大きな不具合もなく運用できています。
私は管理者の立場として、現場のやりやすさを優先しています。現場が「これが良い」と思えば、それを尊重していきたいですね。
備品の場所が固定されたことにより、綺麗に保つ意識が現場スタッフにも自然と根づき、DX推進のテーマとして掲げた「3S」も実現
社内で取り組みを発表する場として「ワクワクフェスタ」というイベントがありました。その場でスマートマットクラウドによる備品管理の事例を紹介し、他部署の方々からも興味を持っていただけました。
ガス課との協業もその前後から始まりました。初期設定や運用について説明し、最終的には社内表彰の対象にもなりました。
部署を超えた交流や他の取り組みへの刺激にもなったと思います。現場のリアルな声が評価される貴重な機会でした。
試薬や薬品の管理にも活用していく計画ですが、試薬が持つ腐食性ゆえの問題(マットを溶かす)、あるいは法的な要求事項に合わせた管理方法の模索など、備品管理以上に慎重に進める必要があります。
備品については、今後もさらに対象範囲を広げていきたいと思っています。単価の高いもの、または生産性向上に寄与する物品を優先的に管理対象としていきたいですね。
以上を計画的に進めて、東海事業所内でのモデル職場として他部署への展開も進めたいと考えてます。
現在の発注業務は、在庫が減るとメール通知が届きます。それを購買担当が確認し、既存のERPツールを使用したSAPシステムを通じて発注申請を行う形です。
そのため、スマートマットクラウドとSAPの自動連携ができると、かなり便利になると思います。現状はCSVなどで手動連携しかできないため、標準連携のような形でつながると非常に助かりますね。